ポジション | ナノ
きっかけは些細なことだったのかもしれない。
「おいピカチュウ!お前はこっちだろ!?」
愛らしい相棒も、今だけはかわいくない。ご丁寧にあっかんべーまで向けてくるオレの最高の相棒、ピカチュウ。
旅を続けていたオレ達は、今日も相変わらず野宿だった。
不思議なことに、いつもカスミに抱かれて眠るトゲピーが、なぜか今日はタケシと寝たがり、すでに彼らは夢の中。
オレたちも寝ようか、とカスミと話していたときだった。瞳を輝かせ、満面の笑みのピカチュウがカスミの胸に飛び込んでいった。
「…ピカチュウ?あ!もしかしてあたしと寝たいの?」
「チャア〜!」
「きゃー!かわいいっ!ピカチュウあったかいし、それにいつ虫ポケモンが出るかわかんないし、今日は一緒に寝ましょ!」
「ピッピカチュウ!」
「ちょっ…ちょっと待ってくれよ!」
「なによーサトシ。一日ぐらいいいじゃない。ねぇピカチュウ?」
「ピッカァー!」
うっ…。カスミだけじゃなく、ピカチュウまで横目で見てやがる。
「でっ…でもっ…!」
昔のオレなら、きっとあっさり承諾しただろう。でも、今は簡単に承諾できない。
…相手がピカチュウなのに。
オレンジ諸島を旅して、何となくカスミを気にすることが多くなった。
オレの右隣りにはカスミがいる。それが当たり前であってほしいと思うようになった。
だからなんか…あいつの隣にはオレがいたいんだ。
だから…だから……。
「ピッ…ピカチュウはオレと一緒に寝ようぜ!…な?」
「まったく…しょうがないわね〜。ま、さすがに相棒が取られるのは嫌でしょうから諦めるわ」
「カスミ…」
なんかよくわからないけど、カスミは納得してくれたみたいだ。オレはほっと安心してピカチュウを呼んだ。
「ピカチュウ、こっちに来いよ」
が
「ピカチュピ!ピカピカ〜ッ!」
めったにわがままを言わないピカチュウが、カスミにしがみついて離れなかった。
忘れてた…。こいつカスミにやたらと懐いてたんだった…。
「ピカチュウ…。でも、サトシが今日はダメって言ってるから今度にしましょう?」
カスミがやさしくピカチュウを説得してくれてるけど、ピカチュウは離れようとしない。それどころか―…。
「ピカチュピ!」
―チュッ
説得していたカスミにキスをしたのだ。
「ピッ…!ピカチュウッ!」
おまけにカスミの奴、なんか顔赤くないか?
その瞬間、オレの中で何かが切れた。
「だあぁぁぁぁっ!」
「サッ…サトシ!?」
「ピ?」
「ピカチュウ!カスミから離れろっ!」
「ちょ…アンタそんなに引っ張ったら…」
ついに無理矢理ピカチュウを引き離そうとしたオレに驚いたカスミが、慌ててピカチュウを抱きしめた。
「嫌なんだよっ!」
「…は?」
「カスミの隣に知らない奴がいんのとか、ピカチュウとすげー仲良くしてるのとか見ると、なんかわかんないけどもやもやするんだよ!」
「………えっ」
カスミの腕の力が緩んだ瞬間、オレは一気にピカチュウを引き離した。
「ピカ…」
「ん、ピカチュウどうした?」
「ピィィカァァ〜チュ〜ッッ!」
「うわあぁぁっ!」
「なっ…!なんだなんだっ!?何かあったのかっ!?」
「チョケッ!?」
「…ってサトシ、どうしたんだお前…」
「ピカチュウを怒らせて10万ボルトをくらっちゃったのよ」
「ピカチュウが怒るなんて久しぶりだな」
「な〜んか今日のサトシ、よくわかんなかったわ。タケシもトゲピーも、驚かしちゃってごめんね。さ、ピカチュウ。あたしたちも寝ましょ?」
「ピッカァ!」
こうして、今日も旅の夜は更けていくのだった…。
ポジション
(サトシったら…。なんなのよ!気になって眠れないじゃないっ!)
(結局一緒に寝るのかよ〜)
(ピッピカチュウ♪)
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432hitで、KTR6416F様からのリクエスト作品でした(^O^)/
はてしなくぐだぐだになってしまいました…(∀;)
KTR6416F様ごめんなさいっ!
少しでもご要望に添えましたでしょうか…?
葉月が「ピカチュウだってカスミが大好きなんだぞ〜!」とか思いながら書いていたら、いつの間にかピカチュウがチューしてました(笑)
なぜか葉月はサトシにいじわるばっかしてる気がしてなりません…(´∀`)←
ですがとっても楽しく書かせていただきました♪
KTR6416F様、ステキなリクエストありがとうございました!