054 不思議な夢ってなんか…神秘的
ピチョン…ピチョン…
「……。」
“…何故、舞い戻ってきた”
いや、知らねーし。ンなもん私が聞きたいわ。 脳内ツイッターでそう呟けば、目の前に居る奴はムスッとした表情に変わる。
なんかヒバリと似てんな、鹿なのに。
前と同じように気がつけば私はここにいた。 見覚えのある白く奥行きがあるのか無いのか、わからないような空間と水に包まれているような蒼い、鹿。
ただこの前と違うのは、私が家に帰った途端に急な眠気に襲われた事がわかっている事と、この空間を満たそうとしている透明な水が増えているということだ。 この前までは足元が浸かるぐらいだったのに、今は膝の辺りまで上昇している。
『水の量増えてるけど、どうした鹿さん。』 “……その呼び方を止めよ。我が名はチェルヴォ” 『は?』 “我が名はチェルヴォ” 『チョコ?』 “チェルヴォ” 『ゴルゴ?』 “………チェルヴォ” 『よろしくサーティーン』
ドシァァァァ!!
…また蹴られた。
地面でこすれてしまったのか、鼻先がジンジンと痛む。 ずぶ濡れになった私が立ち上がると、不機嫌そうにサーティーンはそっぽを向いてしまった。
くそっガラスのハートを持っているのか、そんなことで機嫌を損ねてちゃ人生はエンジョイできないぞ!!
“まあいい、前に私はこの水を貴様の覚悟と言ったな”
『そうだっけか…』
…そんなこと言ってたっけ、んー覚えてないようで覚えているようで実は覚えてなかったり…
『んじゃあ、私の覚悟が増したってこと?』 “そうだな、増えるというのは少し違うかもしれん。覚悟の大きさ自体が以前とは異なるのだ” 覚悟とは自分の感情によって左右される事が多い、とゴル…じゃねーやチェルヴォは言う。 “つまりは前よりも強くなっている証だな”
くるり、とこちらを振り返ったチェルヴォは長い前脚を私の頭上に乗せて、ぐりぐりと髪の毛を乱す。
彼なりに撫でてくれているのだろうか。
が、彼は自分にひづめというものが付いている事をすっかり忘れているようだ。 そしてそれが私の頭にグサグサと突き刺さっている。
『ちょっ、いだっ痛い!!痛いぞサーティーン!!撫でてくれてありがとっ!!嬉しいよっでも痛いから止めろゴルゴォォォォォ!!』 “チェルヴォだ” 『うおう!!チェルヴォさん、いえチェルヴォ氏!!むしろ様!!』
そう叫べばピタリと彼の猛攻は止み、すっと脚がおろされる。 くっ、頭から血が出てきやがった。
『ちなみにチェルヴォって何語?アメリカン?ヒエログリフ的な感じ?』 “いや、イタリア語だ” 『どんな意味があんの?』 “……………鹿、の意を示す” 『何?今の間。』
** 後日―――
『なあ下まつ毛、イタリア人ならイタリア語わかんだろ。』 「ああ、どうした急に」 『チェルヴォってどういう意味?』 「ん?それなら鹿肉って意味だな、日本語なら」 『!!』
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