君そら 派生編 | ナノ
番外)クリスマスSSS


 並べられた材料と道具を前に、今更ながら不安に駆られた。
「手編みなんて重いかな……」とこぼすと、「そうかもしれないね」と言った彼女も真剣な顔で悩み始めた。
 結局、用意した材料を理由に、あたしたちの密かな会合がスタートした。
 それは紅葉が鮮やかに色づき始めた頃の話。
 二人とも不慣れなモノだから、分からないところに行き当たると、先生をかってくれたお母さんに聞いたり、やり直す羽目に成ったり。互いに励まし合いながら、最後は時間との勝負になった。
 なんとか形になったマフラーは、今、幽助の首に巻かれている。
「あんたは普段呆れるくらい丈夫なくせに、時々ひどい風邪を引くんだから、ちゃんと温かくしてなさいよ!」
 他意はないという意味を込めてそう言うと、幽助は渋い顔をして、嫌そうに受け取った。そりゃあ売り物に比べたら全然だけど、もう少し嬉しそうにすればいいのに。しかも、部屋の中なんだから外しなさいよ、と言ってもちっとも聞きいれやしない。
 先ほどの不満を思い返していると、
「雪村さん、機嫌良さそうだね」
 蔵馬さんが飲み物を持ってきてくれた。腹を立てていた筈なのに、なぜ機嫌が良さそうに見えたのだろう? と首を傾げながら、礼を言って受け取った。ちっとも気が利かない幽助と違って、彼は気配りの出来る人だと思う。
「そういう蔵馬さんこそ、ご機嫌ですね。何かいい事ありました?」
「……そうだね、あったよ」
 彼女は完成したモノを渡すのをためらっていた。どうなったか知りたくて尋ねてみたのだが、この様子なら上手く行ったようだ。彼の笑顔を見た、あたしが照れてしまうくらいに。
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