Impulse or Kiss【藍】
主人公≠ハルちゃん




「好き」

ちゅっ



「大好き」

ちゅっ



「……愛してる」

ちゅっ





「……はぁっ!?」

「何、うるさいよ」


藍はそう言い恨めしそうに私を見る。が、若干赤らんだ顔で言われているので怖くはない。

それでも恥ずかしいやら何やらで私の口はきっと引きつっていると思う。


「だ、だって……愛、って」

「へぇ、文句でもあるわけ」

「い、いえ、ないです」



一体どのくらいこうして藍とくっついていたのだろうか。

そう思うくらいには、もう長時間こうしている気がする。
……もしくは体感時間がものすごく遅くなっているか。


藍に抱きしめられて、甘い言葉を囁かれて……。

これならいつもみたいに冷たく扱われる方がましだ。
と思ってしまうくらいには、藍は気持ち悪いほど甘かった。






もとはといえば、全てあの音也のせいなのだ。

今日は4月1日、エイプリルフール。
朝から張り切ったシャイニングに酷い目に合わされズタボロになった私には、音也に突っ込む気力などこれっぽっちもなかった。
そのくらいの言い訳は言わせてほしい。

音也は局の廊下で私を見つけるなり体当たりをしてきて、そして私の頬に小さく口づけた。
音也が言うには「君をドキドキさせちゃうビックリエイプリルフールサプライズ」、だったらしい。

それだけならまだ良かった。(あら恥ずかしい、くらいで終われるから)
だけどそのシーンをたまたま藍に見られてしまったから質が悪い。

見た瞬間の藍は……固まっていた気がする。
しかしそれは本当に一瞬のこと。

次の瞬間には藍は音也の腹にパンチを入れ(そのときの音也の顔は決してファンには見せていけないようなものだった)、
私を藍の楽屋に連れて行き、正座させ、ごもっともな意見を私を見下ろしながら言ってくださった。


「これって浮気ってやつじゃないの」

とか、

「君って僕の彼女じゃないんだっけ?僕はそうなのかと思っていたけど、勘違いだったみたいだね」

とか。


最初は言い訳したり反抗していたのだけど。
全部文句のいいようのない返事が返ってくるものだから、途中からは完全に反省モードへと突入した。


……まぁ、確かに私も悪かったわけだし。

那月のタックルを毎回ギリギリでも避けている私になら、音也のタックルだってもしかしたら避けられたかもしれない。
無抵抗にならず少しでも頑張っていれば、藍を傷つける(?)ことだってなかっただろう。

それに……私だって、たとえ不可抵力だったとしても藍が他の子にキスされるなんて嫌だ。
考えただけでモヤモヤする。


だけど今さらそんなことを思っても遅い。
痺れる足を押さえながら顔を上げた私が見たのは、藍の子悪魔のような顔だった。



「ちょっと、こっちにきて」

そう言って藍は椅子から下りると、カーペットの上で少し足を広げて体育座りをする。
そしてその足と足の間をポンポンと叩いた。


「え?」

「ほら、早く」


急かされた私は痺れた足をかばいながらも、どうにか藍の足の間に座り込む。
私が座ると、藍はまるで私の体を閉じ込めるように後ろから覆い被さってきた。というか、閉じ込められている。


「あ、藍?」

これはちょっと恥ずかしいけど嬉しいかも……なんて悠長な考えは甘すぎた。


「っ!!」

ものすごい電流が足を伝い何事かと下を見ると、藍が私の足をつーっとなぞっているのが見える。
おもわず藍の顔を見れば、それはそれは楽しそうなお顔をされていた。


「な、何するの藍!」

「さっきから異常に足を気にしていたから何かと思ってたんだけど、痺れていたんだね」

「そ、そうだけど……そうじゃなく、ッッ!?」


私の反応を見て楽しそうに足をなぞる藍、15歳。
藍はいつからこんな鬼畜キャラになったんだろうか……いや、最初からこうだったか。

頭の中で藍のキャラ性について考えている間も藍の手は止まらない。
むしろコツでも掴んできたのか、触れるか触れないかの微妙なタッチで上手くなぞってくる。


「あ、藍!もう止めて……っ」

これ以上は私的にも藍(のキャラ性)的にも駄目だ。
必至に想いを込めて悲願すると、藍は意外と呆気なく足をなぞるのを止めてくれる。


「まぁいいよ。そのかわり、」


そのかわり?

そのかわりに何なのか藍に聞こうとした瞬間、唇にふんわりとキスが落ちてきて小さくリップ音がなった。



「キス、沢山させなよ」

「え……あ、はい」


そして話は冒頭に戻る。







END




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