企画 | ナノ
可愛い妹分?


 日曜日の昼下がり。お日様がポカポカと暖かな陽気を提供してくれる気持ちの良い小春日和だ。環は自身のベッドで惰眠を貪っていたが、母親に強制的に起こされたことで呆気なく終了した。


「ママー……まだ眠いー」

「なーに言ってるの。いい加減起きなさい。いい歳した女の子が一日中猫みたいに寝ているだけなんて勿体ないわよ」


ちょっとは外に繰り出して青春してきなさい。


「えー何ソレ……第一、ママの言う青春って何?」

「そりゃあ、もちろん、デートよデート! 日曜日に一緒に出かけるボーイフレンドの一人や二人いないの?」


 一人ならいいが、複数いたら問題では無いだろうか……?

 母親は純粋な日本人の筈だが、中身はまるでイタリア人だ。決して男好きというワケではないが、とにかく情熱的だ。これでよくお堅いと揶揄されることの多いドイツ人の父と結婚できたなと思うが、だから上手くいっているのかもしれない、と思い直した。

 そして、ふと両親に報告していなかった事を思い出した。


「ママ、言ってなかったっけ?私、秀ちゃんと付き合いだしたんだよ?」

「えぇええ!?そうなの?まー、いつの間に!?……そっかぁ、昔から頑張っていたようだけど報われないと思っていたのに……頑張ったのね、秀一君」

「?? ママ、それどーゆー意味?」

「ううん、何でもないわ!それより良かったわね!彼、間違いなくいい男なんだから、上手くやりなさいよ!」

「?? え?ああ、うん、まぁ……」

「ところで、その秀一君と今日は出かけないの?」

「……今日は志保里さんと、お墓参りに出かけたよ」

「あ……。そっか、今日は確か志保里ちゃんの旦那の月命日だったわね……」

「うん……」

「落ち込んでいる夫を慰めるのも妻の役目よ?彼が帰ったら、お宅にお邪魔してみたら?」


 誰が夫だ。誰が妻だ。今日付き合いだしたと報告したばかりなのに、話が飛躍し過ぎだ。第一朝方まで強制的に慰めさせられたお陰で、まだ身体は睡眠不足を訴えているというのに……!!


「まぁ、いいわ!とにかく、もう少ししたらママはパパとデートに行ってくるから、起きなさいよ」

「はーい……ところでママ、ご飯は?」


 時刻はお昼を少し過ぎたばかり。今から出かける、との母の言葉にこの予感が外れてくれと願ったが。


「駅前に美味しそうなパスタ屋さんが出来ていたわよ」


 にっこり笑ってそう言う母の言葉に脱力した。


「はい、自分で何とかします……」

「晩ご飯は、ママが腕を奮うから楽しみにしててね〜」


 軽やかに去ってゆく自身の母親の後ろ姿を見て、ああ、あれが世に言う『美魔女』かぁと感慨を深めていたら。


「ああ、そうそう。コレ」


 ポケットのモノを環の手に握らせた後「人生設計はしっかりね」との言葉に固まらざるを得なかった。


(……ちゃんと、結界を張っていた……ハズ、うん)


++++


 何だか自分で作る気にもなれず、外の陽気に誘われるように散歩に繰り出すことにした。まだあまりお腹が空いていないのもあって、特に目的もなく、ぶらりと散歩を楽しむつもりであったが、いつもの習慣からか、足は駅前の本屋へ向かう。新刊をチェックし終え、いつも購入している作家の新刊を持ってレジに並んだ。

 さて、コレを読みながら食べられて、且つ長時間居座れる所は……と、頭の中で該当するお店の検索をかけだした環の前に、見知った二人組の姿が。


「あれ?環さん?」

「ホントだ、環ちゃんじゃないか!」

「螢子ちゃんとぼたんちゃん?二人してどーしたの?」

「ぼたんさんが、潜入捜査前の下調べをしてた所に、バッタリ遭遇してしまって。休憩するって言うからご一緒するところだったんです」

「潜入捜査……?」


 チラリとぼたんちゃんを見ると、手招きをされた。


―只今説明を受けております。今しばらくお待ち下さい―


「へー、また霊界探偵社の仕事かぁ。探偵助手の幽助もだけど、ぼたんちゃんも大変だねー」


 ところ変わって、とあるカフェ。頼んだカツサンドに舌鼓を打ちながら、ぼたんちゃんの話に水を向ける。


「そ、そうなんだよう!上司が厳しいからね!頑張らないと!!」


 ズゾーッと蕎麦を啜っていたぼたんちゃん。慌てて租借し終え、どもりながらも、上手く螢子ちゃんに説明した話を繋げた。上司ってコエンマ君か。確かに、霊界探偵になったばかりの幽助に頼むには無理難題ばかりだったと思う。……それにしても、わざわざカフェで蕎麦のチョイスって。


「……そうなんだ。ぼたんさん、今度の潜入捜査って、幽助も行くんですか?」


 持っていたスプーンをお皿に置き、心配そうにぼたんちゃんを伺う螢子ちゃん。ちなみに、螢子ちゃんが頼んだのはオムライスだ。ふわふわ卵にデミグラスソースがたっぷりのこのお店の目玉。教えてあげたら目を輝かせて選んでくれた。可愛すぎる。


「え!?あ、あぁ!確か、今回は上司だけでやる予定だから、助手の幽助は行かない筈だよ!」

「そうなんだ。良かったね、螢子ちゃん」

「えっ、イヤあたしは別に、そんな、幽助の心配なんて……」


 段々と語尾が小さく、頭も俯きがちになりながら、それでもポツリと。


「ただ、また怪我……しちゃったら、と思う、と……」


「「…………!!!!」」


 もちろん、螢子ちゃんはワザとそう言ったのではないだろうが、彼女の発言に胸を打ち抜かれた者がここに二人。敢えて擬音語で表現するのなら『ズキュウウウゥン!』だろう。頭に『メラ』を付けてもいい。


「ぼたんちゃん……!!螢子ちゃんが可愛い過ぎる!どうしよう!!」

「え?」

「ああ、あたしも同感さ!!!まったく幽助には勿体ないったら!!」

「え、え?」

「うんうん、分かる!確かに幽助はいい子だけど、螢子ちゃんを任せられるかどうかはまた別の話だね!!」

「ええええ?ちょっ、ぼたんさん?環さん!?」


 盛り上がる二人に付いていけず、オロオロし始めた螢子。そんな彼女の方へ、鬼気迫る表情の二人が身体を向けた。ぼたんが螢子の肩をガシリと掴む。


「ヒィ……!!」

「いいかい?螢子ちゃん、幽助が無理矢理迫ってきたら、有無を言わさず急所を攻撃するんだよ?」

「そうそう、ひと思いに思いっきりね」

「は?無理矢理?急所??」

「あと、その場の雰囲気に流されちゃダメだよ!いつの時代も尻ぬぐいをさせられるのは女なんだ!」

「えー……と、雰囲気……ですか?あの、ぼたんさん、あたし何のことか……」

「大事な話だよ。螢子ちゃん、手をだして」


 言われるがままに手を出した螢子は、環に握らされたモノを見てギョッとした。


「なっ……!!コレって……!!!」


 顔を真っ赤に染めて、羞恥のあまり目にうっすら涙が滲み始めた螢子だったが、二人は構うことなく声をハモらせた。


「「いつでも螢子ちゃんの味方だからね!!」」





















++++


お詫びの後書き。

えぇと……すみません、リクエスト頂いた内容は、三人のガールズトークだったのですが、あれよあれよという間に下ネタへ突っ走ってしまいました……。
なんか、こう……三人を並べてみたら自然に……ゴニョゴニョ。

雅様、こんなんでよろしければお納めください。
リクエストありがとうございました!
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