短編 | ナノ

おめでと・・・うきびう「言わせないよ」・・・おぉうw


『何?今日ヒバリの誕生日?こんなGWの終了日間近な中途半端な日に?なんでったってこんな・・・拷問じゃねーか』
「…一体何の話をしてるんですか、委員長は五月の五日が誕生日、ご存じなかったんですか?」


ジューッと音を立て、フライパンにある見慣れた肉の塊を器用にひっくり返す、この慣れた手つき・・・さすがフランスパンは違うね。

フライパンを操るフランスパン…ブッ

おっと、いい感じの焼き色とおいしそうなにおいに私の鼻はもうノックダウン寸前。
うへへ、ホントにおいしそうだな涎が垂れちゃったじゃねーか。


『で、昼の一時まで寝ようとしていた私を起こすという危険を冒してまで呼び出した理由はなんだい?ちくしょうめ、今十二時だぞ、ゴルァ』
「いえ、一応確認の為に聞いておこうとは思ったんですが…」
その様子では、とため息交じりの声を口から紡ぎだすママン。やめろ、紡ぎだすとかいった高度な技法を使うんじゃない。
せいぜい吐き出すとか、そんな言い方をしろ。あれ、私誰に言ってんだ?

「自分が言いたいのはちひろさんも委員長に何か買ってあげてはいかがですか、ということです。どうせ貴方のことだから用意していないのでしょう?」
『よくわかったなぁ、オイ』

「ドヤ顔止めて頂けますか・・・今から買ってきてください、お金は今ありますか?」
『…まぁ金なら心配する必要はねーけど。なんか今更だなー、ヒバリの好きなものとかよくわかんねーし』


今、ママンがクリエイティブしてるその食べ物が好きな事ぐらいしか、知らんよ。
食べ物じゃアレだろ…かぶってるからだめだろ。

それじゃどーすんだ、とママンに問いかけようと台所のステンレスに腰かければ、彼は邪魔だと顔をしかめた。
まったく、顔は口ほどにモノを言いまくるとはよく言ったもんだ、やれやれ、これだからフランスパンはまったく。

外は快晴。憎たらしいほどにヒバリを祝福するがごとく晴れている。

女の私にもわかんないもんもあると、先ほどママンに言われたため、渋々情報収集というものをすることにした。
男心というモノだろ。私だって名前ぐらい聞いたことはあるさ。


『なぁテメーだったら、誕生日プレゼントは何が欲しいよ』

こんな質問、この並盛町の地主、並盛ちひろにかかればちょちょいのちょいちょい。

一応男のツテはあるのだよ、ママンにチキン。ほとんどが近所の爺さんたちだから、質問する人間はかなり絞られてくるけど。

さて、男どもに投げかけてきたさ。今の質問。ちょっと紙にメモってきたから読み上げてやろうか。

『Q、貴方は誕生日に干し芋のはなんですか?』
「え?!早くもミスってる!!漢字変換間違えてるぅぅぅ!!!確かにそうなるけど!!!」

『うるせーな黙って聞いてろ、ダメツナが』



「A、ダイナマイト」

「野球のグローブ」

「極限」

「女」
「…麦チョコ」

ああ、女の子だったなこの子。

「沢田綱吉の体」

「・・・なんで皆この質問でわかったんだろう…」
『うっせーな、テメーはどうなんだ』

「オ、オレはなんでも…」


ビリィィィ!!!!


『使えねェェェェェェェェッ!!!!!』


怒りに身を任せ、拳を床に叩きつければドゴウッと変な音がして、二階の教室の机がちらっと視界に入った。
でも今はそんなんを気にしてる暇なんてねェ

『マジで意味分かんねェェェェェ!!!麦チョコダイナマイトグローブは分かるよ!!そりゃあ自分達のすきなもんだからな!!』

「・・・いや、いいんだけど、三つ繋げるの止めてくれる?なんか大変なモノができてるから」


『極めつけはあのナポゥゥゥだよ、何だダメツナの体って。気色わりぃィィィ!!!!きもい!!!!』
「………ああ、骸の事か。」

『まぁでも一応欲しい者だろ、女も奴のを聞いたら全然まともに見えるし…もっとも意味分からんのはコレだよ!!コレ!!!』


ビリビリに破いた紙にまだ忌々しく残る二文字の二字熟語。


『極限って!!!何が欲しいっつったらモノだろーが!!もう意味わかんない!!何極限って、誕生日にアイツは何を求めてんだ!!言葉のキャッチボールがデットボールに成り果ててんじゃねーか!!!』

「お、落ち着いて…」


ダメツナが隣で焦っているが、コイツもコイツさ。


『どうでもいっつー回答が一番どうでもいいわァァァァァ!!!!』
「じゃあ聞くなよ!!」
『黙れ、逆ギレは見苦しいぞ。ダメマグロライファー』
「ライファー?!」


いや、でも本当に使えねェ、何をチキンにあげればいいんだ。

グローブとかそこらへんをプレゼントフォーユーしたらトンファーで弾き返されそうだしなー


「フルーツとか持って行ったら?今の時期パイナップルがセールだって母さんが言ってたよ」
『…いや、それ持って家に足を踏み入れたが最後、果汁が出なくなるまでソレ叩き潰されると思う…』
「…そうだね」



その日、家路についたのは日が暮れた頃になった。


「で、何?僕のプレゼントを考えて考えて…このざまかい?」
『そうだ…この思いこそが…YOUの誕プレさ。心して受け取るがいい。』
「どうしよう、全然嬉しくない」


高熱にうなされる私を冷やかな目で見るヒバリン。
ばかやろう、そんなんで熱が冷めるわけねーだろ。

「草壁、おかわり」
「へい、委員長」

もぐもぐと先ほどから目の前でハンバーグを食べ続けるヒバリ氏は、今の段階でどうやら五皿目に突入するようだ。

早いな、ペースが。


『おい、自分で分かってないだろうけどな、テメーの顔ニヤけてんぞ。ペッ』
「今日誕生日だったんだね、僕忘れてたよ」

『くそう、忘れてたんだったら早く言えコノヤロウ。おかげさまで知恵熱だしちまったじゃねーか!!』

「かなりバカだね」『プリン食べたい』「……。」


欲望の赴くがままに言葉を口に出したら彼は黙ってしまった。
黙るほど、呆れたらしい。

言葉のキャッチボールって知ってる?と聞かれたので首を縦に振れば、奴は横に振った。


何が言いたい。


「…もういいや、口開けなよ。草壁がプリン作ってきてくれたから」
『キャッフォォォォウ!!!ママン性格マジイケメン!!!』

「急に元気になったね」
『プリンとなりゃぁ、別腹だ!!!さぁくれ!!』

「……まぁいいか。」


そうぼやいて彼は銀色のスプーンでプリンを掬い取り、私の口に投げ込んだ。
もっと丁寧にやれよ、私は病人だぞ。丁重に扱いたまえ。

『あっ今さらだけどヒバリンはっぴーばーすでぃ!!!』
「ふん、こんな手のかかる誕生日は初めてだよ」

『感謝しろよヒバリ!!私がテメェに甘えるなんざめったにないことだからな!!!』
「………いや、そうでもないと思う」



そう言って彼はまた、不器用にプリンを私に食べさせた。



来年は何をして体調を崩そうか。
いつもとは違うヒバリの態度に味を占めた私は来年の計画を考えていたものの、すべて声に出してしまったらしく、来年から五月五日はヒバリが私を監視するといった話になってしまった。


まぁ、一緒にいられるからいいんじゃねーかな。



そう楽観的に私が笑えば、ハンバーグに添えられていたピーマンが降ってきたのは言うまでもないだろう。

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