※源南♀ 甘々
※南雲一人称



















自分がそう可愛げのある女じゃない事は百も承知で、男女だとかゴリラ女だとか陰で呼ぶ男子に凄みを効かせて半泣きにさせた過去があり、筋金入りの男勝りなのも自覚はある。
それは幼い頃から変わらないオレのアイデンティティーであり、普通の女子達が興味を示すような物(まぁ例えば、恋愛事とか?)には興味がない。
恋愛の話題を振られてもそんな事より今日の晩飯なんだろうな、って気分だし、彼氏を持った所でサッカーの妨げになるようなら直ぐに切り捨てる、そんな思考回路の持ち主がオレ。



「……それは分かったんだが、なんで今話してくれたんだ?」



以上の長ったらしい自己解析をぶち撒けた相手、源田は少し考え込んだ後に苦笑をもらして問い正してくる。
部活の後の帰り道、その困ったような笑顔が夕焼けに照らされる所を見るのは割と嫌いじゃない。
どれだけオレが不可思議な行動を取っても、どれだけ理不尽に怒ったとしても和やかに受け止めてくれる所は気に入ってる。
対人間にしろ対物にしろ好き嫌いがはっきりしているオレのカテゴリー内では好きに入る源田を見上げて悪戯っぽく笑ってみせた。



「あんたのその反応が見たかったから」
「うーん…南雲ってたまに不思議だよな」
「そーか?」
「ああ」



ほら、そのしょうがないなって感じの笑顔。
絶対あんたオレを甘やかすの好きだろ、って言いたくなったけど喉まで出かかったその言葉は、先ほど寄ったコンビニで購入したジュースを飲み下すと同時に飲み込んだ。
源田と帰っている時はとても静かで穏やかな時間が流れる。
茂人や夏彦と居る時みたいに腹が捩れる程に笑う訳ではなく、ヒロトや風介と居る時みたいに喧しく騒ぎ回る訳ではない。
二人揃って、穏やかにぽつぽつと言葉を交わすだけ。
時々ある面白い会話に肩を揺らして笑って、ただ、それだけ。



「南雲」
「ん?」
「髪、伸びたな」
「おう、伸ばすつもり」
「それでさっきの話なんだが」



…源田も大概不思議だよな、どうして髪の毛からそっちの話に戻るのか訳が分からない。
全て飲み終わって空になったジュースの空き缶を道端に設置されているゴミ箱に向かって投げる。
投げた空き缶が描く放物線の感じからするに、これは間違いなくゴミ箱に入るだろう。
ナイスコントロール、オレ。



「…もしかしてその話をしたのって、俺と居るのがもう嫌になったから…なのか?」



カコン、綺麗な弧を描いてゴミ箱に収まった空き缶が立てた音だけが静かに響く。
見上げた先では少し唇をへの字にする源田。
年齢に不相応な位に大人びた彼が見せた子どもっぽい仕草に思わず笑みが溢れた。
きっと彼は気づいていやしない。
男勝りで恋愛には興味がなくて何よりもサッカーを優先する筈の俺が、練習後の自主練をさっさと切り上げてこうして自ら進んで源田と共に帰る理由を。
そして、何時から俺が髪を伸ばし始めるようになったかも気づいていないのだろう。



(『南雲が髪伸ばしたら似合いそうだな』だなんて言って、あんだけこのオレをドキドキさせたくせに)



少し伸びた髪の襟足を指で弄び、彼を見上げて少し背伸び。
何時もなら躊躇してできない自分からの口づけを送った。
呆気に取られる彼に背を向け、夕暮れで赤く染まる道をのんびりと歩く。
長く伸びて、仲良く並ぶ影2つ。
オレの影と、源田の影。




「オレは嫌いなヤツと一緒に帰る暇人じゃねーし、どうでもいいヤツの言った事覚えてて髪伸ばし始めるような女でもねーよ」



振り返った先に呆けた面でつっ立っていたオレの『トクベツ』に向かって手を差し伸べた。



「全部さ、オレがそうしたいからしてる。
あんたと帰りたいから一緒に帰ってるし、あんたに褒められたいから髪伸ばしてる」
「……そうか」



ありがとう。
そう言って笑う彼の笑顔はやっぱりオレの胸を温かくする。
差し伸べた手は一回り大きな手によって包み込まれ、手の繋がった2つの影はゆっくりと歩き始めた。
静かに辺りを包む夕闇がその影を静かに飲み込んだ。












繋いだ手

(あんたがそこに居るだけで幸せとか思ってるのは、一生オレだけの秘密)












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リクエストいただきました、源南♀の甘々です!
一応二人は付き合っているという前提で書かせていただいたのですが……わ、分かりづらいですね!

書き直しなどのリクエストは年中受け付けております><
素敵なリクエストありがとうございました!



2010/01/23 夏鈴