112 昔は全然熱くなかったのに
「バーロー見つけたぜ、ユニ様」
ゴクリと後ろの方で唾を飲み込む音がした。
目の前の炎の拮抗するぶつかり合い。が、ある一点を軸に攻撃する炎と受け止めそれを相殺する炎。パッと見スクアーロの方が優勢そうだが、このまま続ければ彼の負担は増える一方だ。消耗が激しいし、分が悪い。 空鬼畜山本が残ると言い張るが、一人で暴れたいと銀色の彼は言った。ロンリーウルフを気取りたいんだそうだ。サメなのに。
「わ・・・わかった!!じゃあみんな・・・アジトから出ようか・・・?」
そうダメツナは皆んなと共に駆け出すが、私だけはその場から動かずにいた。
「おおっと」「お”お”っと」『おおっとってお菓子あるじゃん、アレ美味しくない?』
幣にちょこっと炎を与え、ディリテ伯爵を呼び起こせば、丁度スクアーロも匣兵器からサメを取り出したところだった。おおっと、炎を”注入する”って言うんだっけかな。
「?!う”お”おぃ!!ちひろ!オレはひっそりと一人で暴れてぇっつっただろうがぁ!!」
『うるせェ!私はさっさと神社に戻りてェんだ。さっさとかたァつけんぞ!』
おっさん一人くらいどうにかすんぞスクアーロ(おっさん)!と声をかければオレはまだピチピチだぁ!と弾んだ声でに返された。どうやら名前を正確に覚えられたのが嬉しかったようだ。 それでもなおしかめっ面の彼は、私の匣兵器をチラッと見、
”!!!!!”
ディリテに、ギンッとガンを飛ばした。
ビクゥッと大げさに体を揺らす伯爵。だがしかし、私にもあの視線は見覚えがあった。あ、あれは・・・私が昔、彼のリンスを全部髪の毛ではなく身体中に塗りたくってやった時と同じ視線・・・!クソッなんて願力なんだ、っょぃ。。。
すると次の瞬間ディリテは猛スピードで旋回し、私にめがけて牙をむきだし大きな口を開ける。ギュンッとこちら側にスピードを上げ、あ、といいかけた時にはもう自身の胴体は伯爵の口の中だった。
え、なに、そんなに怖かったの?確かに最初見た時ちびりそうになったけど・・・というか私食われてない?
『ちょっとォォォ戦いはこれからだろーが!!おいディリテぺっしなさいペッ!離せよクソッ!!』
長い銀髪がどんどん遠ざかっていく。手を伸ばせば牙が食い込む。
『スクアーロォ!!!!!』
堪らず叫べばヒラリと手を振られただけだった、それはもしかしたら自分の髪の毛を手で払っただけかもしれない。あれ?そう考えるとそんな気がする。そうだよ何回もその光景見たことあるわ。邪魔なら切るか縛ればいいのにね!
”スペルビからの伝言だ”
ディリテと同じスピードでチェルヴォが隣に並ぶ。いつからお前出てきた、私炎出してないってのにこの鹿肉め。スペルビってだれた。
”神社に向かえ、と”
『つーかあの間でチェルヴォはいつコミュニケーションとったの』
”我ではない、ディリテが言った”
『いつから彼はシャチとテレパシーつかえるようになったんだか・・・」
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