013 自己中な人間は58階建てのビルからFlyAway!!
「委員長ー、朝食の用意ができましたよ。もう食べますか…おやちひろさん、起きていらっしゃったんですね。」 『グッドモーニング、ママン。グッドモーニング朝食。もちろん食べ「まだだよ。」……は?』
私の言葉を遮り、ヒバリはスクッとその場から立ち上がった。 当然、彼の膝に頭を乗っけていた私はその拍子に、畳の上に頭をぶつける。
『〜っ、イテェ!!何しやがんだこのチキンが!!』 「ちょっと赤ん坊に貸しをつくってくる。まぁ、取引だね。ロールキャベツは僕が帰ってきてからだよ」 『おいゴルァ、なんでテメーも一緒に食べるつもりでいたんだよ?!自分の家で食べればいいだろ』 「………。」『シカトか!!』
気がつけば、ブォンブォンと彼の愛車であるバイクのエンジンをかけ、さっそうとヒバリは私の家から姿を消した。 何だ、コレいじめか?!私は丸一日、胃の中に何も食物を入れて無いんだぞ!! …あれ、この前もこんなやり取りがあった気がする。気のせい?
「もしかしたら、恭さんはちひろさんと一緒に食べたかったのかもしれないですね。自分の家ではいつも一人ですから。」
母のエプロンを身に着けたママン草壁はタオルで手を拭きながら、台所から出てきた。 …なんつーか、ごついオッサンとリーゼントにはエプロンが死ぬほど合わないという事がよく理解できたよ。ピンクの花柄っていうチョイスがいけないのかもしれないけど、それにしてもとんでもない破壊力をお持ちのようだ。
恭さんには名前で呼んだことは秘密ですよ、と彼は付け加える。
これが唇に人差し指を当てて、ウインクでもするようならば、世界中の人類を恐怖させることができるのだが、あいにく彼は意外にも常識人なので、そんなことはしない。
『ヒバリの家って並盛の中でも結構な名家なんでしょ。あんまり表には出てこないけど、あれでも上流階級の人間なんだよねー』 「そうですね、自分はあまり知りませんが…でもそれ故に、一人になるのを好んでいたのかもしれませんね。ちひろさんといるとき以外は」 『は?』 「おや、薄々感じているはずですよ。恭さんは群れるのをとても嫌っているハズなのにちひろさんとは嫌々渋々、といったような表情をする事もありますが、完全に拒否られたことは無いでしょう?」
そういえば一度もヒバリといた時に、お菓子を出されなかった日は無かった。つまり、お菓子を出すタイミングが応接室に来てもいいよーみたいな合図だったという事か。なるほど。
『幼馴染だからなーそういう所はちゃんと分かってるもんなんだね―そういえば、ママンって中学生なの?それともオッサ―…あれ、なんで台所に戻っていくの?!ちょっと、おい何でこっち向かねーンだよ。ちゃんと現実と鏡を見てみろ!!テメーの姿はなぁ、フランスパンを頭につけたおっさんにしか見えねーんだよ!!』
あ、ヤベ…ちょっと言い過ぎたかな。 その後、拗ねてしまった彼に私にしては珍しい必死のフォロー(それでも君は立派な人間さ、的な発言)をしたところ、ママンはやっとの思いで復活。熱い握手を交わして友情を深め合った。 すると帰ってきてその場面を目撃したヒバリに拳骨で殴られた。
なぜに?
そして草壁ママンはトンファーで咬み殺され、リーゼントが折れていた。チラリとその残念な髪の毛を見てみると、崩れたリーゼントから散々自分が例えてけなしてきたあの食べ物がばっちりと視界に映る。 それが物凄く衝撃的で、ヒバリと私は一言も喋らずに食卓の席へとついた。
……マジでフランスパ、げふん。何も見てないよ。私は何もあのこんがりとおいしそうに焼けた細長いパンなんて見てません。 最後に一つ、ママンに言っておこうかな。
『せめて、毎日取り換えようか』
…カビ、生えてたよ。
back
|
|