だって愛してるから






間違いなんて初めから存在してなかった。

春が普通じゃないのも、兄弟という関係が歪だったのも、自分がまともな領域に入っていると思っていたのも、ある種の当たり前のことで、その時点で間違いに気づいて訂正すべきだったということも。

そして、自分が春の中に入りすぎていたということも。








休日、春の部屋に遊びに行ったときに出された飲み物。
疑うことなく飲んだのが間違いだった。
いや、弟の出した飲み物を疑う兄はまずいない。だから、自分に非はないはずだ。

それから、話し込んでいくうちに眠くなっていって、春の話を聞いていたところまで覚えてる。
それは、数年前に春から貰った水を飲んだときとよく似ていた。逆らえない睡魔。
思考がいよいよ駄目になりそうなときに春が言った言葉だけが、やけによく聞こえた。







「俺は兄貴の中の何処にいる?」






そのあとは完全に意識が切れた。
だけど、どうしてか隣で春が笑っている気がした。








最初は鈍く重い鈍痛からはじまり、くらくらと頭の中を駆け巡る頭痛に耐えながら目を開けると薄暗い明かりが目に入った。

感覚が不確かな体では、自分の状態も状況もわからない。
試しに腕に力を込めてみるが、自分の思い通りに動いているのか自信がもてない。

諦めて力を抜くと、初めてそこがベットの上だと気付く。
それと同時に扉の開く音がした。


「あれ?兄貴もう目が覚めたんだ」


もう少し寝てればいいのにと言わんばかりの顔で部屋に入ってくる。
一瞬殴りたくなったが、体が動かない。

「…は…る」

舌先が痺れるような感覚どうり、呂律が回らない。
そんな泉を見て、春の顔がいっそう嬉しそうになった。

「おはよ、のど渇いてない?」

渇いている。だか、それを声にすることはできない。
春は泉の髪を梳くように頭をなでた。

「どうかした?あっ、もしかしてまだ薬きいてる」

薬?この頭痛の原因だろうか。
しかし、いったいいつそんなものを。

「覚えてない?昨日兄貴に俺が出したジュース」

たしかにジュースは飲んだ。こんなことなら疑えばよかった。

「なぁ兄貴、俺どうにかなりそうなんだ」

なにを今更。お前がどうかしているのは今に始まったことじゃないだろ。


「兄貴がいないと狂いそうなんだ。だから」












(俺のそばにいてよ)















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