023 無駄に隠そうとすると、かえってばれやすくなる。(後編!!)
なんて失礼な。 そう思いながら顔を上げれば、見たことのない顔のおっさんが目に映った。
白衣こそ着ているものの、医者なんていう職業柄じゃないような雰囲気を醸し出している彼は片手に酒瓶を持った酔っ払い。 髪型がヤンキー獄寺に似ているのは気のせいかね。
つーかリボーン。あいつ、会ったこともない奴に何吹き込んでんだ。
「マジで巫女の格好してんだな、へーおじさんとの趣味の合う女の子にはお酒をあげちゃうぜ、飲んでみろよ」
『趣味っつーかお前のマニアックな好みの問題だろ。』
コスプレじゃねーよ。
「まぁいいじゃねーか最初は可愛いかと思っていたが、案外ふつーだな。」
じゃあ絡んでくるな。
「いいか、女ってのは男が育ててやるもんだ。今はそんなんだが十年後とかにゃ、変わってるかもしれねーぜ」 気にすんな、と言って、酒瓶のコルクを抜くと私に差し出してきた。
別に気にしてねーよ。
まあなんとなく、断るのも悪いかなって(未成年飲酒禁止!!)思ったので、それを少し口に含んでみれば、口の中にカッとするような刺激的な味が…
…あり、何ともないぞ。ただの水じゃね? ケロリとしている私を見て、おっさんは不思議そうに首をかしげた。
「あっれーおっかしーな。確かにアルコール度数の高い酒を持ってきたはずなんだが…」
すると、その瞬間グラリと視界が揺れて顔中に熱が集まっていくのを感じた。 何か不思議な感じがする。オッス、オラちひろ。フワフワすっぞ…とか頭の中で考えていた時にはもうすでに遅く、体中から力が抜けて意識がスッと途切れていった。
「っか〜やだねー男ばっかっ!!」
ヒバリが一乱闘を起こした後、シリアスな雰囲気をぶち壊すかのように、ベロンベロンに酔ったDr,シャマルが桜の幹からひょっこりと顔を出した。
「まだいやがったのか!!このヤブ医者、変態スケコマシ!!」
いつものように獄寺が彼に暴言を吐き、それを止めるツナだったが、シャマルの酒瓶を持ってない方の手で引きずっているそれを見て、サッと顔から血の気が失せていった。
「オレが呼んだんだぞ」 「赤ん坊、会えてうれしいよ。」 「さっき会ってたけどな」
いつの間にやら現れたリボーンに少し機嫌がよくなるヒバリ。 それを見たツナはシャマルに引きずられて、しかも気を失っている状態のちひろを自分が前に出ることによって隠そうとした。
ヒバリと何故か仲の良い彼女が、飲んだくれのおっさんに引きずられて、しかも酒をのまされたのであろう、頬をほんのりと赤く染めた彼女を目にしたら怒るのではないか。 いや、怒られるだけじゃない、ここにいる人間を全員つぶすほど暴走するかもしれない。
そんなことになったら花見どころの騒ぎじゃないと、想像力豊かな沢田綱吉(14)は真っ青になり、ふらりとよろけてしまった。
が、それが命取りだったようだ。
「…草食動物、君の後ろにあるものはなんだい?」 「!!」
ビクリ、と肩を震わせ何も言えなくなるツナ。
するとそんなツナの様子を見かねたシャマルが、ずいっと左手で引きずっていたものを前にだして「お前、これよりかわいい子かねーちゃんいる?」と言ったところ、消えろという一言で彼は沈んでしまった。
「起きなよ、ちひろ。もう帰るよ」 『んーもーちょっと…あり、ヒバリだァ』
よいしょ、と私を担ごうとするヒバリの足取りはおぼつかない。
コレ、ヒバリじゃなくて千鳥じゃね。とか思う私は天才じゃない? 流石は並盛ちひろ。頭がよくて困っちゃ…
「まだ酒が抜けてないのかい。まぁいいや。起きたんなら自分の足で歩きなよ」 『ぐーー』 「狸寝入りはやめ…まぁいいか」
完全に寝ているちひろを見たヒバリは肩に担いでいた彼女の手を、器用に自分の首へと巻き付けてすぐにその体を自分の背中へと移し、背負った。
桜に囲まれ、Dr,シャマルにかけられた“桜クラ病”に苦しみながらも、酔いつぶれたちひろを背負って歩く姿は、ツナ達にひどく強い印象として残ったという。
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