Memo | ナノ


 


「あっ!! 和月と初アル!!」

 神楽の声に反応した銀時がこちらを向き、半開きだった目が一瞬大きく見開かれる。和月の四肢を拘束していた縄が千切れて解けたのは、ちょうどその時だった。ムカデ頭首の持つ注射器の針は和月の首から指一本ぶんの距離を残して止まっており、銀時と神楽に気を取られて和月の拘束が解けたことにも気付いていない。

(……新八がいない?)

 破壊された入口に立っているのは銀時と神楽の二人だけで、新八が見当たらない。首を回して周囲を伺えば、積み上がったダンボールの影に潜み、こちらへ近付こうとしている新八を見つけた。自由になった手をひらひらと振れば、緊張していた新八の表情がほっとしたように緩んだ。何も言わずにいなくなって、きっと心配をかけただろう。
 拘束が解けてしまえばやることは一つだ。和月はムカデ頭首からじりじりと距離を取った。それに気付いた初が目を丸くしてこちらを見ているので、口元に人差し指を立てて声を出さないように指示する。

「…テメーら、何者だ!?」

 突然の乱入者に動揺していた攘夷浪士たちは、頭首のその一言で臨戦態勢を取った。
 
「だーから万事屋だって言ってんだろ」
「お前ら和月と初に手出してねぇだろうなコルァアア!!」
「……そうだ、テメーらおかしなマネしやがったらコイツらがどうなるか……っ!?」

 神楽の言葉にようやく人質の存在を思い出したのか、頭首は鼻息荒く足元に転がっているはずの和月に視線を移す。しかし彼の目に映ったのは、村尾親子の縄を解く和月と新八の姿だった。
 初の縄を解くと、初は泣きじゃくりながら父親の腕に飛び込んだ。座るのさえやっとだったはずの村尾は、娘を強く抱き締める。父娘がこうして触れ合うのはいつぶりになるのだろう。村尾の目にも光るものがあった。

「お、お前、いつの間に」

 さて、村尾親子も解放され、銀時たちも乗り込んで、和月を阻むものももはや何も無い。ただ一つ残った問題は、初の持ち込んだ和月の愛刀が、未だムカデ頭首の手にあることだった。
 和月は笑う。顔だけ見たのなら、うら若き少女が楽しいことを見つけて微笑んでいるように見えるのだろう。しかし胸の前で組んだ両手の関節をばきばきと鳴らし、殺気を溢れさせる様はうら若き少女のそれでは無い。
 父との再会に嗚咽していた初の涙は、和月を見て引っ込んだ。

「そのきったない手で私の刀に触らないでくれる?」
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