096 マンガの修業編って読みとばしていく奴、結構いる
“さて”
カツン、と蹄の高い音が部屋に鳴り響く…わけもなく、ゴウンゴウンと天井あたりから聞こえる大きな音によってそれはかき消される。
ザアアアアアッと上からは冷たい雫がほとばしり、ピシャリと頬に時々はねる。
あ、目に入ったじゃねェか。コノヤロウ。
“あ奴が戦っている最中、貴様には我が炎の扱い方について、手ほどきをしてやろう”
『…さっきの戦いで私はもうガス欠だっつってんだろ、眠いだるいラーメン食いたい。』
“何味だ”
『豚骨醤油ですが何か?』
“うむ、ナイスチョイスだ。さすがは我が巫女”
『相棒と言ってくれよ!あいぼー!!』
グッと肘と角をガシッと組み合わせ、友情を深め合う。やっぱり少年漫画はこうでなくっちゃ!! 耳元につけたイヤホンからは「さっさと修行しろ、このバカども」と何やら辛辣な言葉を浴びせられる。 例の黒い赤ん坊の小枝、じゃねーや声だ。ちくしょう、せっかくチェルヴォといい感じだったのに。
“まぁ冗談はさておき、本題に移るとするか、彼の言うとおり修行を始めよう”
『早くしろよ、鹿肉』
“ほう、ならば早速”
カァァァン!!!
先程よりも高らかな音が鳴る、と思えばズドンッと頭上からの強い衝撃。 頭部から肩にかけて叩きつけるような、大粒の雫。それが絶え間なく降り注ぎ続ける。
『―――滝みてェだな。』
“左様。”
いや、左様じゃねーよ。何コイツ、ムカつくな。 いきなりでかいスプリンクラーが付いた部屋に通されたかと思えば、学校のトイレにバケツの水を振りかけるいじめよりも辛い仕打ちを受けた。
ちくしょう、私が何をしたって言うんだ。
しかも今の私の服装、神社から小さい巫女服を引っ張りだされて着用したのだが、いかんせん何枚もの布で作られている為、なかなかの着心地の悪さだ。 知ってるか、学ランも水をすって重いこたァ重いが(参照;真っ赤、青な海にバタフライアウェイ)、巫女服はそれを通り越す。かなり重いんだ、ちくしょうめ。
肌に張り付いてくる高級絹の生地が憎い。そりゃあさ、私んとこは金があるけどもったいないの精神位は持ち合わせているんだ。シルク高いんだぞ!!水浸しにしてくれちゃって…どうしてくれるんだ。
『んで、滝をこんな部屋で再現させて何しよってんだ、排水溝はちゃんとあるんだろうな』
“いや、無い”
何でだよ、浸水すんだろーが。
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