07:もこもこ。■五萬打記念:同級生高桂
※ご注意
3Z設定で、桂さん・銀さん・高杉は同級生で幼馴染です。
「ふわふわ」から話が続いてます。高桂←銀な感じかもしれないっていうか高桂です(…。)
ちょっと土ミツ風味な表現があります。苦手な方は華麗にターンしてね!
もこもこ。
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12月に入ってすぐ、学校からの帰り道、小太郎が手編みのマフラーを首に掛けてくれた。
なんか、もこもこしている。
若干の不満はあったが、小太郎も色違いのマフラーを首に巻いていたので、まぁいいかと思った。
11月の中頃、マフラーを編んでやるからと云われて見せられた編み棒には、白いマフラーが半分近く編み上がった状態でくっついていた。
色はともかく、黄色いくちばしが付いているのをみて、即座に色を変えてくれと頼んだ。
― どうして、
― 黒が好きなんだよ、
― そうか、それなら仕方ないな。
白地でなければあの真っ白オバケにはならないだろう。
小太郎の作ってくれるものならなんでも嬉しかったが、流石に躊躇するデザインだった。俺にそれを身に着けて出歩ける程の勇気はない。
そもそも、いきなり編み物と云われて、どうしてそこに行き着いたのかは後から知った。生徒会の先輩に編み方を聞いたのだと、小太郎が笑いながら云っていた。
― すごく暖かそうだったんだ。だから、
晋助は寒がりだからな、と云われて、返す言葉は見つからなかった。
「ちゃんと手洗いと、うがいもするんだぞ、」
「…お前は俺の母ちゃんかよ、」
「寒くなるとすぐに体調を崩す奴が云うんじゃない。…これでも心配しているんだ、」
別に俺は体が弱いわけじゃない。
どちらかというと、季節の変わり目に体調を崩しやすいのは小太郎だった。だからこそ健康管理を徹底している。
昔から、変わらない。
怒っていたかと思えば、不安げな、何処か儚い様子になる。
小太郎を好きだと自覚したのは、もうずっと前の話だ。
男同士で、まだ未成年で、親の庇護がなければ生きていけない年齢だった。
第一、小太郎にこの気持ちを伝えて、受け入れてもらえる自信も、正直なかった。
― 何、やってンだ、俺は、
小さい頃から、ずっと一緒に過ごしてきた。
小太郎と、そしてムカつく天パ野郎と、気が付けば高校まで一緒になった。
別に行きたい高校があった訳でもなかった俺は、小太郎が受けると聞いた高校を深く考えることもなく選んだ。
深く考えなかったのがいけなかった。
中学の頃から優等生だった小太郎が受ける高校のレベルは、かなり高いものだった。
音楽や美術、理系の分野は得意だったが、国語がからきし駄目だった。
― 合格するためには、今より点数を10点上げなければならない。
中学の進路担当に云われて、テストで云うなら漢字問題5問、長文問題2問、最後のなんか訳のわからない問題1問分の点数だとぼんやり思った。
小太郎は文系の科目に強かったが、理系でも強かった。俺には敵わなくとも、90点台をとるような感じで。
しかし高校で小太郎と離れてしまうのは、どうしても嫌だった。
嫌だったので、小太郎に相談すると二つ返事で勉強をみてやると返してきた。
― 銀時も同じ高校を受けるそうだ。一緒に行けたらいいな、
中学最後の冬、放課後の教室で3人、勉強ばかりしていた。
しかし今考えれば、銀時は文系に強かった筈だ。小太郎に文系の面倒を見てもらう理由はなかった。
― あの野郎、
小太郎の教え方が上手かったのか、結果は3人とも合格。
そして今、俺は自分の気持ちを伝えきれないまま、高校生最後の年に進もうとしている。
「晋助は、大学決めたんだろう、」
「進路担当が煩かったけどな、」
「そう云うな。坂本先生だって心配してるんだ。」
「笑ってて煩かったんだよ、」
高校と大学では、やはり違う。進路選択は、互いの将来が決まる選択に近くなる。
小太郎は入学当初からずっと、文系の国立大学を志望していた。高校2年生になってから、選択授業でクラスが分かれるようになってから話せる時間が少なくなった。
俺は、小太郎と同じ大学には、行かない。
「…寂しくなるな、」
「は、」
「晋助と、小学校も中学も、高校も、ずっと一緒だったのに。」
本当に寂しそうに言葉を紡ぐ小太郎は、今までに見た事がないほど、儚く見えた。
「なぁ、」
「うん、」
「なんで、マフラー、編んでくれたンだ、」
一瞬、小太郎から表情が消えた。
そうだ、あと一年すれば、同じ時間を、同じ空間を、一緒に過ごせなくなる。
小太郎はきっと、問題なく志望している大学に行けるだろう。
そして俺は、何人もの教師の説得を断って美大に行くことを決めていた。
理系が得意だと思っていた俺の成績は、模試の度に面白いほど上に、本当に面白いほど上がっていってしまった。
数学担当教師の坂本にも、真面目に理系の大学を目指してみないかと説得された。
美大に行くことを決めた理由は、小太郎が俺の絵を好きだと云ってくれたからだった。
昔から、絵を描くのが好きだった。
得意だとか、点数が取れるとか、そういう類いの感情ではなく、純粋に好きだった。
― 晋助の絵は、不思議な感じがする。
― はぁ、
― なんだろう。晋助の絵を見てると、泣きたくなったり、嬉しくなったりするんだ。
― 貶してんのか誉めてんのか、どっちだよ、
― 俺は、好きだよ。晋助の絵、すごく好きだ。
新しい絵を描く度に小太郎が笑ってくれるので、俺は筆を手放せなかった。
そしてとうとう、筆を手放せなくなった。
「…どう、して…、」
「ずっと編んでたんだろ、放課後とか、家に帰ってからとか、」
「うん…、」
「なんで、そこまで…し、て…、」
小太郎の綺麗な眸から、透明な雫が、ぽろ、ぽろ、溢れ出した。
「お、おい、」
「あれ、うん、編みたくて、晋助に、暖かいからって、…あれ、」
ぽろ、ぽろ、ぽろ、
それは途切れることなく、小太郎の眸から溢れ続け、頬を濡らしていった。
「小太郎、ど、どうし…、」
「ごめん、晋助、ごめん。あれ、俺、なんで、あれ、」
とうとう震えだした小太郎を、放っておくことなんか出来る筈がなかった。泣き顔のままの小太郎の腕を引いて、俺の家まで連れて帰った。
何か、泣かせるような事を、云ってしまっただろうか。
家に帰ると、誰も居なかった。
丁度良いと咄嗟に思って、そのまま小太郎を部屋に押し込んだ。
俺は急いで台所に行き、温めた牛乳を持って部屋に戻ると、小太郎は部屋の床に座り込んで泣いていた。
「どうしたんだよ、」
頭を抱えたくなった。
原因が分からなければ、泣き止ませることも出来ない。
泣き顔は、出来ることなら、あまり見たくない。
「…し、い、」
「あ、何、」
「さみ、しい…、」
思いもよらなかった言葉に、驚きを隠せなかった。
「しんすけ、と、離れるの、は、」
さみしくて、くるしい。
気が付いたら、小太郎を抱き締めていた。
「…会えなくなる訳じゃ、ねぇだろ、」
「う、ん、」
「一生、会えなくなる訳じゃ、ねぇよ。」
「うん、…うん、」
腕の中で、小太郎が小さく頷いた。
好きだと、思った。
どうしても、どうしても、
好きで、しょうがないと、
「でも、くるしい、」
胸が、くるしい、
「しんすけと、離れるのは、くるしい。」
抱き締めていた腕をゆっくりと解いて、小太郎の顔を覗き込むと、涙でぐしゃぐしゃになっていた。
それでも、小太郎は綺麗だった。
「ごめん、晋助、ごめん。ごめんなさい、」
好きになって、ごめん、
その言葉を聞いた直後、互いの唇が重なっていた。
― やわらかい、
小太郎の長い黒髪に指を通すと、するり、指が滑り落ちてしまった。
それが嫌で、嫌で、自分から重ねた唇を、何度も離しては、何度も、何度も、キスをした。
「…もういっかい、しても、いい、」
額を合わせて、小太郎に尋ねた。
返事の代わりに、小太郎から唇を重ねられた。
「好きだ、」
言葉と共に抱き締めた躰は、とても暖かかった。
■
「…どうしても付けなきゃ駄目だったのかよ、」
「何をだ、」
「この黄色いやつ。黒いのに黄色ってアレだろ、どっかの妖怪…、」
「何を云ってるんだ。ステファンの足は黄色いんだぞ、可愛いだろう、」
腕の中で冷めてしまった牛乳を飲みながら、ゆっくりと微笑む小太郎の方が可愛いと思ったが、もう何も云わなかった。
あと1年すれば、互いに違う道を歩いていく。
同じ時間を、一緒には過ごせなくなる。
けれど今は、寂しくも、苦しくもなくなった。
場所は違っても、同じ気持ちを想って、一緒に過ごしていける。
冬が終われば、高校最後の春が来る。
二人で眺めるであろう桜を想って、小太郎を抱き締めたまま、ゆっくりと目を閉じた。
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-->> Thanks 50000 count!
■フリー配布:12/8〜12/18
※配布は終了しています。
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50000HIT有難う御座いましたぁああぁぁぁあぁぁあああ!感涙
3人同級生で高桂サイドの話でした。やっぱり即席ですみませんごめんなさい。高桂大好きだー!うわーん!(?)
泣きながらごめんなさい好きっていう桂さんが書きたかっただけでs(ry
甘すぎる気がしますが50000HIT記念という事で大目に見てやって下さい…。
まさかここまでサイト続けられると思ってませんでした。マジで。そしてあと二ヶ月弱で1周年ですかってちょ、まーじーでーかー!(びっくり。
兎にも角にも、50000HIT本当に有難う御座いました!
いつもサイトに来てくださってる皆様に、心からの感謝を込めて。
みつき
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2008/12/08 掲載
2008/12/12 再掲載
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[mokuji]
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