企画 | ナノ
お見合いって美味しいの?


 霊界。それはあの世の事であり、生前に善行をした者も悪行をした者もとりあえず来ることになる場所だ。

 最近、某洗脳ソングのように、霊界にも素敵テーマソングがあってもいいんじゃないかと思っているワタクシ霊界のプリンセスことメイです。こんにちは。

 そんな私はおにー様ことコエンマに呼び出されていつものように軽口を叩きながらワキアイアイと兄妹で言葉のキャッチボールをしていたんだけどね。

 彼から唐突に大リーグボールを貰う羽目になってしまった。


「ひとみごぐう?」

「一文字も合っておらんではないかっ、お見合いだとゆーとるだろうが! お・み・あ・い!」

「お見合い? それって、妙齢の男女が庭から獅子脅しがカコーンと聞こえるような和室で向かい合いながら自己紹介し終わった後、一緒に来ていた連れが「ではあとは若い者同士で」なんて言い残して出て行き、男の方が「とりあえず庭でも見に行きますか?」とか言い出すパターンが一般的なあれ、ですか?」

「そのやたら具体的な内容はどこから来た。庶民の場合はそんな場面展開も考えられるが、一応ワシ等は霊界の責任者だからな。それなりの場を用意されるぞ」


 おおっ、このヒト一般人捕まえて『庶民』と言い切ったよ! セレブか! ……そうだよ、間違いなくセレブだよ。

 いやいや、問題はソコではない。


「おにー様!」

「今度はなんだ」

「拒否権を発動します!」

「ダメだ」

「……マジで?」


 やっぱ人身御供じゃんっっ!!!


++++


 どう考えてもさ。


「納得いかなーーーーい!!!! 鬼(おに)ー様の馬鹿野郎ーーーー!!! ついでに夕陽の馬鹿野郎ーーーー!!!!!」


 放課後の屋上で取り敢えずモヤモヤした想いを声に出して叫んでみた。ストレス貯めるのって良くないからね。すっごくスッキリするからオススメだよ☆

 ちょっと生温い視線を貰うだけだから安いものだよね☆


「気が済んだ?」

「済んだ済んだ、ありがとう!」


 生温い視線その1・海藤君と。


「君もなかなか大変なんだね……」


 苦笑しながらも、やっぱり生温い視線を向けてくる蔵馬君に労わってくれた。ごめんね、でもこれが叫ばずにいられるっかってーの!


「で、オレ達が呼び出された理由はさっき聞いたお見合いの話?」

「そうそう、学年どころか学校トップクラスの頭脳を持つ君たちなら、私のお見合い話を潰せる素晴らしいアイディアを捻り出せると思ってね! 友達のよしみでこの通り!!」


 お願いします!!と私は両手を合わせて二人にお願いしてみた。すると二人は一瞬アイコンタクトを交わしあって私に向き直る。


「お見合いを断りたいんですね?」

「そうなの! まだ結婚なんてしたくないっ!!」

「そうですか、いくら霊界の責任ある立場とは言え、女性は結婚に夢を見たいものですからね……」


 先日、霊界にクーデターが起きた。結果的に未遂に終わったのだが、その時に霊界の依頼を受けて解決に乗り出してくれた蔵馬君たちに、私の正体はすっかりバレてしまったのである。

 しかし、未だに納得がいかないのが、真実を知っても生温かい視線一つで済まされた事だ。私のこれまでの実績が理由かもしれないが、おにー様の実績でもあるんじゃないかと思ってる。

 蔵馬君と友人になってからは罪悪感でキリキリと胃を痛めていたにも拘らず!!

 全くもって遺憾です!!

 しかし、なんやかんやと言いながら、少しずつ彼とお友達の関係を深めていけてるのは嬉しいことだと思っている。

 だってまさか!!

 マイスイートエンジェルに心配して貰える日が来るなんてっ!!!


(幸せの青い鳥は身近に居るって本当だよね……)


 私がしみじみと友達のありがたみを噛み締めていると、それに一石を投じる声が。


「いや、南野それは違うと思うぞ」

「海藤?」


 蔵馬君は海藤君の意図が分からないようで、不思議そうにコテンと首を傾げている。

 そんな彼は。


(くぅっ!! 大変!! 可愛らしゅうございます!!!)


 蔵馬君と友達になれて何が嬉しいって、彼を間近で見られるようになった事だ。眼福です!!! 至福です!!! 青い鳥ーーー!!!!

 ついついポケットのカメラに手を伸ばしそうになる私だけど!! そんな事をしたら蔵馬君に見放されてしまうのは必至!!!

 私がプルプルしながら耐えてると、海藤くんがそんな私を指差して「アレが出来なく成るのが辛いんだろ」と一言。

 蔵馬君はそんな私に(やっぱり)生温い視線を向けながら「ああ」と納得した声を出して、おもむろに一歩下がった。

 文字通り、引かれました……。流石にちょっと涙が出てきそうだ。


「ま、まぁ、よろしくお願いします」


 若干、というかかなり精神的にダメージを食らった私だけど、そんな私にマイスイートエンジェルは素敵スマイルで。


「とても簡単な解決方法がありますよ」


 頼もしいお言葉を下さった。


++++


「メイ様、ホントにその恰好で行くんですか?」

「もちろんですよ! さぁ行きましょうジョルジュさん!! して、おにー様はどこに?」

「コエンマ様ももういらっしゃるハズですよ」


 ジョルジュさんに案内されて控室に着いた私は、来るならこいや!と心の中でファイティングポーズだ。

 もっとも、今の格好はファイト出来るようなモノではなかったが、これが私の戦闘服だ!!

 詳しく説明すると、ローズモチーフのお花のレースがドレス全体にたっぷりと使われたフルレングスのオーバードレスだ。しかもオーガニックコットン100%で敏感な素肌に優しい素材を使用して、とっても軽やかな着心地なんですよ。しかもその上、同素材のボンネットまで被っているという徹底ぶり!

 私の本性である赤ちゃんの姿でね!!!

 ……女の子ってさ、純白のドレスを着るのはお嫁に行く時だけじゃないんだね。と、赤ちゃんが着るセレモニードレスとやらを見て初めて知りました。

 あなたも、もしかしたら着たかもしれないね☆

 すでに私は昇天しそうだけど☆

 お見合い相手が赤ん坊ならまだ早すぎだと却下される、それを狙ったこの作戦。確かに私もこれ以上ないアイディアだと思ったし、この作戦を授けてくれた蔵馬君に感謝もした。

 だけどね。実際やってみるとすんごいキツイ!!!

 ここ(控室)にたどり着くまで、普段は成長した姿で接している鬼さんや案内人さん達の視線が滅茶苦茶辛すぎたんです……。

 これでもかって程の生温い視線ビームに居た堪れなくてもう……。


「負けるな私、頑張れ私……」


 全てはお見合いを潰すために。その為に、その為に私は恥を捨てて……!! くっ! 今泣いたら血の涙になりそうだ……!!!

 そんな私の葛藤など知る由もないおにー様はとっても上機嫌で控室に現れた。


「おぉメイ、可愛いぞ! さすがワシの妹だ!」


 満面の笑みで褒めてくれるのはいいんだけどさ。正直この恰好を褒めて貰っても微妙なんだけどさ、そんなことより。


「おにー様(こそ)、その恰好どうしたの?」

「どうだ! 似合うだろう!」


 そりゃあおにー様ってば、おしゃぶりさえしてなきゃ普通にイケメンだから似合うっちゃ似合うよ? でも、どうして。


「どこの王侯貴族?」


 しかも中世ヨーロッパ風だ。ベルで薔薇の世界だ。カボチャパンツで無いだけまだ良かったけど、私に負けず劣らずゴチャゴチャで派手な恰好だ。


「いつか王子様として彼女を迎えに行くつもりだったのだ」


 そう言って、どこからともなく花束を出したおにー様は「さぁ、行くぞ!」と私を抱っこして意気揚々と進もうとしたのだが。


「コエンマ様!! 先程やっぱりお断りさせて頂きますとコテンニョ様からご連絡が!!!」


 ジョルジュさんの一言で、おにー様は突如彼の足元に出現した深い穴から、地獄よりも低いところに沈んで行った。


「えーと、つまり」


 私じゃなくて、おにー様のお見合いだったの?

 私はただの顔見せ? 恥を忍んだ赤ちゃんプレイは意味がなかった!?

 そもそもコテンニョって誰?

 私はアニメしか知らないんだからねっ!!!!

 私は思いの丈を、おにー様が落ちて行った穴に向かって思いっきり叫ぶことにした。


「やっぱ納得できない!! おにー様のバカーーーーー!!!!!」



















おまけ

「あやめ、今がチャンスだよ! アタックあるのみさっ!!」

「そうだよ、頑張って!!」

「待って、まだ決心が……ちょっと押さないでよ、ぼたんっ、ひなげしっ」


++++


スイカ様

ロバ耳後日譚、こんな感じになりました。い、いかがでしょうか。相変わらずの馬鹿話ですみません(土下座)。

ロバ耳は元々アニメエピソードを掻い摘んでましたので、今回は映画の要素をちょこっと入れてみました。

もし『???』となったらすみません!

でも大変楽しく書かせて頂きました!!

リクエストありがとうございました(^▽^)/
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