復活 | ナノ




 
 
 
077 普段温厚な人がキレると、めっちゃ怖い



さて、暇だなんて言ってサボってきちゃったけど…どこ行こうかな。

いいや、ヒバリンに構ってもらう。こういうとき、奴の存在は便利な事この上ない。



てくてくと破壊されかけてなんかもうコレ校舎じゃねーなというほどの建物の中に入って行けば…あらあら、こりゃあ見かけ以上だねェとため息を漏らしてしまう。

様々な人間から沢山の攻撃を受け、ボロッボロの壁にボロッボロの床、そして目の前にはもっとボロボロのヒバッ………え?


「君、審判じゃなかったの?」


キッと睨むヒバリ。


『いやー奇遇ですねェ、あらあらそんなにやられちゃって。』

「質問に答えなよ」


口調を強くしても、その姿じゃァ全然怖くねェな。
どうしたよ、並盛の中で最強で最凶と名を持つ風紀委員ちょー様。


『ん?』


ヒバリが一瞬顔をゆがめた。どうやら腕の傷が痛むらしい、ジワリと彼の白いシャツに赤い血がにじむ。

ふむ、その切れたような傷はベルフェゴールの奴か。あいつはいろいろとイタイ奴だからな、とくに発言がだが。


『ホラ、傷口布で縛ってやるから腕だしなよ、止血してやらァ』

「ヤダ、君の怪力で縛られたら本物の血流が止まる、自分でやるよ。」


人が親切にやってやろうって言っているのに生意気な奴だ。


『…モニターで見てたぜ』

「何を」


よっこらせっと私は瓦礫をどけて床に座った。
まあヒバリも座れよ、疲れてんだろ少しは休め。私は平らな所、お前はコンクリの破片の上な!!ぷぷぷっ


『ヒバリは二人も今日人間を助けてたろ、いつもは群れてるだの、咬み殺すだの言ってるアンタが。』

「……校内で死なれると困るから、ね。」

『成長したじゃねーか』


えらいえらい、とフサフサの頭に手を伸ばし撫でてやれば、彼の顔が少し和らいだ気がした。
ずっとしかめっ面のまんまだったからな。

そういや、どっかの本に頭撫でるとよく伸びるとか書いてあった、ほめて成績を伸ばす?そんなもんがあったら私はとっくに成績が伸びているはずなんだが。いかんせん世の中そううまくはいかない。

ちなみに今ヒバリが伸びているのは鼻だけ……いてぇ摘まんでくんな、鼻を。


「誰が鼻が伸びてるだって?」

『いや、待て、このままじゃ私のモノホンの鼻が伸びる!!!』


ちっ、聞かれていたのか、頭の中を。



ドゴォォンッ!!!ドンッ!!!ドンッ!!!



「!!」『うおっ』


建物が激しく振動する。

ダメツナとザンザスが激しいバトルを繰り広げているようだ。やれやれ、これだからお坊ちゃまは…





それから数十分、何も話さずただボーっとしていた。

不意に、私は思い出す。



『私の言った言葉、覚えてたか?』

「………さぁね」



フンッと鼻を鳴らしたヒバリはゆっくりと、ふらふらだけれども立ち上がった。

気付けば、上空の空気をあれほど震わせていた轟音が静まっている。どうやら二人のケリがついたようだ。



『そろそろフィナーレの時間か?』

「中二が板についてきたね。」

『テメーほどじゃないさ。』



……フィナーレって、何だっけ。



クルリと踵を返す大きな背中に、私は腕を伸ばした。



『行ってこい、ヒバリ』




ちゃんと、帰ってこいよ。

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