Attention please!
※軽くですが、神または宗教に関する話が絡みます。気分を害する恐れがありますのでご注意ください。
「人間ってある意味神様だよね」
菓子パンを頬張っていた時に、臨也さんが余計なことを言い出した。口の中で咀嚼中のその味を楽しむ時間は短く、飲み込み、彼を睨んだ。
彼が手にしているのは、とある動物を大量処分するという新聞の記事。
カラスが増えたから殺し、猿が増えたから減らす。でもパンダは減ったから増やす。けど人類は増えても……
勝手に動物たちの運命が決まってしまう。いつしか、私たち人類が願って拝んでいる神様とやらに気付いたらなっているではないか。本当、何様なことだ。それを一瞥した私は眉を寄せずにはいられない。
「残酷ね」
「ほんとそうだよねー。動物からしたらお前ら何様だって感じだろうね」
アハハッと笑う彼の表情は狂っている。私は肩を竦めてため息ついていた。
「臨也さんが神とか言い出すなんて。神様なんて信じてない、じゃなかったの?」
「曖昧で存在が確定してないからね、信じてないよ。でも、美術家とか多くのクリエータたちは、神ってやつを人の形で表したりしたりする」
ニヤリと口端を持ち上げて笑って、彼は両腕を広げた。
確かに神ってやつを表す時、それは人の形をしてたりする。でもそれは偶然。ただの自分勝手なスケッチだ。
あっちを見たって、こっちを見たってそっちを見たって、それを確定付けるものは何もない。
「そう、人。そう―――人は神になれる」
……この中二病精神異常患者。精神科の病院に行って二度と帰ってくるな。“折原臨也教”という宗教でも立ち上げる気なのだろうか。ああ、臨也さんならやりかねない。というか、信者の女の子たちとかいる時点で、宗教と化しているのかもしれない。もちろん私は彼の信者ではないのだけれど。
「だからさ、オレが神になることだって……出来ると思わないかい?」
ああ、ほらやっぱり。
私の腰掛けていたソファーの前のテーブルに意味も無く置かれていた聖書にようやく納得がいく。
「でも、もしもオレが神様なら。そう、全てを決めてもいいなら。七日間で世界を作るような真似はしないね」
聖書を燃やしだしたりしたらどうしよう。此処で宗教紛争とか起きたらたまったもんじゃない。臨也教に勝てる人たちなんて想像出来ないけど、厄介事はご御免被る。
「もっと時間をかけて計画を立てて、もっと人を愛して世界を築くよ」
恍惚な顔で言う彼から視線を外して、聖書の横のティーカップに口づける。冷めた紅茶だったが茶葉が高い物らしく、問題無く美味しかった。また今度いれて貰おう。
コトリ、カップを戻して愉しそうにくるくる椅子に座って回っている彼を見詰めた。
ふぅーと深く息を吐いて
神様気取りの無神論者
(だから何だって言うんですか)
RADWIMPSの『おしゃかしゃま』より