03.ロッカー室にて | ナノ
「ふぅ…久々の公演だったから疲れちゃったな〜」
「よっ!お疲れ」
「………………え?」
結婚して、いまでは年に三回ほどしかハナダに帰ってこないお姉ちゃんたちに頼まれて、特別講演という形で3年ぶりにあたしが人魚姫を演じた。
久々の公演を終えて控室に戻ると、そこにはなぜか、いるはずのないサトシがいた。
「なんっ…!なんであんたがここにいんのよっ!」
「頼まれてた仕事がちょうど昨日終わったんだ。だからそっこーで帰って来た」
「そう…。お帰りなさい、サトシ」
「あぁ。カスミもお疲れ。ショーには間に合わなかったけどさ」
「急いで帰って来てくれたの?」
「当たり前じゃん」
その瞬間、あたしの唇にサトシの唇が触れた。
あの日以来の、二回目のキス―…。
「サト…!」
「お疲れ様のチュー」
はにかみながら、まっすぐとあたしを見るサトシ。
――ああもう。いつからこんなにかっこよくなっちゃったんだろ…
あたしの知らないサトシは、あたしを魅了してばかり。
「…なんか悔しい」
「ん?なんか言った………っ!」
ちょっと背伸びをして、今度はあたしからキスを。
「カ…カスミ…?」
「…仕返しよ」
だってなんだか悔しいじゃない。あたしばっかりドキドキしてるんだもの。
「カスミ〜!!」
「え?…きゃあっ!」
「おわっ!?」
いきなり抱き着かれて、倒れそうになったところをサトシが慌てて立て直してくれた。
「まったく……勢い任せに抱き着いてこないでよね」
「悪い悪い。でもカスミからキスしてくれるなんてさ。喜ばずにはいられないだろ?」
「…恥ずかしい奴……」
すると、あたしを抱きしめたまま、急にサトシが真剣な顔付きになって話始めた。
「な、そろそろオレらの仲も公にしてもよくないか?」
「え?」
別に隠しているわけではないけれど、あたしたちはなんとなく、二人で街に行くのを避けていた。
「オレさ、今回依頼受けてて思ったんだけどさ」
「うん」
「ポケモンマスターとして、困っている人たちを救えるように事務所でも開こうと思って。もちろん、頼まれたらバトルもする」
「いい考えじゃない」
「だろ?それでさ、事務所はハナダに建てようと思ってるんだ」
「…ハナダに?」
「母さんにも賛成されたよ。カスミの側にいてやれってさ」
「ママさん……」
「だから世間にもオレらの関係を知っててもらった方が都合がいいだろ?実際オレもカスミの側にいたいし」
「そうね。あ、あたしも……サトシが近くにいてくれたら…嬉しいし…」
あたしの言葉を聞いたサトシは、少し驚いた顔をしたけれど、すぐに笑顔で頷いてくれた。
――あたし…やっぱりサトシの笑顔が1番好きかもしれない…
「じゃあやっぱりジムの近くに建てたいよな〜」
「ちょ……!てか、いつまで抱き着いてんのよ!」
「いーじゃん。たまにはさ♪ははっ!カスミ顔真っ赤だぜ?」
――あたしの心臓がもたないって!
ああ。やっぱりあたしはサトシには勝てそうもありません。
ロッカー室にて
(なー、カスミー)
(な、なによ…?)
(もう一回キスしよ?)
(………!!)
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二十歳シリーズは、サトシがカスミを振り回しているような…笑
ちゃんといちゃつけていますでしょうか…?
ハナコママもサトカス派なので、悪い虫がつかないようにサトシをハナダへ派遣したのです。笑
読んで下さってありがとうございました!