05.爪痕 | ナノ



「………ねぇ」

「何よ?」

「…なぜ僕がこんなことに付き合わされているんだい?」

「……推理力が必要なのよ」


カスミです。あたしは今、シゲルを引き連れてあることを調査しています。


それは…浮気調査です!



「…サトシが浮気?どうした、君もついに疲れで頭がおかしくなったのかい?」


今あたしたちは、事務所の近くの茂みで、サトシが出て来るのを待っています。


「失礼ね!あたしは正常よ。あたし、見ちゃったの…」

「見たって、何を?」

「サトシの背中に…小さな爪痕が残ってた」


話は先日。ポケモンたちをプールで遊ばせる途中、誤って落下したサトシが濡れたTシャツを脱ぐ瞬間を見てしまったのです。


「君のじゃなくて?」

「……な!あ、あたしたちはまだそんなっ!」

「ふっ………、はいはい。それで僕に真相を突き止めてくれ、と」

「うん………それに最近、事務所に泊まってるはずなのにジムにも来ないのよ?ほんとはこんなことしたくないけど、もしあたしに無理矢理付き合ってくれているなら…嫌なのよ」

「……余計な心配だと思うけどな」

「え?何?」

「何でもないさ。ま、この僕がいればあっという間に解決するだろうね」

「…ふふっ。頼りにしてるわ」

「お、サトシが出てきたみたいだね」


こんな時、シゲルはかなり役に立つ。だから今日、あたしはサトシを、尾行します…!


「街に行くみたいだな」

「ピカチュウがいない…?」


出かけるサトシの側には、いつもいるはずのピカチュウがいない。



――………怪しい。





「店に入るみたいだよ」

「あそこは確か、最近出来たアクセサリーショップよ」

「へぇ…、サトシもそんな店に入れるようになったんだな」

「…ちょっと、感心してないでよ!」

「ははっ!ごめんごめん。」


アクセサリーショップだなんて、朝早くから一体何を買いに行ったのかしら?


「出てきたわね…」

「何か買ったみたいだね」

「え?でも手ぶらで…」

「ポケット。さっきより少し膨らんでるよ」

「あ!」


さすがシゲルだわ。

やっぱりシゲルを連れて来て正解ね。



「またどこかに行くみたいね」

「あれはポケモンフーズの店じゃなかったか?」

「そうだと思う……」

「サトシらしいな」

「そうね」



ポケモンのことを忘れないのはサトシの良い所。彼はいつだってポケモン想いなんだもの。



「浮気じゃ……ないのかしら…」

「そうだろうね」

「え?」


小さな呟きを拾ったシゲルに驚いて顔を上げれば、シゲルはいつもの自信満々の笑みを浮かべていた。


「あいつは浮気なんてしてないさ。これが僕の推理」


信用してくれてるだろ?



なんて笑うシゲルを見ていたら、あたしのこれまでの行動がばかばかしく思えてきた。


「そうね!頼れる名探偵が言うんだもの。信じるわ」



多分シゲルは、最初からわかっててあたしに付き合ってくれたのね。


「ありがとう。お礼にお茶でもご馳走するわ、帰りましょ―…」


立ち上がると、目の前にはさっきまで尾行していたはずのサトシがいた。


「お前ら、茂みの中で何やってたんだよ…」


おまけにすごく不機嫌……。


「え…っと……あの…」

「君の背中の爪痕、どうしたんだい?」


不機嫌丸出しのサトシをよそに、シゲルはあたしの気になっていることをサトシに尋ねた。しかも単刀直入…。


「…これか?ニャルマーに引っ掻かれたんだよ」

「ニャルマー?」

「ああ。1ヶ月預かっていてほしいってさ、すっげー暴れん坊で大変なんだぜ」

「そ、そうだったの……」




サトシはよっぽど大変だったのか、お世話の状況をぶつぶつ喋っている。そしてあたしの疑問は、一瞬で解決した。



「ま、そんなことだろうと思ったよ」


お茶は今度よろしく頼むよ。


シゲルはそう言って、さっさと帰ってしまった。





なんだかんだ言って、シゲルは優しいのよね。


――ありがとう、シゲル。











「そうだ!カスミ、これやるよ」

「え?」


サトシの方へ振り返れば、サトシはあたしに、掌サイズの小さな紙袋をくれた。


「かわいい…」


開けてみると、入っていたのは、透明と水色のパワーストーンで創られた、きれいで爽やかなブレスレットだった。


「一目見てお前に似合いそうだと思ってさ、思わず買っちゃったよ」


なんて苦笑しながら話してくれるサトシに、一気に愛しさが込み上げて来た。


一瞬でもこの人を疑ってしまったあたしが恥ずかしい。









でも、もう大丈夫。
あたしはきっと迷わないわ。













「サトシ大好きっ!」




だって彼は、いつもあたしを見ていてくれるから―…。











爪痕

(やれやれ、世話のやける二人だ)

(あ、シゲルお帰り。お疲れ様)

(ケンジ…、コーヒー頼めるかい?)

(ははは、そう言うと思って用意してたよ)








______

私には大人な小説は書けませんでした…←
強引にこじつけた感じで申し訳ないです!(>_<)
個人的にはカスミ+シゲルが書けて楽しかったですが←

読んで下さってありがとうございました!

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