ある日誰かが言い放った。悪魔など生かしてはおけないと。さも自らが神の使いであるかのように、高らかに宣言した。



その日は朝から騒がしかった。あらゆる階級の祓魔師達が廊下を行き来しては、慌ただしく動いている。まるで嵐が到来したように。誰もが冷静を欠いていた。そこにあるのは長年積もらせていた怒りと怯え。

「フェレス卿の許可など必要ありませんっ、サタンの胤裔など直ちに抹殺すべきです!!」

一人の祓魔師が、唾を飛び散らせながら声を張り上げた。その際に叩かれた机が微かな振動を繰り返している。

「ふぅむ…」

「聞けば、我らが偉大なる藤本聖騎士はあの悪魔のせいで死んだというではありませんか」

演説のように腕を振り回しては、酷だと訴えた。散々貶した相手でさえ、演説の材料にする。最低な男だ。それと同時に数名を除いて、賛成の声が沸き上がる。地鳴りさえ起こしそうな狂気に包まれた空間でシュラは歯を食い縛った。

「そんな悪の根源など何の役に立ちましょうか。今のうちに刈り取っておくのが最善というものでしょう」

どれだけ卑劣な言葉で子供が罵られようと、ここに奥村燐を庇護するような人間はいない。

ことの発端は藤本神父の後釜で聖騎士に成り上がったアーサー・O・エンジェルの一言からだった。その愚かな発想に周囲が触発され、たちまち審議会にまで発展したのだ。いや、瞬時に審議会が開けるように準備されていたのだから笑えない。
その内容は"サタンの子を成敗せよ"。あまりにも滑稽で馬鹿げたものだった。

「悪魔に断罪を!!」

もはやその言葉以外忘れてしまったように、議会内の祓魔師達は足踏みと共に繰り返し叫んでいる。


(こりゃ、冗談抜きでやべえな…)


シュラは叫びに紛れて、そっと審議会を抜け出した。とてもではないが、あれ以上あの場にいれば暴挙を起こしてしまいそうだった。それに最後まで居なくとも、結果は目に見えている。手荒に近くのドアに鍵を差し込み、正十字学園にでると誰もいない廊下を走り出す。手遅れになってしまわないように、後ろ振り向かずに兄弟の住む部屋に向かって。

「くっそぉ〜、部屋に居なかったらキレるぞっ」

かつてないほどの全力疾走で、シュラは長い廊下を走った。





Pianissimo
(弱々しくも鳴り響く)



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