094 台風の目に!!俺はなる!!
ビュンッ!!
一際強い風が吹き、体に纏わりつく炎がなびいていくのが分かる。 下を見れば宇宙服の奴らが私たちを見上げ、その一瞬の隙をついてヒバリがそこに球体をぶち込んだ。
どうやらかなり高い位置にいるようだ、ふむ、案外ディリテもモノ分かりのいい奴じゃないか。私の好みのツボをよく心得ている。
『ようしディリテ!!あいつらに突っ込んでやれ!!!ヒバリに遅れをとるんじゃないぞ』
コクリと頷いたのか、頷いていないのか。その真偽は分からないが私の言葉を理解したディリテは勢いよくビュンッと私の体を揺らした。
ガクッ!!
うおっ急降下かよ!!!……うむ!!素直でよろしい!!!確かに私は遅れをとるなと言ったけどね!!少し乗っている人間の事も頭に入れて行動しようか!!!
二人目の匣兵器ディリテ、まぁまぁよし!!
『あーーつかれた。ぜってぇ明日筋肉痛だよコレ。足じゃなくて腕が笑ってるもの、ホラ。』
とりあえずこのホールにいる人間はすべて倒した、というチキンの報告によりディリテから床に降り立った私。そして重要な事に気が付いた。腕が痛い。 プルプルと小刻みに震える筋肉もとい二の腕。なんか腕だけ別の生き物みたいだ。
「初めて見たよ、そんな人間。運動のしなさすぎなんじゃない」
呆れたように私を見やるヒバリ。 袖をまくりあげた私の腕をふにふにと指で突っついてきた。物珍しそうな表情で。
『バカ野郎だなお前。んなことしたら、もっと痛くなるに決まってんだろうが。ちょ、触んな、いつまでプ二プ二するつもりだ。』
「プ二じゃない、ふにさ。」
『どっちでもいいだろうがよォ何変なとこでこだわってんだ気色わりぃ。』
プ二、いや間違えた、ふにふにふにふに………
ヒバリは飽きることなく、まるでキツツキのようにつついてくる。 くすぐったいを通り越して、スゥッと心が覚めていくのが自分でもわかった。何してんだコイツ。 十年という月日の中で何があったヒバリよ。何に目覚めた、二の腕フェチか。
「筋肉、ないね」
『黙れ変態、いつまでつついてるつもりだ。』
「僕みたいに戦えば筋肉なんて自然とつくのに。」
バッと彼の手を自分の腕から引き離し、さっと距離を取る。身の危険を何となく感じたからな、チキン肌が立っちまったぜ。
『あれ、ヒバリ…ソレ』
遠くから見て分かったことだ、お気に入りの紫色のネクタイに血が付着しちゃってますよ。
「ああ、これか。大丈夫だよ、ちゃんと替えがあるから。」
シュッとまぁなんともスタイリッシュドヤ顔で新品同様のネクタイを内ポケットから出してきやがった彼に私はもう何も言わなかった。 そして予想通りの紫一色というナンセンスな色。私だったら……もう、そんなもんつけんよ。
真っ黒でいいじゃん、スーツとズボンとネクタイと三色真っ黒セットかっこいいじゃん。 チャゲアスのYAH YAH YAHみたいじゃんか。紫なんか入れたらおま…YAH YAHどころの騒ぎじゃないぞ、これから一緒に殴りに行こうかって飛鳥とチャゲが相談するぐらいさ!!
あれ、自分で何が言いたいのかわかんなくなってきた。でもアレはいい曲だよね。
「まぁいい、ちひろ。ちょっとこれを付けてくれるかい?」
『あん?』
そう言って差し出してきたのは例の紫色のネクタイ。 何コイツ、この私がネクタイを結ぶっつースキルを所持してると思ってんのか、んなわけないだろ。
『本当に私でいいんだな?』
「うん」
スッと膝をかがめて、私の手にキュッとそれを握らせる。 生地はいいものを使っているのか、思いのほかサラサラとした肌ざわりだ。
「ちひろにやってもらいたいんだ。」
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