子供がいた。
夕日を浴びながら立ち尽くす小さな子供。
その子供は両親が死んだというのに、涙一つ流さない。
それどころか、始終無表情のまま。
せわしなく動き回る大人達の間を、ぽつんと立っている。
小学生の息子を残して逝ってしまった身勝手な親。
そんなことでも考えているのかもしれない。
興味本位で近づいてみた。
子供の表情は変わらない。
でも、顔を上げ日向と目線を合わせた。
「兄弟とか、いないのか?」
子供は首を振った。
縦ではなく横に。
音無夫妻に親戚はいなかった。
となると、子供は独りぼっち。
日向はしゃがみ込んで、子供と目線の高さを同じにした。
黄昏色に染まる瞳が、真っ直ぐ日向を捉えている。
「俺んとこ来るか?」
他意はなかった。
同情とも違う。ただ、消え入りそうな子供を引き留めたかったのかもしれない。
何にせよ、もう口に出してしまった。
あとは子供の返事を待つだけ。
子供は静かに日向を見つめていたが、やがて小さな手を伸ばし、日向の手をぎゅっと握った。
日向は表情の変わらぬ子供の頭をなでてやると、そのまま立ち上がった。
手は繋いだまま、ゆっくりと歩き出す。
子供も日向に手を引かれ、ついて来る。
「なぁ…お前さ」
子供が日向を見上げる。
「名前は?」
日向の問に俯いてしまった子供が、答えた。
初めて聞いた子供の声。
「……ゆずる」
「ゆずる。か、いい名前で良かったじゃねぇか」
子供が日向の方をチラチラと見ている。
そこで日向は自分が名前を教えていないことに、ようやく気づいた。
「日向秀樹。好きに呼んだらいーぞ」
これから、長いつきあいになる。
「日向…」
「ん?」
「あったかい…お日様みたいだ」
そこには表情こそ変わらないものの、どこか嬉しそうな子供がいた。
「お前も、あったけーよ」
暖かな温もりを握り締めて
やってしまった(*^^*)
うっかりショタネタ。音無の成長ぶりと日向の親ばかぶりが書きたい。あっ、でも続くのかな…?勢いだけで書いてしまいました。