090 衝撃クッション装備でいこう
「――どういった風の吹き回しだい?ちひろが僕に甘えてくるなんて」
そう振り返った顔はケロリとしていた。
え、何?何その顔。ちょっとだけ心配した私がまるで馬鹿みたいだった感じじゃないか。 おいおい、チキンさんよォ今ちょっと空気が凍っただろうが、どうしてくれるんだ。
『……いや、甘えてたとか…そーいうんじゃなくて、え、何?落ち込んでたんじゃねーの?今までの気を使った私の行動は水の泡?』 「誰が何のために?」 『………は』
呆れた。
よくもまあ、そこまでシラを切れるもんだ。私を誤魔化せると思うなよ、十年前のガキだからと言ってさぁ。
さっきまで私を心配してたくせに、死なないとか平気で言ってたくせにさ、え、オイ。 演技がへたくそな事この上ない。
……ま、私も人の事言えた事じゃないが。 十年たっても変わらないチキン。いや、変わったのは背丈だけだなプークス!!
「甘えてきてもいいけど。」
そう付け足す奴の言い方が偉そうでウザい。
『全力でご遠慮します。』
そう言いつつ、キュッと回している両腕に力を籠めれば、そっとその私の手の上に彼は自らの少し大きな手を重ねた。
じわりとしみる温かさ。
と、同時に胸にザワザワとした悪い予感のようなものが通り過ぎる。
『……?』 「どうしたの」『んにゃ…何も』
すると音もなくエレベーターが止まり、スッと透明な扉が開く。なんだ、扉なんてあったのか、見えなかったぜ。
ヒバリは私を首にぶら下げたまま、部屋へと足を踏み入れた。
「そろそろ降りてくれるかい、ちひろ。」 『おうよ』
私がぱっと手を首から話すと、彼は内ポケットから宝石のついたリングを取出し、紫の炎を灯して匣を開いた。
ボウッ
そういや、チキンの匣兵器を見るのは初めてだったな。
『なにこれ…ネズミ?』 「雲ハリネズミさ、君も開匣したらどうだい?」 『おういえー』
みんな、オラに力をォォォォと言えば何となく何かしらができるような気がして、人差し指を匣の中に差し込んだ。
コオォォォォと青い光が私たちを包み込む、何かホントにできそうな気がしてきたよ。さっき頭をはたいてきたチキンのことも許せそうな気がしてきたよ。
それじゃあ、この前見たアニメで見たセリフでも言ってみるか!!
『いでよ!!我が正義についてのディスカッショオォォォォンンンンン!!!!』 「君、それ意味分かってんの?」 『………知らね』
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