FFZ/C+T
夢を見た。
ゆっくりと覚醒しながら、ゆっくりと夢は消えていく。
さっきまで見ていた映像が手のひらからすり抜けた。
なのに頭から消えていく夢が、苦しいほどに心に刻まれていく。
目を開けると夜だった。
頬に何かが零れ落ちたが気にならない。体全体が夢の余韻に浸されているようで。
頭に浮かぶ言葉に思考が追いつかない。理解するまえに言葉は変わってしまう。
それが悔しくて、もどかしくて、悲しくて。
「クラウド?」
扉が開く音がして、暗い部屋に光が射し込んだ。
ティファが驚いたような顔をして、こちらを見てる。
それはたぶん、オレが泣いているから。
でも、彼女は賢い。驚いていても部屋には入ってこないから。
「大丈夫?」
「大…丈夫だと思う」
よくわからないけれど、きっと大丈夫だ。心が寂しいだけだから。
「そう、ならいいんだけど」
そう言って、ティファは自分の部屋に帰って行った。扉は閉めずに。
外を見ながら、胸にたまった息を吐き出せば窓ガラスが白く染る。
ほのかに光ながら窓に写る蒼は自分には似合わない気がした。そっと冷たい窓ガラスに手を重ね自分の瞳をなぞる。
窓ガラスから流れ落ちる雫がまるで涙のようで。
また、頬を何かが滑り落ちていく。
(むせびないた記憶よ)
(それでも、全て残したまま)