復活 | ナノ




 
 
 
019 雪合戦を1対30でやったことがあるけど、なかなか面白い。



学ラン(冬用)とマフラーで防寒対策をして、校庭に一歩足を踏み出せばサクサクと足元から心地よい音がなった。雪を踏みしめる音、私は好きだ。

隣にいるヒバリはいつも通りの格好だけど、寒くねーのかな。ああ、ヒバリだから羽毛が生えてんのか。
そう考えていると一発、頭をグーで叩かれた。

外に出た瞬間、ひんやりとした冷気が顔にあたってテンションが上がった。
ああ、冬なんだなって実感する。

…あれ、何やってんだろ。

ふと、目に留まったのは悲しいことに一人でラジコンカーを追い掛け回す、ダメツナの姿。
私たちに気づかずにそれを追うダメツナは何かに躓いたのか、雪の上にベシャリと倒れこんだ。

ヒバリはそんな彼の取り逃がしたラジコンを手で受け止め、拾い上げる。
すると、パッパカパーンとなんともめでたいような音がして、“Win”と文字が書かれた旗が上がった。

『おーWinだってーよかったな、ヒバリン。』
「何コレ?あとそのでかいカメ」

カメ?
視線を少し先の方へと向けると、かなりでかいカメが…寝てる、のか?
ちくしょー羨ましい亀だ。くっ、私は休日でさえも学校へと出勤して、仕事をこなしているというのに。(ウソです)

「ヒバリさん!!…と、あれ?ちひろちゃん」

そう呼ばれた瞬間、ゾクリと腕に鳥肌が立つ。
パンナコッタ(訳:なんてこった)!!完全防寒装備で来たはずなのに、まだ寒いだと?!

『気持ち悪い。下の名前でちゃん付けするなカス。』
「え?!カス?!…じゃあ呼び捨てにしてもいいの?“ちひろ”」
『…見下されてる感じで、ヤダ』
「え?!」

ショックを受けているダメツナはシカトするとして、私は足元の雪をせっせとかき集める。
そしてぇぇぇ…硬く固めてダメツナの顔にスパーキング!!
ベシャリ、と彼の顔面に雪が張り付いた。

『…プッ』
すると、それを見たヒバリが、持っていたラジコンの形を変形させて雪の玉の形にする。
…それホントにラジコンか?いま、ゴクリって唾を呑むような音がしたけど気のせい?

「そうだね、せっかくの雪だ。雪合戦でもしようかな。…とは言っても群れる標的に、一方的にぶつけるんだけど。」
『じゃあダメツナを一緒に的にしてやろうぜ!!ストレス発散!!』

私はもう一度足元にかがんで、さっきよりも何倍もあるような巨大な雪玉を作り始めた。それにギュッと力を込めると、カッチカチな塊が出来上がる。

『せーのっ!!』
「うわっ、レオン投げてくんの?!」

ひゅんっ!!
と、私の投げた雪玉はダメツナがとっさに盾にした何かにぶつかり、ヒバリはやっぱ止めた、とレオンをぽいっと投げ捨ててクルリと後ろを向いて、さっさと歩きだしてしまう。
なぜか、その足取りはいつもより早い。

『あ、待てヒバリ!!てめーどうせ応接室で私のエクレアを食べるつもりだろ?!期間限定の抹茶&ショコラミルク味。…おい、ゴルァてめっ、ダッシュしてんじゃねーよコノヤロー!!』

背後ではドゴォォォォンって物騒な音がしたけど気にしない!!髪の毛もちょっと焦げた感じもしたけど、気にしないぜ!!
ダメツナの安否は…どうでもいい!!

とりあえず、私は目の前の黒い背格好の彼の元へと、ただ追いつくために地面を蹴って―――校舎の段差につまずき、顔面から床に突撃した。

ガラッ
「遅かったねちひろ…鼻血、出てるよ。はい、ティッシュとお菓子の板チョコ」
『なに?!ゴミ箱にエクレアの包装紙だと?!しかもすでにカラだし!!』
「チョコで我慢しなよ。」
『…くっ、エクレアの仇はいつか必ず…もぐもぐ』
「(結局、チョコ食べるんだ…)」
『あれ?!なんで鼻血の量が増えてるんだ?!うわっ、止まらないぞコレ、どーすんだコレ。』
「バカ」

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