014 バカは風邪を引かないっていうのは迷信…だといいね!!
『は?神主の衣装を貸して欲しい?』 「ハイ!!できればお祓いに使う、あのヒラヒラしたやつもお願いしたいです!」 『ああ、あのシャラシャラしたやつ』 「あのピラピラしたのです」
座敷に正座して作りたての抹茶(私が初めてやったので味は保証しない)を差し出せば、ありがとうございますと丁寧な返事が返ってくる。 これがヒバリだったら、美味しくても不味くても“うん”で終わるんだろうな…と私は遠い目をした。 あれ?そういえば、ヒバリにお茶出したことないや。
目の前には黒髪をポニーテールにしたかわいらしい女の子の三浦ハル。聞けばダメツナの知り合いだという。棒倒しの体育祭に来ていたそうだ。
「並盛神社の巫女さんが、ツナさんたちのフレンドだと聞いたので、頼みがあって来たんです!!」
ズズッと抹茶を一口飲めば渋い、とでも言うかのように顔をしかめるハル。抹茶の粉の量が多すぎたか。
「はひーハル、抹茶ケーキならいくらでも食べられるのですが…なかなかデンジャラスな味です!抹茶って。」
デンジャラスって何?初めて聞いたよ。抹茶を苦いじゃなくてデンジャラスって言う人。え、何が危険なのさ。私の味についてか?!失礼な。
コトリ、と湯呑を置いて、フーッと息を整えた彼女は少し顔を曇らせた。
「実は…ツナさんの家にいるランボ君と獄寺さんはいつも喧嘩をしてるんです。少しでも仲良くして欲しいとハルはいつも思ってるんです。今日、入院しているツナさんを励ますついでに…だから陰陽師の格好をして頑張ります!!」 『…いや、頑張るって言ってもココの神社あんま陰陽師とか関係ないし。私もまだ正式には巫女になってないんだけど。』
つーか、陰陽師のフリして仲直りってどーゆーことだよ。
「作戦はこうです。まずは獄寺さんに近づいて、占いの結果を伝えます。」 『ほうほう、今日の運気が上がってますよ的な感じでおだてるんだな。』 「いえ、呪われていると言います!!」
なんでだよ!!
つまり、彼女の言いたいことはこうだった。 呪いを獄寺に告げ、それを消す効果を持つ藁人形をランボという人物に持たせる。その呪いにビビったバカ獄寺は、その人形を受け取るべくランボの近くに行って仲良くなったよ。よかったね!!
―――何この子。バカなの?
『ちなみにランボっていう奴は並中生?』 「いえ、五歳のいたいけなベイビーです!!」
五歳児かよ!!大人げねぇな獄寺。
『まぁ、いいんじゃねーの。そういうバカみたいな企画は結構好きだから。神主の服なら持ってっていいよ。せいぜい獄寺をバカに…げふげふ、仲良くさせてきなよ。はい服、入れといたから』 「ありがとうございます!!ジャパニーズシャーマンさん!!」 『(…じゃぱにーずしゃーまん?)また遊びに来てね、馬鹿…獄寺たちの報告も待ってるから』
服を入れた紙袋をもったハルを玄関口まで見送れば、ペコリと頭を下げて彼女は帰って行った。 …うん、なかなかキャラの濃い女の子だったね。
『あーあハルのしでかすことをこの目で見てみたかったなー』
自室に戻り、畳の上にゴロリと寝ころべばピヨピヨと鳥の鳴き声がポケットの中から聞こえてきた。
これは私の携帯の着信音。以前、並中の校歌にしておきなよとヒバリから言われたが、私が好きなのは並中ではなくこの並盛町だとドヤ顔で宣言したところ、ヒバリが携帯を買った場所で鳥の鳴き声を入れてきてくれた。
どうやら並盛町と並盛鳥をかけたらしく、流石の私もちょっとそのセンスには引いた。
ピッとメールの受信ボックスを開けばママンからのメールで“委員長が風邪をこじらせて入院した。よろしく頼むぞ。”とご丁寧にも絵文字まで添え付されていて、軽くイラッときたのは言うまでもない。
『何がよろしくだバカヤロー…ん?』
病院?そういえばハルがダメツナが入院してて、とか言ってたような…え?まさか彼女はあの服を着て?…おやおや?つーことはハルのしでかしちゃう所をバッチリ見れる的な?!
『フッ、だったら私もハルと一緒にバカ騒ぎしてやらぁ!!』
これから起こるであろうことを想像し、急にテンションがあがったちひろは自ら、もう着ることはないだろうと思っていたあの服装に腕を通していた。
あ、ついでにヒバリのお見舞いもしておくか。
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