復活 | ナノ




 
 
 
092 最近最強という文字をあんま見ない



“相手は匣兵器を使ってくる、気を抜くなよ”

『ヘイヘイ、チェルヴォは私よりシャチの方に指示を飛ばしてくれよ。私にゃよう分からんのでね』


モクモクと白い土煙の中から姿を現したのは、何やら不思議な格好をした人間たちだった。


『…テメーらここは地下だぞ、来るとこ間違えてんじゃん、逆じゃん。もしかして落っこちてここまで来ちゃった感じ?…ごめん、こんなこと掘り返すつもりはなかったんだけど。なんか……空気読めなくてゴメン。ちゃんとNASAにお帰り』

「ちょっと何この子。これは宇宙服じゃないからね!!NASAにも所属してないからね!!そもそも月になんて行ってねーし!!!」

『…どうだか、実は…?』

「なんで信じないの?!ちょっとォォォ腹立つんですけど!!!」


『ハイ隙ありー』

ドシャァァァとチェルヴォが女なのか男なのかイマイチ口調では性別がつかめない人間を後ろから得意げに蹴散らす。
ごめんよ、名もなきモブ。せっかくツッコミを入れてくれたのに君の登場シーンはこれしかないんだ。

代わりと言っちゃァなんだが、名前を付けてあげようか…んー山田で。


…そういえば、何であの鹿は技とか炎を使わないんだ?角とかいい感じの武器になるじゃん、何で足蹴なのさ。


“新たなる時の手法などに頼りはしない、時代と我はいつだってアナログ派だ”

『オイィィィィィ!!!何がアナログ派だァァァァ!!!テメーの角は最初から生えてるだろーが!!』

“いや、角は13歳から生えてきた”

『何その微妙な数字ッ』


ドゴォンッ!!!ドシャァァァ!!!ドゴシャッ!!!


いかん、息切れしてきた。話しながら手を動かすのってやっぱりきつい。
そうだな…例えるならかなり長い階段をのぼりながら全力で好きな歌を歌うのと同じ感じだ。あれはキツイ。

さて、チキンの方もそろそろ息切れをし始めているんじゃないかな…と、心の中で少し期待しつつも後ろの方を振り向いてみる。

が、案の定というか。まあ想像はしていたけど。

これまた刺さったら痛そうな棘が大量に生えた球体をガンガンに振り回し、周りの白いモビルスーツを着た人間を吹き飛ばしていた。
自分はてくてくと歩いているだけという楽さ。うわーずるい、というのが本音だ。

「戦いも頭と匣兵器の使いようだからね。」

『言い方がむかつくな。』

こうしちゃいられねェ、チクショウ名言使いやがって、ちょっと羨ましいじゃねーかコノヤロウ。


『チェルヴォ!!テメーの背中に私をのせ……オイィィィィ!!!何やってんだァァァ!!!』


見れば倒れている人間の真ん中で顔を歪め(ているように見える)、前足を抱えるようにうずくまっていた。

どうやら戦っている最中、足を痛めたらしい。
慌ててチェルヴォに駆け寄れば、彼は生まれたての小鹿の如くフルフルと体を震わせている。


“…足、くじいた。ダメだ、我はもう立てん。ちひろ我の屍を超えていけ…”


『さっきまでアナログ派言ってたやつが何を言うか!!そんなんで弱気になんなよ、いつもの威勢の強さをどこの溝に落としてきた!!』

ガクリ、と頭を垂れる彼をガクガクと揺さぶれば、気持ちが悪くなったのか目を半開きついでに口も開いてくれた。

back