もしくはこんな未来も 3 (by かがわ)
宴が始まった。といっても主役である彼女は初めに少し居ただけだ。疲れているだろうという父さんの(余計な)はからいで、早々に席を立ってしまった。
あたしは当然、面白くない。せっかく見つけた玩具を取り上げられた気分だ。
弟はあからさまにホッとした顔で、一人で酒を飲んでいる。本人は涼しい顔をしているつもりかもしれないが、家族からみたらバレバレだ。
そこがまた可愛いものだから、ついついちょっかいを掛けてしまうのだ。だから今回も。主役が居ない分、弟で遊ぼうと席を立とうとした。昼間の「嫁」に対する反応はイマイチだったから、もう少し捻りを利かせて。と思っていると姉さんに袖を引かれた。
「瑞穂……あの子の事、気持ちの整理が付いていないみたいだから、そっとしておいてあげてね」
言っている意味が分からずに聞き返すと、彼女は目を丸めて知らないのかと問うてくる。
「あの子と環ちゃんは幼い頃に許嫁同士になってたでしょう? それが取り消されたの。あの頃と比べると子供の数も増えてきたし、歳が近いというだけで本人達の意向を無視した婚儀の必要はもうない、って」
「父さんが?」
「ええ……お父さんはお父さんで、良かれと思って決めたみたいで……」
「父さんって前々から思ってたけど、すんごい鈍感で空気読めないよね」
「……あれでも頑張っているのよ」
姉さんはそう擁護するが、彼女もどうしたものかと頭に手をやって溜息を吐いた。
余談であるが、あたし達が生まれる少し前は、深刻な少子化で種族滅亡の危機をむかえていたそうだ。それが今ではみるみる子供の数が増えてゆき、里の人口は右肩上がりを続けている。里の規模を大きくするか、別の土地に人口の一部を移すか、という話が持ち上がっている程だ。
「結局は当人たちの問題なんじゃない? なるようになるって」
というか、なるようにしかならないだろう。視界の端に弟が席を立つのが映った。たまには姉らしく励ましてやるか、と思い、彼を追いかけた。