030 この間、某焼き肉店で綿あめ四本食べた。
祭囃子が四方八方から流れだす。 太鼓の響くようでリズミカルな音があたりに鳴り響き、多くの露店が立ち並んで祭りは結構な賑わいを見せていた。
「おっ並盛家の娘じゃねーか。おっきくなったな」 「お母さんは元気かい?立派になったねぇ」 「おいおい、ちひろちゃんじゃねーか。」 「昔の君のお母さんを見ているようだよ、巫女ちゃん。」
誰だ巫女ちゃんって。変なあだ名つけてんじゃねーよ。 酒に酔ったオッちゃんorオバちゃんが店先から次々に顔を出して、見回ってる私に声をかけてくる。
ほとんどが私の母親と知り合いのようだ。 …あっママン草壁の事じゃないぜ。
『どうも、もうそろそろ巫女になんなきゃなーって思ってさぁ。よろしくなオッちゃん。』 「…五万。」
あらら、私の後ろからヒバリがそういったとたん、オッちゃんの顔から笑顔がサッと消えていったよ。 オッちゃんは恐怖による体の震えを押さえながら、財布の中から諭吉さんを五枚取り出した。
おや、ここのオッちゃんは綿あめを作っているのか。
『オッちゃん、綿あめ一本頂戴。売り上げの調子はどう?あっ会計はこのチキンで…うそだよ。ちゃんと払うよ…』
だから、そんな睨まないでくれるかな。
私が聞くとオッちゃんはフッ…とハードボイルド風に疲れたような笑みを零した。
ンなことやってもカッコよくねーぞ、クソじじい。
「売上金をね、ひったくられたんだ。」
一本の割り箸にピンク色の綿を絡ませながら、彼はため息をついた。
「ひったくり?」
私よりも先にその言葉に反応する、イライラヒバリン。 ちなみに、何故イライラしているのかというと人がいっぱいいて、咬み殺したくなる衝動にかけられるが、それを我慢しているから。
おい、無理すんなよ。半袖から出てる腕にじんましんが見えるぞー
「最近、そのひったくり被害が急増しているらしいんだ。それのおかげでオッちゃんは自腹で五万を出すことになったんだよーぐすっ、助けてくれよちひろちゅあん」
言い方、もうちょっとどうにかならないかな。 大の大人が恥ずかしい。
『んーでも、五万っつーのは決まりだしなぁ。私のこの見回りは顔見せみたいなもんだし。』 「綿あめのザラメ追加す『任せろよな、オッちゃん!!』…ありがとうよ」
特大の綿あめを貰って、その店を後にすればヒバリは隣に並んで歩き始めた。
おい、幅とって歩くなよ。通行人がビビってんじゃねーか。 お、この綿あめうめーな。やっぱり祭りはこうじゃないと。
「ねぇ、それ一口ちょうだい」 『ん?珍しいな…フッそうか、やはり貴様もこのWATAAMEの魅力に気が付いてしまったのか!!』
そうドヤ顔でヒバリを見れば、言わなければよかったみたいな顔をされた。 なんだ、綿あめあげないよ…あ、あの店、五万払わなかったんだなー
バキッ、ドスッと物騒な音が隣から聞こえるかと思えばリーゼントのおっさんが二人、屋台を足でつぶしていた。 踏み潰してるって言った方がいいのかな、アレ。
「五万。」
今度はチョコバナナ屋に金をせびるヒバリ。
んーチョコバナナか。一本欲しいな。 顔を知ってるオッちゃんだったらタダでくれるかもしれない。
『どーですか、売り上げの方は…ってダメツナかよ、チッ』 「あれ?!ちひろちゃん!!どーしたの、その格好!!」 『巫女ですよー正装だよ、正装。相変わらずダセェ服装だな中坊諸君』 「それはテメーもだろうが!!」
奥の方からバナナの箱を出してきたチャラ男…獄寺と山本。
「ちゃおッスちひろとヒバリ。地元を取り締まる奴らもファミリーに一つは欲しいよな。」
さりげなく銃を突きつけて、悪徳業者の如く勧誘してくる赤ん坊、リボーン。 今、光に反射されて拳銃がキラリッて光ったよ。マンガみたい。
あ、そういえばヒバリに綿あめあげるの忘れてたな。
『ハイ、ヒバリ』 「うん。」
きっちりと諭吉五名の人数を数えて、ポケットに入れたヒバリンに持っていた棒を差し出す。 最初はかなりの量のWATAAMEがあったが、ほとんど私の胃の中に消えてしまった為あと少ししか残っていない。
パクリ、とヒバリがそれを食べた瞬間ダメツナは「え゛え゛え゛え゛え゛?!」と奇声を発した。
なんだよ。
何でダメツナ驚いてんの。
何で獄寺は顔、赤くなってんの。
山本、何でテメーはヘラヘラ笑ってんだよ。
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