005 何事も実験するのが一番
『おいおい、赤んぼーず。何で私が一緒について行かなきゃなんないんだい?確かに心はとても揺れたよ。三食豪華オールウェイズ・ランチタイムなんだろ?惹かれるに決まってるわけじゃないか。でもね…』 クルリと振り返りてくてくと後方を歩いている彼に向って涙ながらに叫んだ。 『何でフィールドチョイスが応接室なんだよォォォォォ』 「黙って歩け、お前もファミリーに入るんだったら、アジトの下見に行くのは当然のことだぞ。あと、赤んぼーずっていうのはやめろ。合わせ技は腹立つ。」 カチャリとまた拳銃を出す彼に、私は逆らえずおとなしくダメツナの後ろをついて行った。 なぜこんなことになったのか。事の発端は今から、五分ほど前にさかのぼる。
「ファミリーのアジトを作るぞ」 突然、弁当を食べ終わりのんびりとしていた私たちに向けて、小さな魔王が宣言をする。その後も立地はいいだの、応接室は使われてないだの、勝手なことをペラペラとまくしたて挙句の果てには下見に行くなどと言い出したのである。
あーあ、絶対ヤバいってコレ。ダメツナ共は死亡フラグ立ったよ。私は脂肪フラグが立ったよ。ママンが、今日のお菓子はシュークリームだって言ってたし。あっ、でもこれじゃママンがイラついたパパンのとばっちり喰らってお菓子出してもらえないパターンか。 どっちにしろ嫌なフラグしか立たないとは…ちくしょーこんなんだったら、ダメツナの弁当もっと食べればよかった!! 「へーこんなにいい部屋があるとはねー」 何も知らないパンピー山本がドアを開け、一歩を踏み込んでしまった。 知らないよ!!私は顔を出さないからね!!だって安全にお菓子を食べたいもの!!
「君、誰?」 おいおい、壁越しにとっても聞きなれた声がするよ。 「なんだ、あいつ」 「獄寺…待て」 おいおい、煙草の煙がこっちに流れてきたよ…ゲホッ、なんてけむいんだ。やっぱテレビの言うとおり煙草って体に悪そうだよなー、今度ママンに実験させてみっか。 ……つーか草壁って年いくつだっけ?
「風紀委員長の前では煙草、消してくれる?ま、どちらにせよ、ただでは帰さないけど。」 「!!んだと、てめー」 あれ、なにかいい匂いがする。…この匂いは部屋の中からか?! 「消せ」 ひょこっとドアと獄寺の間から顔を出した瞬間、ビュッと風が私の顔スレスレで吹き抜け……いや、トンファーが私の鼻の先っちょに……当たった?
「……ちひろ?」 ゲ、というような顔つきをしているヒバリ。だがもうすでに時は遅かった。
『………痛ぇなコノヤロォォォォォオオオオオオ!!!』 最初はあまり感じなかったが、時間がたつにつれてドンドン痛みが増してくる。あまりの痛さに私はアッパーカウントを繰り出した!! 「うぐっ……って何で俺?!」 それをまともに喰らった獄寺が吹っ飛ぶ。
「ああ、鼻の頭をやられたんだね。わかったよ、今すぐ君の仇を取ってあげる。…ちひろを殺した罪、覚悟しなよ君たち」 『おぃぃぃぃぃ、私の鼻をやったのはテメーのトンファーだろうがァァァ!!何、他人に自分の罪をなすり付けようとしてんの?!つーか何で勝手に死なせてんだバカヤロー』
「一匹」 ガッ…ドサァァッ 「二匹」 ガッ、ドッ 「三匹」 ドシャァァァァァ 『オイ、シカトこいてんじゃねーぞゴルァァァァ!!!……?!、ヒバリィィィここからおいしそうな匂いしたけど戸棚に入ってるの何?!もしかして私の大好物のチョ…あれ、スーパーサイヤ人がいる』
ゴソゴソと戸棚の中を漁っていると、ヒバリ達の方で何やら雄叫びが聞こえた。 振り返れば、額に炎を灯したスーパーサイヤ人のような男がヒバリに右ストレートを繰り出していたのである。 やばい、ヤバいよコレ。い、いくらヒバリの敵とはいえ…その伝説の…す、スーパーサイヤ人が目の前にいるよ、コレ。 スゲー、本物初めて見た。これはサインを貰っておくしかないよね。パンツ一丁ってとこが気になるけど、サイヤ人だから気にしないぜ!!きっと気にしたら負けなんだね! そう自分で納得したところで、私はあるとても重要なことにハッと気が付いた。 あれ?サイン紙は一体どこにあるんだ?なんてこった。手元にないぞ。くっ、仕方がないな…ここはママンに頼んで買ってきて貰うしか… 『ママァァァァァン!!スーパーサイヤ人がでっ…』
ドォゴォォォォォォォォン!!!
ドアを開け、ママンのところへいざ参らんと足を踏み出そうとしたときには、鼓膜が破けるような大きな爆発音と共に、真っ黒な黒煙が突風となって襲ってくる。私はそんな状況に手も足も出ず、ただ、ギュッと目をつぶるしかなかった。
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