マヨネーズ大作戦!!前編
「うおおおおおお待ちやがれェェェ!!このクソ餓鬼がァァァ!!」
『ぎぃやぁぁぁぁぁ助けてェェェェ!!』
―――時刻は午後10時過ぎ。
真っ暗な闇の中、煌々と輝く月の光に照らしだされた二つの影が、ここ“真選組屯所”の廊下を走り抜けていく。
走るというよりは、追いかけまわされていると言った方がいいのか。
いや、そんな事よりも今私を追いかけている彼に謝った方がいいのか。
つーか私が何をしたというのであろうか、何もしちゃあいない。ただちょっと自分の欲望を止められなかっただけだ。これは人間の本能だよ。うん。
ドッドッドッ、と足音を豪快に響かせながら私―ちひろは思った。
後ろから追いかけてくる彼をチラリ、とみる。
…あれはひどい。鬼の形相、なんてモンじゃねェな。
言葉では言えないような顔をして私を追い回すのは、真選組副長にして―私の上司である、土方十四郎。
「テメッ、何で今日俺のマヨネーズ取りやがった?あれが最後の一本だって分かっていながらどうして使いやがった!!ああ゛?!」
『ウルセェェェ、毎日毎日私の席の隣でマヨネーズばっか摂取しやがってよぉぉぉ!!私がマヨネーズ嫌いなの知ってるくせにさぁ!!嫌がらせだろォアレ』
こうやって喋っている合間も、全速力で私たちは走っているわけで。
「んなわけ……オイィィィ!!前みろォォォ!!」
『あ゛?ミロが美味しいことぐらい知ってるわボケェ!!』
「ちげーよ!!誰が麦芽飲料の話をしてんだよ!!前だ、前!!前見ろォォぶつかってもいいのかコノヤロー!!」
『は?前?…うわっ』
ドガシャァァァァン!!
土方さんの言うとおり、前に視線を戻してみればそこには真っ白な景色しかなくて。
足を止めようとすれば、思うようにいかずにそのまま前へと飛び出してしまう。
結果的に、私は襖に頭から突っ込みその襖が倒れ、あとから来た土方さんも、私の足に躓いてその部屋になだれ込むという始末。
つーか真っ白な景色って、襖の模様だったのか。
「うるせぇな〜こんな夜中になんの用ですかィ、ちひろ。夜這いに来た?残念ながら俺はされるほうより、する側の方が好み…あり、土方さんじゃぁありやせんか。」
…なんか、いた。
つづく!!