花の如雨露
ZC/多キャラ生存ver




機嫌が悪いと言われれば否定はしない。


嫌いな書類関連の仕事帰りに、ばったり会ってしまった関わりたくないどこかのお偉い様のお話を長々と聞かされ、イラついていたところに絶対服従の元上司様から依頼と言う名の討伐命令。

終われば今度は朝帰りでヘビースモーカの豆知識を2パック分教えられ、花売りの少女に会いに行ってももまだ来ていない。
勝手に摘んで帰るわけにもいかず、大人しくUターン。

愛しいチョコボにお土産を買おうと店屋に寄れば、そこは強盗劇の真っ最中。
強制参加で助けたお姉さんから逆ナンとむせかえる香水の罰ゲーム。

心のなかでチョコボの名前を唱えながら、耐えてみる。
が、結果は逆効果。
早く会いたい気持ちが強まってしまったわけだ。

そんなこんなで、ようやくたどり着い家にまかさの追い討ち。

「クラウド?」

いつもなら、玄関口まで出迎えてくれるはずの恋人は姿を表さない。
一瞬、仕事かと思ったがカレンダーには何も予定は書いてなかった。
代わりに書き込まれていたのは『for you』の文字とエアリスの名前。
いつ来ていたのだろか。

それよりもストレスを溜めに溜めて帰ってきたのに、待ちわびたクラウドがいない。
この段階でわかったことが一つ。クラウドがいない。

体中から感じる脱力感と沈んでいく感覚。

つまりは、すごい落ち込んだわけだ。

「クラウド…」

心の中で呼ぶだけでは飽き足らず、声に出して呼んでみるが返事はない。当たり前だ。

「はぁ、マジかよ」


現実を認めた途端、急激に襲いかかってくる疲労感に負けることに決めた。
着ていた上着とTシャツをソファに脱ぎ捨てると寝室に向かった。

途中でクラウドの寝室を覗いてみるが、やはりクラウドの姿はなかった。
なんだかんだで抱いていた淡い希望が完全に打ち砕かれた。

「オレはたった1日で、どんだけクラウドに飢えてるんだよ………」


ガックリと肩を落として、こんどこそ自分の寝室に向かった。
ドアを開けて、まっすぐベットに向かうとすると何かを蹴った。

足元に目をやれば、そこには花が落ちていた。
一つ二つの数ではない。床を埋め尽くすような量の花と花びら。
色は八割が薄い桃色で、残りは黄色や白色。
開けっ放しになった窓から入ってくる風が数回に一度、花びらを天井まで押し上げる。



雪のように降りそそぐ花びらたち。
無性にクラウドに会いたくなった。



会って抱きしめてキスをして。



なにかしたいわけじゃない。
ただクラウドの側にいさせて欲しいだけなんだと思う。

苦しい胸がひたすらにクラウドを求める。

しばらく扉の前で立ち尽くしていた。
それでもクラウドの帰ってくる気配のない。

苦しかった胸は、花の匂いで一杯になっている。
そっと足を動かして歩き出す。花びらを踏んでいく自分の足を見ながら、ベットに向かった。

花の香りに包まれた部屋の真ん中にあるベットに、しんしんと花びらがつもっていく。

風に揺れるカーテンがなぜか優しかった。
舞い上がったカーテンの隙間から堂々と光が射し込んでくる。

そして花の降り積もるベットから同じように光がもれている。

眩しいほど綺麗な金と白。

途端に体を駆け上がる熱に侵されて、自分のベットを覗き込んだ。


「…クラウド」



あぁ、どうしてこんなにも愛おしいんだろう。
花に負けないほどの白さに引き寄せられる。

「クラウド」

もう一度、名前を呼んでみる。今度はさっきよりも、もっと愛を込めて。

「ザックス」

かすれるよな吐息と共に、名前を呼ばれる。
それがどうしようもないほど乾いたオレの心を潤していく。

「…おかえり、ザックス」

「ただいま、クラウド」

しなやかな体を静かに起こそうとしているクラウドの肩をベットに押し戻し、キスをした。
そのまま、多い被さるように抱きしめた。
優しく頭を撫でる手をつかんで、皮膚をなぞるようにキスをして。
何度もその耳元で、愛してるとささやいた。









「すごいな」

結局、二人でただベットに横になっている。
クラウドの右手を。オレの左手をしかっりと繋いだまま。

目の前に落ちて来る花びらを指先でいじりながらクラウドの髪に口づける。

「エアリスかな?」

「寝てたから、わからないけどエアリスならやりそうな気がする」

「カレンダーの今日の日付にエアリスの名前と、伝言が書いててあったからエアリスだろうな」

あの言葉はこういう意味だったのか。
だったら、あれはオレ宛てだからクラウドにも送らないと。

「クラウド」

あとは自然に口が動いた。








(こんなにも想いが溢れ出しているのに、どうして愛してる以外に伝える言葉がないんだろお)

(世界がもっと愛に溢れていたらいいのに!)





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