不器用でいよう
CC/ZC/gift




人見知りで臆病で不器用な自分。故郷を出た後も友達らしい友達はいなかった。

クラウドにとってのザックスは初めて出来た友達で、初めての恋人。
それがクラウドの中の、ザックスの立ち位置だった。





「クラウド!」

任務帰りなのかバスターソードを背負ったまま、ザックスが駆け寄ってきた。

「あ、ザックス。お帰り」

久しぶりに見るザックスの姿に、クラウドも口を綻ばす。
ソルジャーの服には、所々黒い染みができていて何をしていたのかは予想がつく。

「今日、何時上がり?」

「20時だけど」

「ん、じゃあ夜行くから」

付き合い始めた当初は、時間のすれ違いが多すぎたため、お互いの部屋に行くことが習慣になっていた。














「クラウド」

シャワーから上がったザックスは、いつもと変わらない様子でクラウドを呼んだ。
隣に座るようにと、ぽんぽんソファーを叩いている。

「なに?」

髪を拭いていたタオルを置いて、ザックスの隣に座った

「ちょっと真面目な話だよ。」

ザックスが肩の力を抜くように、息を吐く。
それとは逆にクラウドの肩は強張った。




「クラウドは、今でも俺と恋人でいたい?」

言われた言葉の意味は、直ぐには分からなかった。

自分の顔から表情が消えていくのが分かる。

「ザックスはおれのこと…嫌い?」

口が引きつりそうになる。
けれど、ザックスは首を横に振った。

「きっと俺は、何があってもクラウドのこと愛してると思う」

「なら、どうして!」





お前が好きだからだよ。





静かで短い言葉だけれど、クラウドを冷静にするには十分だった。
クラウドが落ち着くと、ザックスは話を続けた。

「俺達は男で、軍の兵士だ。俺はソルジャー。お前は一般兵」

「うん」

言い聞かせるような言葉に胸がつまりそうになる。

その現実は、ずっと前から理解していた。
それでも、気づかない振りをしていたのは自分の醜いわがまま。

すがりつくようにザックスの胸に顔を埋めると、優しく頬を撫でてくれる。


「お互い、いつ死ぬかわからない。それにお前はまだ十六歳だ。わかるか?」

「うん…わかるよ、ザックス」

頬にふれる手を離したくなくて、自分のを重ね合わせた。

目尻が熱くなり、手が顔を覆ってしまいそうになる。
それを、必死にこらえながらクラウドは喘ぐように言った。




「それでも…好き、なんだ。ザックスが」




言い終わらないうちにザックスはクラウドの腰を引き寄せ、深く抱きしめた。
苦しい抱擁があまりにも心地良くて、そのまま眠ってしまいたくなる。

「ザックス…?」

「怖いんだ。いつかクラウドを遺していくことが…クラウドから離れなきゃならないことが……」

初めて聞くザックスの本音。
残される側の痛みを知ってるから、強い繋がりを臆病になっていた。
それは優しいからで。

苦笑いするザックスに、今までにないほど愛おしさが湧いてくる。

手を伸ばしてザックスの顔に触れながら、額を重ね合わせた。

クラウドの瞳を覗き込んだザックスがくすりと笑う。

「お前の目に俺の色が写って、すげー綺麗」

「ザックスだって…」

そこには普段の子犬からは想像できないほど、優しい瞳があった。

「お前が俺に依存する前に別れようと思ったのに」

「もう依存しちゃってるよ。ザックスよりもずっと」

そのまま噛むように、唇を重ねる。
何度も何度も、小鳥がついばむように。



「ザックスって、意外と不器用だ」

「かもな」








(どうせ好きなんだから)

(素直に"好き"って言え!)





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