ことはな * 部屋の扉を開けると、そこは仄かな桃の香りで満ちていた。けしてくどい香りではない。あまくて優しいにおい。晋助の匂いと少しだけ似ていると思った。 「おはよう。学校に行くぞ」 「…ごふん…、」 「ダメだ、駅の立ち食い蕎麦に間に合わない」 「ンなの知るかよ…、」 げんなりと応える晋助に、俺は容赦なく腕を伸ばした。 「昨日一緒に食べると約束しただろう?ほら、起きろ」 「わーたって。…って、やめろバカコタ!」 ぐいっとタオルを剥ぎ取り、そのままぼふぼふと晋助を叩く。じとりと一瞥されても気にならない。その視線にはすっかり慣れっこだ。効き目など小学生の頃に切れている。 ― あ、 はらり。晋助の口から桃色がこぼれた。 少し前から、晋助は花を吐くようになった。無論本物の花ではない。淡く儚いわたあめのような、触れるとすぐに消えてしまう花だった。 自分はとうとう頭が可笑しくなったのだろうかと思ったが、身体に異変があったわけでもない。何より晋助が身体の不調を訴えているわけでもなかった。 だからこれは、自分が勝手に見ている幻なのだろう。そう思うことにした。 「ほら、起きろ晋助、」 「分かったって、暴れんなよ莫迦、」 「莫迦じゃない桂だ、」 ふん、と鼻を鳴らすと晋助が面白そうに笑う。それがなんだか腹立たしくて、もう一度ぼふん!とタオルを投げつけた。 * * * 駅の立ち食い蕎麦は今日も絶品だった。朝から食べるには重すぎる。毎度毎度そう思うのに、食べてしまうと不思議と受け入れるようになった自分の腹に笑うしかない。 高校に通い始めて得たものは、僅かばかりの友人と、この立ち食い蕎麦だと小太郎は言う。本当にここの蕎麦が好きなのだろう。前は週に二度のペースだったのが、最近は三度に増えてしまった。 だが付き合い続けることにも、少々骨が折れ始めている。 ― あ、 ほろり。思った矢先に花がこぼれた。季節外れの桃の花。いつもは白黒だというのに、いまは色がついている。 小太郎のことを考えると色がつく。そう気づいたのはつい最近のこと。 ほんの少し前から、何故か自分は花を吐くようになった。 無論、本物の花ではない。触れればその花は消えてしまう。現にいまも、こっそりと指先でつついた「それ」は、もう姿を消している。いよいよ想いを煮詰めすぎたのかと自分自身を嗤ったが、別に何か、嫌なことが起こるわけでもないらしい。 この花は自分以外の誰にも見えていない。誰にも何も、この想いを知られることはない。誰にも。そして小太郎にも。 花を吐くようになったのは、きっと抱える思いがいよいよ収まり切れなくなったからなのだろう。 小太郎のことが愛おしい。幼馴染だからというにはあまりに容赦ない感情に、理由を探しあぐねた中学三年の秋。抱いてしまった想いの正体。まさか。はぐらかしていた自分に気づいてしまったのは、同じ高校に行こうとふたりで話したときだった。 幼いころに芽吹いた願いが、行き場をなくした心の塊が、一房の桃色になって口から零れ落ちているのかもしれない。それに、自分が吐いた「花」が小太郎を彩るその様を、綺麗だと思ってしまったのだから仕方がない。 ふとした瞬間に微笑む小太郎を、薄い桃色の花が彩る。それがとても綺麗だった。見惚れて何度、長い夜に喉を鳴らしたことだろう。らしくもなく浪漫豊かな考えに苦笑して、手元の蕎麦を一気にすする。ああ、やはり今日もここの蕎麦は絶品だ。舌をすべる出汁の味に頬を緩め、桃色の花が持つ意味に、ひとり見て見ぬフリをする。 時折いろづくその花と、俺はしらばく付き合うことにした。 ■ 「あー、ねえねえヅラくん、晋ちゃん知らない?」 「ヅラじゃありません、桂です。知りません」 「え、知らないの?」 「どうかしたんですか?」 聞けば、先生は一瞬斜め上を見て、そして俺を見た。何かを含んだ視線が妙に柔らかくて、なんとなく背筋がピンと伸びてしまう。 「レポート出してないんだよね、あいつ」 「そうなんですか」 「だからね、探してきてくれる?」 「え?」 「最近名探偵らしいじゃん。晋ちゃんが何処にいても分かるって」 「それは…、」 だってそれは、晋助が残した花を辿っているからです。と、そんなことを言えるはずもなく、俺はしぶしぶ頷くしかなかった。ぽふん。叩かれた肩に下を向く。 最近、晋助がほんの少しだけ遠いような気がする。一緒に学校に行くことも、一緒に帰ることも何も変わらない。けれど少しずつ、ほんの少しずつ。前より一緒にいる時間が少なくなったような、そうでないような。 何かがあったわけじゃない。なのに、どうしてそう思うのだろう。 今日だって一緒に登校して、昼食も一緒に食べた。でもこうしてときどき、晋助はふらりと居なくなる。居なくなったといっても学校の中だ。晋助が残した花を探せば、すぐに見つけることが出来てしまう。 晋助が嫌がるなら探すまいと思うのだが、居ないと分かったと途端、花を辿る自分の視線は正直だった。せっかく綺麗な花が見えるようになったのに、晋助が近くにいない。なんだかこころぼそい。 じゃあそゆことで、よろしくね。ひらひらと振られる先生の手を眺めて、頬の横を掠めた桃の香りにふと瞬く。 「…晋助、」 ぽつり。呟いた自分の言葉は、ついぞ花にはならなかった。 * * * くあ、と欠伸をひとつ飛ばして、投げ出した足を乱雑に曲げる。最近見つけた穴場は実に居心地がいい。歴史資料室なんて場所はまさに生きた化石だと思った。担当の教師も生徒も、誰も近づいては来ない。古びて壊れた鍵も見向きもされない。教室の喧騒を忘れてひとり過ごすにはうってつけの場所だった。 ― ここまで来たら、流石に笑えねーか、 最近、小太郎の嗅覚が冴えているのか、上手く隠れることが出来なくなった。 何処にいてもどう隠れても、結局小太郎に見つかってしまう。何故なのかはわからない。一度、どうしてお前には見つかってしまうのかと肩を竦めたことがある。別段理由が欲しかったワケではない。ただ不思議だった。どうして小太郎には、俺の居場所が分かるのだろうかと。 ― だって晋助のこと、分かってしまうんだ。仕方ないだろう? そう言って微笑んだ小太郎の声色と表情が、瞼に焼きついて離れない。言葉に乗せられた「幼馴染」という絶対的な理由より他を、とうとう見つけることは出来なかった。 ― キスしてェとか思うんだもんな、小太郎と。 キスだけじゃない。抱き締めて、頬を撫でて、長い髪に触れて、膨らんだ唇に指を添えて。服の下に隠れた素肌に触れて、小太郎のすべてを暴きたい。他の誰にも見せたくない。自分の吐き出す花で飾った小太郎を、腕の中に閉じ込めてしまいたい。なりふりなど構わずに。 白い肌に黒い髪。色づいた桃の花を小太郎に満遍なく飾り、膨らんだ唇に舌を寄せる。溢れる唾液はきっと何より甘いのだろう。濃くなった小太郎の匂いを思う存分吸い込んで、飢えた胚を満たしてゆく。 ― 莫迦、みてェ、 くしゃりと瞑った目で瞼の裏を睨みつけ、古びたソファの上で天を仰ぐ。 世界から己を遮断しようと意識の淵に佇んだとき、部屋の扉がギィィと鳴いた。 ■ 「晋助?いるのか?」 返事はない。だが気配があった。 古びた歴史資料室。これはよい穴場を見つけたものだと感心したのは僅かな時間で、古びた鍵が壊れていたことに眉を顰めた。後で担当の先生に報告しておこう。このまま入り浸り続けることは、あまり良いことだとは思わない。 「こんなところで寝ていたのか、」 「…別にいいだろ、どこでも」 「よくない。銀八先生が探していたぞ」 「あー、レポート?」 「うん」 つかつかと歩み寄ったソファの上で、晋助の頭をぽこんとたたく。そのまま髪に触れようと腕を伸ばすと、思い切り腕を引かれてバランスを崩した。逆らえなかった上半身が勢いに推されるまま晋助に向かってのめり込む。どさりと床についた膝小僧が痛い。 急にどうしたんだと顔を上げると、濃くなった桃の匂いが世界を覆った。 ― 綺麗な匂い、晋助の、 古びた扉に備え付けられた錆びた鍵。回した直後、視界に飛び込んできたのは鮮やかな桃色だった。まるで昔話にでも出てきそうな風景に、うっとりと心が華やいだ。桃の花に包まれて眠る晋助の姿につい見惚れてしまったのだ。 「晋助?どうし…、」 「引っ張れよ、」 「え?」 「起こして」 「自分で起きろ」 「小太郎、」 「うん?」 「起こせよ、なァ、」 くん、と引かれた腕と心は言うことを聞かなかった。晋助の胸に倒れ込むと同時に、眼前に一面の桃色が咲く。ほろり、ほろり。晋助の口から花が生まれる。頬に触れそうな晋助の唇に、胸がさらりと痛くなった。 ― きれいだ、すごく。 晋助が花に埋もれてゆく。このままふたりで埋もれてしまったら、きっと息が出来なくなる。 ― 息もできない、くらい? 咲き誇る花に心が溺れ、ふたりのすべてが攫われてゆく。それはもしかしなくても、あまりに綺麗な、自分の夢なのかもしれない。 「…しん、」 「ハハ、冗談、」 「え?」 「出せばいいんだろ、レポート」 「あ…、」 むくりと起き上がった晋助がふあ、とあくびをする。降ろされた肩は無防備だった。立ち込める桃の香りに瞼をぱちり。瞬かせればあっという間で、直前まで自分たちを包んでいた桃の花は跡形もなく消えていた。 「よくわかったな、ここ」 「あぁ、うん……、」 「逃げらんねェってことかよ、」 「逃げる?」 「こっちの話」 それ以上言葉を続けず、晋助は無言で部屋を出て行った。 残された部屋に、ひとりきり。 心細くなった視線を床に落とすと、花がひとふさ残っていた。 小さな小さな桃の花。晋助のくちから吐き出された、たったひとつの小さな欠片。壊れないように両手で掬い、窓から差し込む光にかざすと、桃色の花がすう、と薄くなる。考えるより先にくちびるが開き、消えかけた花をそっと飲み込む。 こくりと喉を鳴らすと、思いがけない味が咥内に広がった。 「…苦い、」 言葉とともに溢れたのは涙だった。 まるで何かが感染したように、両目から涙が生れ出てはとまらなくなる。これは誰の涙なのだろう。思って目を閉じると、甘い匂いの桃色が、瞼の裏を染め上げた。 ■ ニヤニヤとふざけ顔の銀八に、普段の素行についてまであれやこれやと言われ始めたので、話の途中で踵を返した。くだらない。何もかもがくだらないように思える。小太郎のこと以外が色褪せて見えるのは、いろいろと手遅れだという証拠なのかもしれない。 募る想いを嘲笑うかのように、足元に花が積もってゆく。白黒の花からはなにも感じ取ることは出来なかった。 どんな味がするのだろう。一度試しに食べてみたことがある。 我ながら暇を持て余しすぎだと苦笑したが、その心は食べた後も何も変わらなかった。何の味もしなかったのだ。いろのない「はなびら」は。 「晋助!」 「あァ?」 振り返ると小太郎が居た。放課後の下駄箱。夕陽に照らされ、小太郎の長い髪がきらきらと光を反射している。ふわり靡いた風が桃色の花を宙に舞わせた。いつのまに吐き出してしまったのだろう。つい捕まえようと指を伸ばすと、小太郎の髪に触れてしまった。 「話、終わったのか?」 「なんで、」 「うん?」 「待ってたの、俺のこと、」 「一緒に帰ろうと思ったんだ。…いけなかったか?」 「別に、いいけど、」 「そうか。ならいい」 触れた髪は柔らかかった。ふと。触れたのはこれが初めてではないかと思い至って、ぴしりと気配を鋭くしてしまう。 触れただけで、こんなに。 えぐられるように苦くなる胸の中で、桃色の花が色づくのが分かってしまった。 「今日は寄り道しよう」 「へー、珍しいの、」 「たまにはな、」 くすりと嬉しそうに表情を緩めた小太郎に、小さな桃の花が纏わりつく。眼前に焼きつく光景の眩しさに、たまらず目を細めていた。 * * * 晋助の吐く花に桃色が増えた。それまで白黒の花が多かったのに、最近晋助の周りは鮮やかだ。 朝、晋助を起こしに部屋に入ったとき。昼食を取るために後ろの晋助に声を掛けるとき。放課後、下駄箱からふたりで靴を取り出すとき。 季節外れの桃色が、何故だかとても心地よかった。 そんなある日の学校帰り。当たり前のように晋助の部屋によって、何事もない会話をぽつりぽつりと交わしていたとき。 ころり。晋助のくちから花がこぼれる。ふよふよと肩を漂う桃色が愛らしい。こそばゆい心でくすりと笑うと、晋助の視線が鋭くなった。花とそれとがあまりに不似合いで、ひとり苦笑いをしてしまう。 気づいた晋助にどうしたと目だけで聞かれたので、なんでもないと答えてしまった。 もっと見ていたい。優しくきれいなその姿を、もっとずっと見ていたい。 ― いまは、甘いのかな、 一度だけ嚥下した苦みを忘れることは出来ないままだった。幾度か手を伸ばした先で得たのは、角砂糖が崩れるような儚い崩壊だけだった。 掬おうとすれば逃げてゆく。やっと捕まえたと思っても、その姿はあっという間に空気に滲んで消えてしまった。 それがまるで、時折ふらりと居なくなる晋助のようで。 消えるたび目に溜まる涙の意味に、自分はもう気づいてしまっている。 「晋助、変なことを聞いてもいいか?」 「変?なにが?」 「だから、変なことだ」 「なに、」 読んでいた雑誌を開いたままの晋助が、訝しげな表情を向けてくる。その拍子にまた、小さな桃色がほろりと舞った。 「花が見える」 「…あ?」 「少し前から、晋助が吐く花が見える」 「な…、、」 「晋助の花を食べたい。前食べたときはすごく苦かった。いまは、違うのかもしれない」 「…おい、それ、」 「どうしてだろう。もうずっと、晋助のことしか考えられない。晋助が吐く花を食べたい。どんな味がするのか知りたい。いまならとても、晋助の花は甘いような気がする」 一気に捲し立てたせいだろうか。はふ、と吐き出す息が上がっている。胸いっぱいに空気を吸い込むと、甘い桃の匂いが胚を満たしてゆく。 背筋が震えた。胚から躰から、心までぜんぶ、晋助の匂いで満たされていくようだった。 「いまも、見えてんの、」 「うん。あ、ほらいま、吐いただろう、」 「……食べて、」 「え?」 「食べてくれるの、小太郎」 「いいのか?」 短く頷いた晋助にそっと近寄り、両手で頬を包み込む。小さくひらいたくちびるで、晋助の唇からこぼれおちた花弁をふわりと舌で掬いあげた。 嗚呼。花に触れた舌先が、くちびるが、やわく、痺れる。 「…あまい」 砂糖だけで出来た菓子のように、舌の上で花がとろける。最初の花が喉を通る直前、もう次が欲しくなっていた。もっと食べたい。あまく優しい晋助の花を、もっと。 こくり喉を鳴らして顔を寄せ、頬に、首筋に、肩に、晋助から生まれる桃色をひとつずつ平らげてゆく。 「…晋助、」 「すきだ、」 「え?」 「好きだ、小太郎」 あまり物がない無機質な晋助の部屋。色の少ないその部屋が、たくさんの桃色で埋め尽くされてゆく。 綺麗だった。ふたりを覆う桃の匂いも、たっぷりと潤んだ晋助の眸も、言葉と共にあふれる桃の花に埋もれてゆく。返す言葉が遅くなったのは、広がる彩りに心を奪われていたからだ。 「しんすけ、」 「俺も喰いたい、」 「え?」 「小太郎の花が、喰いたい」 ぽろぽろと色の濃い花を吐き出しながら、晋助が俺に縋りつく。重なった視線に心臓が跳ねた。胸の中からふつふつと想いが湧き出してくる。 これは何だろう。この想いの名を、自分はまだ知らないのだろうか。 「晋助、俺、俺は……、」 こふ、と。 一度だけ咳き込んだ拍子に自分の口から零れ落ちたのは、白いヒナギクの花だった。 ■ 小太郎の口から白い花があふれて落ちた。俺が吐いた桃色と混じって、互いの唇から始まった花の逢瀬は、いよいよ終わりが見えなくなっている。だがそんなこと、もうどうでもよかった。 小太郎の吐き出した花の名前。ころころと丸く咲いた白い花。黄色く染まった中心と花弁の対比が美しい花。菊の雛とはよく言ったもので、幼さを象徴するその花はいまの小太郎にも、そして自分にもぴったりだ。 「晋助のが感染った、」 「そうみてェだな、」 「ヒナギク。晋助の桃とは違うんだな、」 「喰っていい?」 「え?」 「喰わせろよ、俺にも、おまえの、」 「あ…っ、ん、、……ふ、……、、」 あんぐりと開けたくちで、まだ薄い唇に縋りつく。長い黒髪に指を絡め、華奢な躰に腕を回した。 もうずっとこうしたかった。 薄い皮膚の上。花を吐き散らす唇を塞ぎあったまま、それでもなお溢れてくる花を指先で弄ぶ。ぱくり。離した合間にひとくち花を平らげると、小太郎のきれいな眸がじわりと滲んだ。 もっと。もっと食べたい。小太郎の花を。ふたりにしか見えない花を。 「しん、…ん、ぅ…、、」 「もっと、」 「ぁ、…、、」 「もっと寄越せって、なァ、」 ほろり。ほろり。ほろほろり。 小太郎のくちから花が溢れて止まらない。吐き出される花を、想いを、ひとつも残らず掬って漏らさず食べ尽くしたい。 これが病だと言うならば、きっと治せるのは小太郎だけだ。 「…しんすけ、」 「なに、」 「ヒナギク、どんな味なんだ?」 「小太郎の味がする」 「え?」 耳元で囁くと、それこそ桃色に頬を染めたりするものだから、もう我慢なんか出来なくなった。互いの花で部屋が埋め尽くされるまで唇を吸いあって、力の抜けた躰で床に転がる。 きっともう、この花を長く眺めることはない。思い出すこともなくなるかもしれない。そんな想いごと小太郎を抱き締めて、花を理由に何度も何度もキスをする。 患った病はふたりの唇ばかりをとろけて溶かして、桃と白で埋め尽くされた部屋のなか、甘い香りを指の先まで染み込ませてゆく。 小太郎の味がする。 その言葉に小太郎がいまより色づいた顔を見せるようになるのは、もう少しだけあとのことだった。 おしまい。 ― モモの花言葉:あなたに夢中 ― ヒナギクの花言葉:あなたと同じ気持ちです // 2014/8 : 発行 2016/6/29:WEB掲載(加筆修正) // (書いていた頃を思い出すと)個人的に思い出深い3Z高桂のお話でした。 「花吐き病」という題材を知ったころに書いたお話です。高桂はお花が似合いますね。 幼馴染から恋に変わる瞬間ってどうしてこんなに尊いのでしょうか…(DAISUKI) |