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026 真っ青な海にバタフライアウェイ!!



『あーつーい゛ー』
「だから言ったでしょ、群れてるところはロクなことが無いって」
『違ェよ、私が言いたい事はそれじゃない。』

キラキラと夏の太陽に照らし出される地平線、白い波がさざめく海、その海面には美しい小さな小島の影がいい感じに映し出されていた。

その自然の神秘の中―海の上でなぜ私はこんな姿で、しかもボートで走っているのでしょうか。

「君が海に行きたいって言うから、わざわざこうして来てるんでしょ。ちひろはわがままだね」
『だーかーらー!!海に行くって事は海で泳ぐって事なんだよ。しかもなんだこの格好。何で学ラン?!何で水着着てないの?!』

着替えて来いって海の家で手渡された紙袋の中に、家にあるはずの制服がなぜか入っていたよ。WHY?なぜ?
まあその制服の下にちゃんと私は水着を着てきたから貴様の思惑通りにはいかなかったがな!!プププ。

…ねぇ、知ってる?
夏に長袖の学ランっていうのはね、めっちゃ太陽光を吸収するんだぜ。
やばいよ、めちゃめちゃ熱こもってる。ヤベっ汗かいてきた。

私は隣で同じような学ランを着ているのに、涼しそうな顔して汗のあの字もないですよ的なヒバリを見た。
モーターボートを操作しながら、優雅に日向ぼっこを楽しんでいるようだ。

クソッ何でそんなに平然としていられるんだチキン!!

この前、奴の夏用の学ランと私の冬用の学ランを入れ替えて、作戦成功!!ってテンションあがっていたのに何故…まっまさかァァァァァ

バッと視線の先をヒバリに向ければ、ドヤ顔でパタパタと自分の学ランの襟を仰ぐ彼。
そこから見えるサイズとか書いてある小さなタグをよくよく見てみれば、はっきりと“夏用”との文字が。

『ウォォォ!!テメッ何人の学ラン、勝手に着てんだゴルァァァ』
「君が僕のを取ってったんでしょ。僕は自分のを取り返しただけだよ」
『チクショーばれてたか!!でも私は知っているぞ!!テメーが私に隠れて抹茶味のアイスを昨日食べたのを!!』
「気にしないでよ、僕とちひろの仲でしょ。」
『いつもそうやって物事を片付けようとしやがって!!その一言ですべてがまかり通ると思うなよボケコラカスゥゥゥ』

ボートから立ち上がり、ヒバリの学ランの襟をつかめば、バランスを崩して体の重心が取れなくなる。

視界が、30度ほど傾いた。

『っ…!!』

歯を食いしばり、思いっきり彼の襟を持つ手に力を込めて、先に海面に落ちそうになっていたヒバリを力任せに引っ張り上げる。

「ちひろ?!」

そのまま私の体はヒバリを引き上げると同時に前のめりになって、今度は自分が海の上に放りだされてしまった。

あらら、これはこのままバタフライアウェイしちゃうパティーンですか!!
ヤベーな、たしかこの学ランにはおやつに持ってきたするめいかが入っていたのに。

少し後悔したその瞬間、すぐ近くでバッシャーン、と海の中に飛び込むような音がしたような気がして、すぐに海水の冷たい温度が私の体中に染み渡っていった。

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