復活 | ナノ




 
 
 
010 何か悪いことをすると自分に返ってくるのって本当



“各代表の話し合いにより、今年の棒倒しはA組対、BC合同チームとします”
放送委員が昼ご飯を和気藹々と食べている全校生徒に向けて、拡声器を通したアナウンスを流す。

その言葉に、1、2、3年のA組からは落胆と驚愕の声が入り混じったブーイングが起こり、残りのB、C組からは喜びと優越感に満ち溢れた歓喜の叫びがグラウンドを支配した。

「ではご武運をお祈りします、ちひろさん。」「頑張ってください!!」「応援してますよ!!」「今のお気持ちをどうぞ!!」
『……たるいの一言に尽きる。』

本部の狭いテントから出る際、黒い学ラン姿の男たちから声をかけられるが、こんな暑苦しいおっさんどもに応援されても、何も嬉しくない。どうせなら若い女の子に言われた方が俄然やる気が出るというものだ。

ママンから手渡された“A”というゼッケンを、ジャージの上に身に着け、私はダメツナ達のいるチームへと足を進めていく。

BC組のみならず、A組の主戦力の笹川了平を倒してしまった私は、急きょ男子だけの競技に出場することになってしまったのだった。

「あれ?並盛さん、何で出てるの?!お兄さ…笹川先輩は?!」

ハチマキをしたダメツナや存在感皆無の山本達が私の元へと駆け寄ってくる。
何だその“綱吉”と書かれたハチマキは。もしかして、自分で刺繍しちゃった感じ?なんてかわいそうな奴なんだ…いと哀れなり!!

『笹川は何者かにやられて、今は休んでる。代わりに私が出ることになったんだ…すまない、彼を守れなくてっ…自分がなんて非力なのかを思い知ったぜ、くっ』

両手で自分の演技に爆笑しそうになる顔を何とか隠し、ガクリと膝を地面につけば、周りにいたクラスメイト達は慰めの言葉をかけてくる。

……うん、ウソは言ってないよ。

『無茶苦茶な審議であの案が押しとおってしまったんだ…でも笹川はこう言っていたよ――チームを必ずや優勝へ導け、お前らなら絶対にできる、と』
「ちひろちゃん…」

アドリブも入れたけど、本当の事だよ!!風紀委員でA、B、C組を分けてやるべきだっていう意見が大半だったけど、私が無理やり押し通してやったのさ!!フハハハハハハハ!!
つーかダメツナのくせに、私の名を呼ぶとは生意気な。

すると応援席の方から女の子たちの高い声が聞こえてきた。どうやら、いち早くこの状況を理解した子たちが私の名を呼んで、精一杯の応援をしてくれているではないか!!

『笹川の屍を超えて!!我らがA組、BC組に打ち勝ってみせるぞォォォォ!!彼の死を無駄にするなァァァァ!!いいか、野郎どもォォォ!!!』
「オォォォォォォ!!」

一気にテンションを上げた私はダメツナを棒の上に乗せ上げ、実質このチームのリーダーとなったのであった。

「あそこまで群れの中に溶け込み、生徒たちの士気を一瞬にして上げて最前線に立つとは、流石ちひろ」
「士気を上げているというか、ちひろさん自身が一番やる気に満ち溢れているような気がしますが…」
あんなにだるいって言ってたくせにね、とヒバリはポツリと呟く。
そんな彼女に二人は本部のテントから穏やかな表情で、視線を向けていた。
まるで自分の子供が活躍する様子をそっと見守るかのように。

「誰が総大将をやるんだ?」

ふと、別の方向から叫ぶような声が聞こえた。
どうやら誰をBC組の棒の上に立たせるか、もめているらしい。

人数も例年より倍の数がいるので、それ相応の意見が多く男だけという状態の中、殴り合いまでもが勃発し始めていた。

「オイ、止めないか……委員長?」

止めようとした草壁を手で制し、ヒバリは静かに席を立った。

その口元に、微かな笑みを浮かべながら…


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