休日。 ■晋ズラ(※若干暴力表現あり注意)
!!attention!!
初っ端から暴力表現があります。苦手な方はご注意下さい。--------------
休日。
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骨を折る、というのは一見困難に見えるようだが、その気を出せば意外と容易に出来ることだ。
振り上げた右足を男の頭に勢いよく振り落として、顔面を地面に叩きつける。
ごちゃごちゃした音が耳に響いて、その不協和音に眉を顰めた。
無骨なのは外見だけではないらしい。
「…ひ、ひい、いたい、いひゃいぃぃ、」
「煩せェなァ、」
地面に這いつくばった男が虫の息を吐いている。
無数の傷口から細い血が流れて、赤黒く地面を汚していく。
本当なら、足元の顔面ごと踏み潰してしまいたい所だが、それはやめておく事にする。
首根っこを掴み上げて、男の口に銃口を突き付けた。
「なァ、さっきから聞いてるだろ?手前ェがやったのか、やってねェのか。」
「し、しらなひ…、」
ゴリ、と銃口を更に口の奥に突っ込むと、男はえづきながら涙を溢し始めた。
こういう人間には、直接的に痛みを感じさせるほうが手っ取り早い。
「別になァ、俺にやり返す分には構わねェんだ。なァ、そう思うだろう?」
「はひ、はひ、」
「人の大事なモンに、手ェ出すなって、習わなかったかねェ?」
ガクガクと男の顎が震えだして、小刻みに相槌を打つ。
乱れた髪と傷だらけの顔面に反して、整えられたままのスーツ姿が滑稽だった。
「…最後にもう一回だけ、聞いとくぜ。手前ェがやったか?それとも誰かにやらせたか?」
「お、おお、俺が、おれがあ、」
「ああ、そうかい。」
口から銃口をゆっくり抜き去って、口元を歪めてにぃと笑う。
一瞬安心したかのような表情をした男は、瞬く間に真っ青な面へと変わった。
くるりと銃を持ち直して、柄の部分で男の頭を強打する。
顔面が地面に叩きつけられる直前、男の肩に片足を叩き込むと、男の身体が宙を舞った。
■
店に戻ると、ズラ子が後片付けをしてる最中だった。
襷をかけてカウンターのテーブルを拭いている。今日は日曜日だったから、ホステス達は先に帰らせたのだろう。
明日は1ヶ月ぶりの休み。というか、休みになってしまった。
「ズラ子、」
「晋助?」
くるりと振り向いたズラ子をそっと抱き締めて、首筋に顔を埋める。
甘い匂い。
昨晩、着物に炊き込んでいた伽羅の香りだ。
この匂いも嫌いではなかったが、いまは何よりズラ子の匂いを味わいたかった。
「…おかえり。早かったな。」
「まァな。」
「何処か、怪我をしたりしていないか?」
「誰に聞いてンだよ。」
「それもそうか。」
くす、と微笑んだズラ子の口元に、少し大きめのガーゼが貼られている。
その上からそっと頬を撫でて、下唇を啄むようにキスをした。
「…大丈夫か?」
「ん?ああ、これか。大袈裟だな、大丈夫だよ。」
「莫迦、違ェよ。」
「え?」
「もっと、してェんだけど。」
「…晋助のえっち。」
「あァ?お前程じゃねェよ。」
「そうか?お互い様だろう。」
何だか余裕な態度に悔しくなったので、抱き締めた腕で脇腹をくすぐった。
嫌々と楽しそうに躰を捩るズラ子を更に強く抱き締めて、噛み付くようにキスをする。
ガタンとカウンターに上げられた椅子が音を立てて、誰も居ない店の中に、互いの息を奪い合う音だけが響く。
ふっと息を止めて顔を覗き込むと、潤んだ瞳に捕まった。
「…ここじゃ、だめ、」
「分かってる。…家でな。」
「うん。」
無邪気に笑ったズラ子をもう一度抱き締めて、名残惜しく腕を解く。
同時に頬にキスをされて、腰の奥が鈍く疼いた。
「晋助、そういえば、夕餉はどうした?もしかして、まだじゃないのか?」
「あァ、そうだな、まだ食ってねェや。」
「冷蔵庫の中に、里芋と鶏肉の煮付けを置いてあるよ。」
「分かった。」
最後にもう一度キスをしてから、店の暖簾をゆっくりとくぐる。
晋助、と優しい声に呼ばれて振り返ると、妖艶な微笑みに捕まった。
「ありがとう、晋助。」
首を少し傾けて、人差し指を唇に添えながら微笑んでいるズラ子は、何よりも綺麗だと思った。
■
― いい口実になったかな、
まるで悪戯が成功したかのような表情で笑いながら、自分の上で揺れるズラ子を押し倒したのは、翌日の朝のことだった。
/終
駄目な大人なふたりでした。
休みの日は一日中いちゃいちゃしてる晋ズラ希望(そして推奨)です。
2013/9/9 掲載[ 69/79 ][*prev] [next#]
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