重力ピエロ/春泉





オレンジ日曜日






夕暮れ。
それは、まだ自分たちが小さな頃、家へ帰る合図だった。

服が泥だらけになって体が疲れて、まだ遊びたくて。
でも、家に帰れば母の暖かな晩ご飯が待っている。

だから、2人で手をつないでまっすぐ家に帰った。










今日は、別に特別な日でも何でもない。
雨続きの日がようやく終わり、珍しく綺麗な夕暮れ空が見える。
だから、久しぶりに歩いて買い物に行ってきた。
ありきたりな具材を買って、ポケットに手を突っ込みながら帰り道を歩く。

下の土手では小学生たちが、走り回っていた。
何人かが別れを告げて帰って行く。
昔の自分たちみたいに。

「早く帰ろう」















「あれ?来てたのか」

珍しく仕事が早く終わり、家へ帰ると部屋に明かりがついていた。不用心なことに、鍵はかかっていない。

家の中にいたのは、弟だった。
鍋をかき混ぜながら、春が手招きしてきる。
ネクタイを緩めながら近づいて行くと、懐かしい匂いがした。

「カレーか、懐かしいな」

オムライスやハンバーグよりも大好きで、食べた次の日の晩ご飯にも母に作れとせがんだ思い出がある。

「ま、偶にはさ」

「そういう偶にはなら、いつでも歓迎だな」

いつも突拍子もなく奇人的なことやりだす弟が、今日はまともだった。
空いていたお腹が本格的に鳴りだしたのがわかる。

「ほらほら兄貴、皿出してよ」

「人ん家で偉っそうだな、お前」

そう言いつつ、きちんとご飯を盛った皿を春に突き出した。

「お待ちどうさま」

出来上がったカレーはなかなかな出来で、いつぞやのミルク料理とは大違いだ。
実際に食べ始めると美味しかった。

「なぁ、兄貴」

「ん?」

「なんかさぁ、懐かしくない」

「…そうだな」

昔は、母さんがいて、父さんがいて、親子四人でカレーを食べるのとが当たり前だった。

「男二人っていうのも虚しいけどな」

「はは、オレは兄貴がいればそれでいいけど」

流石だ春。さらっと奇人発言をしてみせた。
でも、確かに悪くない。

「なら、これからは週一でカレー食べるか?」

「え」

「毎週日曜日はカレーの日」












(オレンジ日曜)

(ブラウンじゃないのか)

(カレーをあれだって、認めるようで嫌じゃないか。ってか、夕日のオレンジだよ)















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