伸ばした手
CC→AC/ZC前提/C独白




水。と言ってしまうよりは羊水に似ているかもしれない。

きっと、この先記憶から消えることのない緑。

温度も音源も存在しない、孤立的遮蔽空間。
ただ繰り返される眠りと覚醒。時間が増えていくように、減っていく意識と記憶の残量。

大切なものが何だったかなんて、思い出せない。
すぐ隣にいるのに。
朧な視界では捕らえることなんて出来はしない。
外部崩壊を防ぐための内部決壊。
もはや、抱いた怒りと憎しみは自己の中で形を成すことすらできない。



伸ばした手をつかんでくれる人は誰だったのか。
頭をちらつく黒と綺麗な藍は何だったのか。
指先から駆け巡る温もりは、いつ感じたもだったのか。


このどうしようもなく滑稽な水槽で、今なお、もがこうとする自分はどれほど醜いのだろう。
幼い頃に、成りたくないと下非た未来ではないと信じよう。

いつだって、起こすことのできない奇跡を与えてくれるのは君だった。
自分が与えることのできたものは2人で寄り添った日々の軌跡だけ。









それでも伸ばした手は、しっかりと握りしめられた。
それでも伸ばした手を、しっかりと握りしめた。









信じた神は初めから存在なんてしていなかった。
もはや、追憶となり果てた過去こそが世界であったように。

やがて目に映る光は色を変え、かつての景色は色あせた。
ただ、君と過ごした日々が痛いほど瞼に焼き付いてオレを(君を)苦しめる。

そっと空にかざした(伸ばした)手を掴んでくれる君は、もうどこにもいない。








(張り裂けそうな胸から溢れ出す感情感傷感覚を塞ぐにはどうすればいいですか?)

(苦しみのなかでさえ隣にいた君が、今隣にいないのは何故ですか?)





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