思えばカイトは、赤ちゃんのときはお姉ちゃんに比べると甘えん坊だった気がする。
抱っこが好きで、誰かがいないとすぐ泣いて、小さくても世話焼きのナノカにずいぶんと助けられた。
それでも、転んで怪我をしたときのカイトは強かった。
あんなに人恋しくて泣いていたこの子が、ぐっと痛みをこらえて立ち上がる姿は、たとえ小さな背中だとしても逞しかった。
―――きっと、この子は―…。
いつもいつもナノカの後を着いていたカイトがだんだんと強くなっていくのを、あたしはちゃんと見ていたよ。
カイトの変化にナノカが戸惑っていたこともちゃんとわかってる。
手を引き、引かれていた関係がいつしか隣に立ち、揃って走り出した。
「ただいま!」
―――誕生日ぐらいはちゃんとお祝いしたいから帰ってきてね。
あの約束を今年も守ってくれてありがとう。
「おかえりなさい、カイト!」
戸惑ったのはお母さんも同じだった。もうこの子は守られるだけを望んではいないのだと寂しくなった。
けれど、同時に嬉しかったのよ。
強く逞しくなっていくあなたは誰よりもお父さんにそっくりだから。
さあ、今年も伝えよう。
「カイト、誕生日おめでとう!」
―――生まれてきてくれて、本当にありがとう!
母から子へ、惜しみ無い愛を。
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