CONVICTION
レギンレイヴ城の一室にある図書室の扉の隙間から淡い灯りが漏れていた。
カーテンのかかったからは優しい風が吹き込んでくる。
新月の夜に人を照らす光は無く、唯一光を与えるのは火によって灯(とも)された灯(あか)りのみ。
小さなランプの灯火の元、配置された机の上には何冊かの本が置かれている。
置かれている本の中には歴史書や聖書、童話などが多種ある。薄暗い本棚の奥から少年が数冊の本を抱え、机に近づくと、置かれていた本の上へと重ねていく。
そんな少年の姿を見ていた青年が小さな笑みをこぼした。
「そんなに本を集めてどうするの?」
「別に…どうもしないさ」
アルヴィスは表情を変えずに背の低い椅子に腰掛け、手元にあった本を開いた。
ファントムはそんなアルヴィスの態度を気にするわけでもなく、後ろからアルヴィスを抱き込んだ。
「悩み事でもあるのかな?」
「別に………」
「じゃあ、その顰(しか)めっ面はどうして?可愛いんだけど僕的には笑ってほしいな」
肩に顔をのせ頬をすり寄せていく。
アルヴィスは嫌がりはせず、それを享受している。
「……いいんだろうか」
「ん?」
アルヴィスは目を細め呟いた。
綺麗な笑みを浮かべているはずなのに、その笑顔はどこか悲しげに見えてしまう。
ただ慈しむようにファントムはアルヴィスの髪を撫でていく。クセが強いのに柔らかくて指触りが心地良い。
髪を撫でている手を頬へと滑らせ、両手でアルヴィスの小さな顔を包み込み互いの唇を合わせていく。
「おかしいな」
アルヴィスがクスリと笑った。
「オレとおまえは敵同士なはずなのに…どうして一緒にいるんだろうな?」
「なんでだろうね?」
目を閉じながら嬉しそうに聞き返す。
質問には質問で返す。アルヴィスが最近知ったファントムの癖だ。
「でも……」
背中に回した手でファントムの服をギュッと握り締める。
「これで本当に良いんだろうか?オレはおまえといて良いんだろうか?」
いっだって付きまとってくる不安は決して許されるものではない。
その不安を言葉に置き換えるならばそれは、罪なのだろうか?それとも仲間に対する罪悪感か?
「怖いんだ、おまえといることはきっと許されないことなんだ!誰にも、誰からも………」
泣きそうな声で語るアルヴィスを宥(なだ)めるように優しく触れていく。どこまでも優しさのみをもって
「なら、ぼくが許すよ。キミはぼくのアルヴィスなんだから」
他者に対して死しか与えない存在が1人の存在には慈しみを与える。
愚かしいほど滑稽で、聖光(せいこう)なるほど盲目的な光景
「でも………どんな咎(とが)でも受け入れる………おまえここにいるなら…ファントム」
「ぼくは君の為にに罪を選ぶよ。でも罰するのは人じゃない………僕だよ」
人に罰を下すは神の役目、人と同等の存在は人に罰を与えてはいけない。
(だから、罰を下すのはぼくの役目だ)