君そら 派生編 | ナノ
四年に一度


 ――オバケの存在を信じますか?

 誰しもが一度は口にしたり、尋ねられたことのある、他愛のない問いかけだろう。
 もし本当にオバケが――幽霊や妖怪がいたとしたら?
 これまで信じていた世界がひっくり返され、さぞや驚くことになるに違いない。しかし、妖怪の身で人間に紛れて生活している者からしたら、真実、他愛のない問いかけだ。
 だが、
「お前らは、宇宙人の存在を信じるか?」
 死者の霊が行き着く世界・霊界のトップであるコエンマが、ひどく真面目な顔でそう問いかけた。



*  *  *



「さて、諸君! 地球治安維持対策委員会の定例会議を始めようか!」
 金髪にウェーブの掛かった髪の長い男性がそう切り出すと、その場に集まった三人は訝しげな顔をした。
「委員長、またイキナリですね」
 少しも定例ではありませんが。と付け加えた、長髪の黒髪を首の後ろで束ねた背の高い男性は、眉間にしわを寄せながらも、用意されていたパイプ椅子に腰掛けた。その場にいた他二人の男性もそれにならう。
「地球人の安全のために粉骨砕身しているキミたちの努力はぼくが一番よく知っている。委員長として身の引き締まる思いだ。おかげで人生観が360度変わったよ」
「つまり何も変わっていないわけですね」
「ところで、地球人はどんな経緯でコンニャクを食べ始めたんだろうね? 根っこしか食べれず、そのままでは毒。砕いて粉にして灰を溶いた水でかき混ぜ、煮て固めるとプルプルした謎の物体になるって、ハードル高すぎじゃない?」
「唐突に関係ない話をぶっこんできましたね」
「そして、ぼくは今年行われる大変重要なことに気がついたんだ。はい、そこの答えたそうな顔をしているクラフト君、キミに回答権を与えよう! ヒントは四年に一度!」
「貴様、少しは人の話を……!!」
「隊長、落ち着いてください。仮にも王子です」
 眼鏡を掛けた男性が、クラフトと呼ばれた男性を制した。見れば懐から銃を取り出していたが、思い直してくれたようだ。
「くっ、四年に一度というのなら、今年はオリンピックが開催される年だ!」
「閏年でもありますね」
 クラフトさんに続き、茶髪の男性が答えた。
「馬鹿もんっ! オリンピックイヤーであると気づいたのなら、オリンピック男・日暮 熟睡男(ひぐらし ねるお)君が起きる年であることを思い出したまえ! キミたちはそれでも同じ週刊○ャンプの仲間か!!」
「異議あり! マイナーすぎて読者に伝わりません!!」
「マイナーとは失敬な! こ○亀はジャン○史上最長の連載であると共に、アニメ化されてから8年もお茶の間を賑わせた大御所だぞ、ちなみに日暮君も何度も登場している。……まったく、無知なクラフト君のおかげで余計な説明をする羽目になってしまった」
「…………ッ!! ッ!!」
「と、まぁ冗談はここまでとして。そろそろ白状したらどうだ?」
「あんたを殺したいと思ってます」
「はっはっは、実は今日の定例会議にはゲストを招いているのだよ」
「はい?」
 入ってきて欲しいと声をかけられる。マジックミラー越しに、隣室のソファーに一緒に腰掛けていた蔵馬をチラリと見た。彼は痛む頭を押さえるようにうつむいている。
(大丈夫? というか、まだ信じてなかったの?)
(……正直、信じたくない気持ちが増したよ)
(話に聞いていた以上だね。ここまで来ておいてなんだけど、すごく不安)
(まったく霊界の頼みごとはロクなものがない……)
 お互い大きく溜息を吐き出して席を立った。
「お邪魔します」
 笑顔で迎えてくれる王子とは対照的に、クラフトさんをはじめとしたほかの二人はポカンと口を開けて私たちを凝視している。
 居心地の悪さに苦笑を浮かべた。
「今年は四年に一度と決まった、ドグラ星へ定例報告する年なんだろう?」
「なぜそれを!?」
「むしろなぜ地球監視の最高責任者となったぼくに隠し通せると思ったのかが疑問だ」
「普段はちっとも真面目に公務をやらないくせに……!!」
 クラフトさんは涙を流しながら突っ伏した。
「それで、彼らは?」
 眼鏡の男性が王子に尋ねた。
「彼女は以前、原色戦隊・カラーレンジャーに危ないところを助けられたことがあるんだ。話が長くなるので省略するが、早い話がナンパして協力者になって貰った」
 実際ナンパされたのは、空飛ぶ案内人こと、ぼたんちゃんだったりする。
「なるほど、我々の活動を第三者を通して報告するのですね」
 カラーレンジャーとは、王子の手によって変身ヒーローに成れる力を得た5人組の小学生だ。以来、幸か不幸か、彼らは困った人たちを助ける日々を送っている。私も助けて貰った一人だ。
「王子にしてはやけに……、あ」
 現在、地球には数百種類の宇宙人が行き交い、生活していると言われている。気づいていないのは、地球の人間だけなのだとも。
「コリン、遠慮なく続きを言ってくれていいんだよ?」
「い、いえ、すみません」
「ま、彼女たちに来てもらったのは、キミたちが考えている理由とちょっと違う。定例会議に際して、人間以外の地球人を紹介するべきだと思ってね」
 王子はひどく楽しそうだ。初対面の私でさえ彼の部下であろう三人に憐憫の情を覚えてしまう。が、残念ながらその片棒を担ぐことになりそうだ。
 自分たちの役割を果たすため、不可解な顔をする三人に向けて口を開いた。



オバケの存在を信じますか?


※『冨樫作品で深夜の夢小説60分1本勝負』の投稿品です。お言葉に甘えて冨樫協会様のネタをお借りしました。多謝!
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