復活 | ナノ




 
 
 
072 いざ!レッツジャージー牛乳!!



「巫女様」

時刻は午後九時過ぎ―あっ時計見てねェからわかんない。多分そのくらいの時間だ。
着なれた巫女服に身を包み、台座に置かれている我が家宝に手を伸ばした。

何十年、何百年と人々と共にあったソレ。

時には人々の邪気を祓う神聖な神具、時には人々を不当な神判を下し、恐怖へと陥れる武具として祀られてきた幣という兵器。(だと私は母親から聞かされていたが、真実は定かではない)

もしも…もしものことが起こったならば、それを私は振るわなければならない。
どちら側かに不正があれば、制裁を下す。それがチェルベッロとの協議の結果。

…なんて、向こうが勝手に決めてきただけだけど。


「準備ができたようですね。」

『あっちょっとまって、なんかお腹すいてきた。』

「では、参りましょう」

『あの、ちょっと話聞いてくれる?腹減りすぎて死にそう』

「決戦の舞台、並盛中学校へ―――」




「では、よろしいでしょうか。み……ちひろ様」

『よーし、よく覚えたな、偉い偉い。これで食い物が食べれなくなったことは水に流してやろう。』

「私たちが合図をしたら下に降りてきてくださいね。」


うんうんと私が頷く。

いや、今の頷きは私の名前を憶えていてくれたことを賞賛する頷きであって、決して彼女達が要求することに対してではない。


『ゴメン、聞いてなかった。もう一回言ってくれる?わんもあぷりーず』

「合図をしたら、み…ちひろ様は下に降りてきて下さいと言ったのです。」


ヒュオオオオと風が吹く。

それはもう本当に強い風で、私の体がぐらぐらと揺れるくらい。
しかし、原作ではそんなに風は吹いていない――WHY?何故か?

……私が高いところにいるから。

いやいやいや、まてまて。チェルベッロや、ちょっと落ち着こう。

高いところと言ってもアレだ。ブランコを揺らしたままジャンプとか、学校の雲梯でハサミギロチンをしてて降りるときに着地、とか。
それだったら私にも簡単にできるさ。ブランコのやりすぎの立ちこぎのヤツはできないけど。

でも何?ここは何処だと思う?Where is this?


学校の三階ベランダ。もう一階上に上がれば、屋上さ。


何これ。新手のいじめ?それとも、荒手のいじめ?



「おまちしておりました」

『!!』


ババッと勢いをつけて手すりから地上に降り立つ彼女達。
とても人間技じゃない。つけてるマスクにでも秘密があるのだろうか。

でも美人だから、またその姿が夜空に映えて…イイネ!!!


下を覗けばワラワラと人が集まってきているようだ。


おっ、あの丸くて黒い頭はヒバリか。
ぷぷぷー一瞬で分かっちゃったよ。ちょっと私天才かもしれないね。


「これで沢田氏側の守護者は雨、嵐、晴…」


…なんか、しゃべってる。

ちくしょーなんだよ私をのけ者にしやがって。
いや、下に降りて来いみたいな合図はいらないんだけど、なんとなく人がいないと寂しいみたいな。

ギュッと手に持っていた幣を握りしめた。

折れるなよー折れるなよー私が落ちてもお前だけは折れるんじゃないぞー。
願わくば魔法の箒みたいな感じになって私を助けてくれないかなーみたいなー

ワォ!!ファンタスティック!!メルヘンな事を考えてる自分にビックリ!!そこまで精神的に追い詰められてるのか。頑張れ自分!!生きろ自分!!

必死に自分自身にエールを送るも虚しく、チェルベッロ達が私に“合図”を送ってきた。
と、言うのも、いつの間にか巫女服の長い裾に彼女たちは頑丈な糸をひっかけていたようで、それをグイッと引っ張れば身を乗り出すようにしてベランダから下の様子を見ていた私の体は、糸も簡単に宙に投げ出されたのだった。



糸なだけに。


『何が糸なだけにだァァァ!!!バカやろぉぉぉ!!』

「沢田ファイッ!!オー!!!」

『オーじゃねェェェェェ!!!』

「…ちひろ?」



丁度、エジソン…じゃねーや円陣をくんでいたその上に、私は真っ逆さまに落ちていく。

このままいったらまずい。これじゃあ誰よりも先にお陀仏だ。

ここはクッションのようなものの上に…



『うおりゃぁぁァァァァァァ!!!』

「「なんでだァァァァァ!!!!」」



四人の人間の中央に飛び込むように、私はヒーローのポーズをとったのだった。(アンパン○ンのキックのポーズ)

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