AC/ZC
「クラウド!」
朝から仕事に向かおうと、フェンリルにエンジンを掛けたところで幼なじみに呼び止められる。
「はい、おめでとう」
そう言って渡されたのは二つの可愛いチョコボストラップ。
しかし今日は別に誕生日ではない。
ならば、何故?
「ティファ…何の祝い?」
「何って、お付き合い一年目おめでとー。のお祝い」
「………え?」
誰と誰の?
何のお付き合い?
この場合、もちろんクラウドとザックスのことだろう。
「よく、…一年目って知ってたな」
正直に言うと、自分は知らなかった。
そろそろ一年くらい経つかなとは思っていたけど、正確な日数なんて数えていない。
「私の中で、いろいろと決別させてもらった日だからね」
そういえば、ザックスと結ばれた日、ザックスとティファは何か話し合っていたような。
「ちゃんと幸せなんでしょうね?」
「うん…」
子供のような顔でのぞき込んでくるティファに、何だか恥ずかしくなる。
結局、自分はこの幼なじみには勝てないのだ。
配達の時間が近づいていたため、手短に礼を済まして仕事へと向かう。
最初こそ知られていたことに驚いたりしたが、自分たちも必要に隠してはいなかったのだからと、すぐに慣れた。
そしてティファが発端となったのか、その後会う知人全てから何かしらを強制的に贈呈された。と言っても過言じゃないほど、有無を言わせぬ速さで渡され、彼らは笑顔のまま去っていく。
ここまで来ると、いっそ罰ゲーム気分だ。
「おかえりー…って、何その荷物!?」
エンジンの音に気づいて扉を開けてくれたザックスが、フェンリルの後ろに行きよりも多く積まれた荷物に驚愕の声を上げた。
「みんなから貰った…」
「え!なんでなんで、今日何の日?」
「オレたちの一年目記念なんだって」
恥ずかしさから、語尾は小さくなってしまう。
「…それって、みんな知ってんの…」
「たぶん、ティファが…」
やっぱり女性は強い。
クラウドは頭の中の辞書にアンダーラインを引き直した。
相手に感謝しつつプレゼントを開けていくと、どれもお揃いの物だった。
ストラップに始まり、コップやアクセサリー。お菓子に至るまで、全てがお揃いなのだ。
「ここまでくると、なんか…」
「うん」
クラウドは顔を真っ赤にして、両手で顔を覆い隠してしまっている。
ザックスも、口を押さえながら視線をさ迷わせていた。
当の本人たちを差し置いて周りが盛り上がってしまうと、本人たちのやる事がなくなってしまうわけで。
「まぁ、その……俺たちおめでとー…」
来年こそは、ひっそりと静かに2人っきりで祝おうとザックスは心に固く決心した。
(甘い恋人たちには)
(甘さ控えめで)