004 勧誘?恐喝の間違いじゃねーのか、コレ。
『あーチクショー、やっぱり団扇よりかんざしのほうが威力は強いかな、いや、でも待てよ。よく考えろ。よく考えるんだ、並盛ちひろ。それを人間のケツに刺すんだ。いくら人間の急所と言えども、攻撃力が強くても、一回で使い捨てることになるかも知れないんだ。――あーいや、しかし…』
さて、チキンなハゲから逃げ出しました私、並盛ちひろは前回の宣言通りに屋上にてサボり中です。 ただ今、私の頭を悩ませているのが、チキンハゲに制裁を下すためのゴッドトルネードの武器。 “ゴッドトルネード”――神の竜巻と呼ばれるその技は細長い武器を相手の急所にブッ刺し、それを差し込んだままぐるりと360度回す、特に痔を患っている人には危険大の大技のこと。 本来、その武器として使用するのは団扇の取っ手の部分で期間は夏のみ。今の季節は哀愁漂うような枯葉の舞う秋。団扇を使うのはあまり風情があるとは言えない。 だからと言って、代々受け継がれてきた並盛家の家宝のかんざしを使うわけにもいかない。
『くそっ、こうなったら最後の手段だ。ヒバリのトンファーを借りて奴のケツに――』 「あ、いたいた。並盛さん!」
ばたばたと足音がしたと思えば、屋上の扉が開きダメツナと他二人の男が入ってきた。 三人とも手に何かの袋を携えている。
『ダメツナが何の用?…つーか後ろの背の低いほう、なんかチャラいな』 「てめっ、十代目に何てこと言ってんだ!!この方はな、偉大なるマフィアボンゴレのボスになるお方だぞ!!」 おいおい、自分がチャラいって言われたのはスルーか。
「獄寺君こそ何を言ってるんだよ!!大体俺は、マフィアになんかならないって!!」
あららら、その口ぶりだともう決まってるみたいだね。必死にごまかそうとしているダメツナがなんとも哀れだ 。 『マフィアかーボスかー、頑張ってね。式典とかあったら呼んでよ。ただ飯、食いに駆けつけてあげるから』 「何で上から目線?!……ていうか並盛さんは驚かないの?」 『あ?何が』
いつの間にか私のそばに腰を下ろし、手に持っていた包みを開き始めるダメツナ達。そーいや私、今日弁当無いんだっけ。しかたねぇ、草壁ママからかっぱらってくるか。
「マフィアって…」 『そんなもんどこにでもいるだろ。私の知り合いにも似たような奴、いっぱいいるし』 ヒバリとか、ヒバリとか、ヒバリとかね!!
「そういや、自己紹介まだだったな。俺、山本武。よろしくな」 次に腰を下ろした一番背の高いやつが私に話しかけてくる。そういやコイツいたな、気が付かなかったわ。存在感が皆無…プッ
「獄寺……隼人」 ふて腐れたようにそっぽを向き、ボソッと呟くようにして言葉を吐いたのは頭がタコみたいな銀髪のチャラ男。ダメツナの右側にわざわざ座るのは何か意味があるのだろうか。 なんつーかお前、苗字、市原とかにしたほうがよくね?なんだ地獄の寺って。縁起がいいのか悪いのかハッキリしろよ。
『ま、いいや。それより誰か飯分けてふふぇふぁふぃ?』 「なんて言ってんのか分かんないよ!!しかも言った傍から人の弁当食ってるし。」 『かたいことは気にしたら負けさ。たかがおかず一つだろ。さぁどんどん食べな!!』 「それオレのセリフ!!」 『てめぇじゃねぇ、唐揚げの話だ。』 「硬かったの?!」
もっちゃもっちゃと口を動かす私に突っ込むのを諦めたのか、仕方なく箸を持ち中身の減った弁当を食べ始めるダメツナ。 すると、どこからともなく何かが物凄いスピードで飛んできて、彼の半そでシャツにサクッと見事にブッ刺さった。何だコレ……栗?
「いだっ、いだだっ!!」 「唐揚げもいいが、栗もうめーぞ」 そう言って私に栗を、しかも棘のついたまま差し出してきたのは黒いスーツを着こなし、黄色のおしゃぶりを下げたなんとも粋な赤ん坊。一瞬、その体がいがぐりのように見えたのは幻覚だったのだろうか。 しかも、日本語っつーか人語ペラペラじゃね?赤ん坊のくせに。
「ちゃおッス。お前がちひろだな。」 「リボーン!あれ程、学校に来るなって言っただろ?!」
なるほど、この赤ん坊はリボーンというのか。それにしてもクルクルの揉み上げ…すげー気になる。なんで赤ん坊が揉み上げ?なんでクルクルしてんの?
「マフィアのことはツナ達から聞いたみてーだな。どうだちひろ、お前ファミリーに入らねーか。」 「おい、リボーンやめろよ!!並盛さんは一般人だぞ!!勧誘すんなって」
チャカッという音と共に彼の懐から出てきた拳銃の先が、私の眉間に当たる。 あれ、コレって勧誘って言うの?恐喝の間違いじゃなくて? さらに拳銃に入れる力を込める彼に必死でそれを止めるダメツナ。そしてリボーンの返り討ちにあう、というエンドレス行為をコントみたいだな―と思えば、スッと彼は拳銃を自分の懐に戻し私は解放された。
「……今のでお前のバカさ加減が分かったぞ、ツナ並みだな」 『なんて失礼な』 「まぁ考えておけよ。ファミリーになれば毎日が豪華な三食の食事つきだ」
その時、私の背後でピシャ―――ンと大きな雷が落ちたような気がした。 是非、入らせて頂きたい…と本気で心が揺れた瞬間、目の前にちょこんと座る彼は私の様子を見て、ニヤリとニヒルな笑いを浮かべたのだった。
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