君へ! | ナノ
君へ!
空港までカスミを見送る。
カントーから遠く離れた地まで遥々会いに来てくれた。
気恥ずかしくて言葉に出しては言えなかったけれど、本当は凄く嬉しくて…
今回、初めての一人旅。
ポケモンたちがいるから普段淋しいとは思わなくても、カスミと過ごした数日間は言葉で言い表せないくらい楽しかった。
だけど楽しい時間こそ短いもの。
「…じゃあね…ジム戦、頑張りなさいよ!」
「おぅ…おまえもな」
差し迫った飛行機の搭乗時間。再会から昨日までの騒々しさが嘘のように、ふたり交わす言葉は少なく。
でなければ余計なことを…今はまだ言ってはいけないことを言ってしまいそうだったから…
…お互いに。
それでもいざ別れの時。
次に会えるのはいつか…それはたぶんサトシにとって今回の旅の終わりと同義。
きっとまだ当分先のことになってしまうだろう。
半数埋まっていないバッジケースを思い浮かべ、今だけは少し気持ちが沈んだ。
その時、聞こえた…
「サトシ」
カスミの声。
愛しい…スピーカー越しではない生の声。
「待ってるから」
「…!」
目を見開き見つめた先で、カスミが少しだけ歪んだ顔で必死に笑う。
「ずっと!いつまでも!信じて!待ってるから…!」
言った瞬間、ほろりと零れ落ちた一滴の涙。
「大好きよ」
その綺麗な軌跡を見送り、込み上げたものを堪えるようにそっと顔を寄せた。
カスミが瞼を伏せ、周囲の雑音はどこか遠くなる。
「…うん、俺も」
小さくささやいた声にしがみついた華奢な手を強く握り締め、改めて誓ったのは夢の結末。
「大好きだ、カスミ」
その最高のハッピーエンドを今度こそ―――――必ず君へ!
「純愛ラプソディ」の吏季様より頂いた小説です。
素敵なサトカスをありがとうございました!