かわいそうなAD@


「やっぱ超かわいー…」

大好きなアイドルちゃんが今日はオレが担当する歌番組の収録にやってきた。
プロデューサーから理不尽なこと言われても先輩ADから殴られても1週間ベッドで寝てなくてもやっててよかった!アシスタントディレクター!!

本当はずっとその姿を目に焼き付けたいけどオレはADと書いてパシりと読むぺーぺー、なかなかそうもいかない。せめてラスト5分でも…!と、いつもの3倍オレはがんばった。(シャ○も真っ青だぜ!)

「そーいえばお前、このアイドルちゃん好きだったよな?」

もう数えるのを放棄した先輩ADからの指示――今回はディレクターへの伝言を終え、その場でダッシュで乱れた息を整えているとディレクターが聞いてきた。

「ハイ!ファンクラブにも入っています!」

根っからの体育会系であるオレ。先輩(上司)の言葉には素早く回答するべし、が骨に染み付いている。たとえ息苦しかろうとも!

「じゃあこの収録、後は観覧席で観てていいよ。今日はえらいがんばってたしな」

―――!!!オーマイゴット!目の前に神がいます!

「ま、ままままま…!」
「マジマジ。いいよ、俺からゆっとくから。その代わり、その後倍働けよ?」
「ありがとうございます!!このご恩は一生忘れません!失礼します!」

流れるような早口挨拶と最敬礼の後、一目散に収録スタジオへ向かった。


かわいいかわいいかわいいかわいい!!
天使がいるよ!あっ、さっき神がいたもんな、天使ぐらいいるよな!って、ぐらいとかゆってごめん!アイドルちゃんを軽く見たわけじゃないから!マジで!や、マジ天使…!天から光が振り注いで神々しいんだけど!(それは照明です)ヤバイ感動で泣きそう…。

セットに佇むアイドルちゃんを前に(かなりの隔たりがあるけど)テンションが上がりきっていろいろとおかしなことになってる。一旦落ち着こう、オレ。

口で大きく呼吸をする。その間も見逃すまいとアイドルちゃんをガン見。
あーかわいーよ、色白いしほっぺたももいろだしほっそいし、絶対いい匂いするだろー(妄想)、やべー超近くで見たい。共演してー!…いやいや、奴ら(共演者)のキラキラ具合人種越えちゃってるしムリだろオレ……あーもーアイドルちゃんが持ってるマイクでいいから代わりたい!

「ちょっと、キミ」

あー誰だよ私語なんてしてるの、アイドルちゃんの声が聞こえないだろー!

「キミ、そこの、キミだよ!」

いきなり横から顔を掴まれる。しかも両側。首がグギってなったよ…。
体が触れ合いそうなくらい近い距離で見下ろしている長身イケメンをオレは知っていた。

「アイドルちゃんのマネージャー!」

小声で叫ぶ器用なオレ。スタッフとしての配慮です。

「こちらに来なさい」

がしりと腕を掴みオレを連れ去るマネージャー。
なんで?なんでー!?アイドルちゃんのために控え室超磨き上げたのがバレた!?最近ハマってるという新製品のペットボトルを用意したのがマズかった!?カメリハの呼び出しするADをアイドルヲタで控え室から髪の毛とか持ち出す噂のある奴から女の子のスタッフに変えたのがよろしくなかった!?

ぐるぐるしながら辿り着いたのはアイドルちゃんの控え室。

アイドルちゃんが居た控え室…!!
準備はオレがしたけど、実は片付けは女の子のスタッフに頼んでいる。アイドルちゃんが触ったかもしれないドアノブとかメイク台とか椅子とか触れないっ!

ドアが閉まると同時にマネージャーが振り返った。
控え室のどこを見ればいいかわからず視線をさまよわせるオレに一歩近づく。

「キミ、ハアハアしながら何考えてたの?」

イケメンの口からハアハアなんて言葉が飛び出たことにびっくり。マネージャーを見上げようと(体育会系は相手の目を見て話すものです)したけど、肩越しにアイドルちゃんの私服コートが見え、慌てて視線を逸らす。

「うちのアイドルをずっと見てましたよね。いかがわしい事でも考えていたんでしょう?」

もう一歩近づく。捕まれたままの腕を放してくれれば道を譲るのに…。

「こんなに目を潤ませて…」

腕を掴んでない方の手で顎を掴まれ上向かされる。
マネージャー何か顔赤くない?

「マイクの代わりにペニス握られたかったんですかっ!?」
「うわっ!なっ何してんスか!?」

マイクでいいから代わりたいってオレ声に出してた?ハズカシっ!なんて言っている場合ではない。
マネージャーは瞬く間にオレをドアに押し付けズボンを寛げるという神業を披露した。でもなぜオレのチンポを掴む!?

「うちのアイドルにしてもらいたかったんでしょう?でもさせられませんからね…代わりにして差し上げましょう」

2012.02.29

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