012 バカって言う奴がバカって言ってる奴が一番バカ。
「君って馬鹿?いや、馬鹿なのは元より承知してるけどそれにしてもこれほどのバカは、見たことがないよ。」 『ぐー』 「寝たふりしてもダメだよ、馬鹿」 『…飛べねぇヒバリはただのバカだ』 「有名な某映画作品のセリフを変えて言うのはやめてくれるかい」 『おいおいヒバリ、もうちょっと空気を読めよ、今はジーナさんの“バカッ”っていうセリフを言わなくちゃ〜これだからチキンなんだよ、ヒバリンは。』
フワリと畳の匂いがほのかに香り、和風につくられた庭からは小さな川が流れ、チョロチョロと心地よい音を立てている。 日干しされ、私にかけられた羽毛の布団からはヒバリの学ランと同じ、陽だまりの匂いがした。
「草壁が布団から枕、服まで洗濯してくれたんだよ。今は朝食と昼食を作ってる……君、最近ごはん食べた?食べて無いでしょ。いくらこの場所が町からちょっと離れてるからって、何か食料ぐらいは買っておきなよ。」 キャベツしかなかった、とヒバリは付け加えた。
なるほど今日はロールキャベツか、と食材の使い回しが上手いママンの想像をする。おっと、よだれが垂れちまったぜ。
『ヒーバーリ―』
暇だから膝枕しろ、と私は布団から起き上がり、あぐらをかいている彼の足の上にゴロリと寝ころんだ。 うん、なかなかの寝心地の良さですな。
『そういえばヒバリ、私が膝の上に足乗っけたら怒るくせに、なんで頭だったら怒んないの?何、まさかの頭フェチだったり…いや、そんな馬鹿な』
そう言った瞬間、ヒバリはいつもより少し目を見開いたまま、ピタッという漫画の効果音がでてきそうなほど固まってしまった。 そう、まるで石のように…
『いや、石のようにとか言ってる場合じゃねェ。ヒバリ―!!反応しろ、ヒバリ!!鼻の穴にトンファー突っ込むぞ、ヒバリ!!』 膝の上から無駄にフサフサした彼の前髪を引っ張ってやれば、やっと我に返ったようにぱちくりと瞬きをした。 何やってんだろう。このチキンは…ハッ、まさかマジで頭フェチだったのか?!
「そんなわけないでしょ、馬鹿じゃないの」 『ハイ、今ヒバリは全国の頭フェチの方々を愚弄しましたー、土下座して謝れよチキン』 「ちひろのくせに愚弄なんて言葉が出てくるなんて驚いて言葉も出ないよ」 『今喋ってんじゃん、現在進行形で』
そういえば、この前の棒倒しはどうなったんだろう。 …あれ、そういえば私バックドロップした後から記憶が無いや。結果はどうなったんだろうな―でも別にやる気はなかったから興味なんてないさ!!おばけなんてウソさ!!…あ、でもやっぱり知りたい。 そんな私を見かねたのかヒバリはため息をついて、話し始める。
「君のクラスの草食動物が落ちて負けてたよ。でもその後は毎年みたいに乱闘になってた。凄く群れてたから僕は帰ったけどね。ちなみに君はバックドロップをかけた相手の上で爆睡してたよ。丸一日位は寝てたかな」
どうやらありがたいことに、寝ている私を家まで連れてきてくれたようだ。 壁にかかっている時計をチラリと見てみれば、時刻は午前8:10ちょい。もしかして目を覚ますまでずっとここにいてくれたのか?
『せんきゅーヒバリン。ミッションコンプリィィトゥだな!!』 「…そんなクエストは請け負った覚えなんか無いよ。あと巻き舌がうざい。」 『なんだRPGやったことあんのか?』
クエストって、何で流行に疎いヒバリが知ってんだよ。でも私はそんな事は口に出したりなんかしないよ。それが常識だって言われたら、私がバカみたいに見えるから。 フッ、私ってオ・ト・ナ!!
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