011 問題児本人は自分が問題児であると、なかなか自覚しないことが多い。
「僕がやるよ」 「ヒッ、ヒバリさん!!」
何だ?!、そんな声がA組からして、後ろの合同チームを見てみればこの時この場所に全くと言っていいほど合わない学ランを翻し、人間の頭を踏みつけながら棒に近づいていく見知った一人の男。
参加するんならジャージぐらい着ろよ、と思う。
そんな彼は棒の上に上り詰めたかと思えば、私の方をチラリと見下ろした。
「テンションの上がったちひろが参加するんじゃ、こっちのチームに勝ち目は無いからね。僕が入ってあげたんだ。それにあっちの総大将とあいまみれば、赤ん坊にも会えるかもしれないからね」 『んだとゴルァ。お前、私がか弱い乙女だということを忘れているから、そんな事が言えるんだな?!そーゆーことなんだな?!』 「か弱い乙女は男を一クラス三学年分、まとめあげたりはしないよ」 『よっしゃ、いいか野郎どもォォォォ、狙いは奴だけに絞れェェェ!!全員でヒバリの棒をぶち折るぞォォォォ!!』 「折るの?!」
ダメツナが頭上高くからツッコんでくる。つーかなんでテメーが大将なんだよ。よりによって一番使えねー奴を…
“それでは棒倒しを開始します。位置について下さい” アナウンスが本部から流れる。
私を先頭としたA組は棒を守るように、円を作って固めた。
しばしの間、静寂があたりを包む。
“開始ィィィィ!!”
「オオオオオオオオ!!」 なんとも暑苦しい体育会系の奴らが大きな雄叫びを上げ、私も、A組も、敵の奴らも、真正面から突撃するために、強く地面を蹴り上げた。
『オラァァァァ!!よくも私のビスケットを腐ったやつに変えやがったなァァァ、このボケがァァァ!!』 「うぐはっ」 『チクショォォ!!よくも私の弁当を作らなかったなァァァ、このナスがァァァ!!』 「ガハッ」 『てめーなんざ、フランスパンと同じような存在だよなァァァ!!髪型ばっかり弄りやがって、このパンがァァ!!少しは味付けもしてみやがれェェェぇ!!』 「グフッ」
右、左、右、時には足、と全身を使いながら、前へ次々と出てくる敵に日頃の鬱憤を拳に込めて技を繰り出していく。
ちなみに攻撃と共に口から出ている文句は、全てある一人の人物を指しているのだが、直接文句を言ってしまうと拗ねてお菓子を買ってきてくれないため、今ここで吐き出している。あえて彼の名前は伏せさせて頂こう。
「おい、あいつホントに女か?」 「並盛家の巫女で、次期当主だって母さんが言ってたぞ!!」 「マジかよ、巫女って清楚な雰囲気じゃないのか?」 「バカっ、それはお前の妄想のし過ぎだ。現実を見てみろ。実際、暴力的じゃねーか」「世も末だな!!」
『ウルセェェェ!!文句あんならかかって来いや、テメーらなんかなぁ巨峰の食べた時に出るおいしいけど結局はゴミとして捨てられる皮の裏についた、果実の一部分だボケェ!!』 「例えがスゲー分かりにくい!!意味わかんねーよ!!」
目の前にいる男どもを、次々に蹴散らしていくがいくらやっても埒が明かない。だんだん私は飽きてきた。
早く笹川、復活しねーかな。あいつさえ来れば私はこの場を去って、フランスパンからお菓子貰ってヒバリの膝の上で昼寝して…やべ、眠くなってきた。
流石にここで寝たらまずいと、私は片手で目をこすり、目の前から殴ろうとしてきた奴にすぐさまバックドロップを仕掛けた。
あ……もう限界…。
バックドロップで脳震盪を起こしたであろう奴の上に、ドサリと倒れ込み薄れゆく意識の中で誰かが私の名を呼ぶのが聞こえた。
フッ……最後がこんなザマだとは、俺もまだまだ未熟だったということか。
燃え焦げたよ、
真っ黒な
――炭にな…
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