中編・Dead or Alive | ナノ
番外)Merry Christmas!


 その日、信じられない話を聞いた。
「サンタ? いるに決まってるだろ」
 幼稚園からの付き合いとなる彼女は、当たり前のようにそう言った。
「えぇ、悠ってば本気!?」
 当然、あたしは驚いた。
 自然と間近に迫ってきたクリスマスの話題になったから、サンタの正体について笑い合うつもりで出した話題だったのに。
「んだよ、螢子。それがどうかしたのか?」
 あろうことか肯定されてしまったのだ。
「それがって……、あたしたちもう中学生なのよ?」
「そんなの当たり前だろ? そっちこそ何言ってんだ?」
 そんな冗談はいいから、と言ったつもりなのにサッパリ伝わっていない。
「だからサンタだろ? 寝てる間にプレゼントを山ほど置いてく気前のいいじーさん。違うか?」
「違わないけど……………………え、プレゼントを山ほど?」
「ああ、毎年山ほど置いてくぜ?」
「そうなんだ……」
 温子さんすごいな、と正直彼女を見直した。
 普段はちゃらんぽらんな彼女だが、押さえるところはしっかり押さえる人だ。しかし、まさか中学生にもなる娘にサンタを信じ込ませるほど頑張っていたとは知らなかった。
「それなら、今年のプレゼントも楽しみね」
「ん〜〜〜、まぁ、な」
 後始末に困るんだよなぁと零しているが、アレはかなり楽しみにしている顔だ。
(なにこの子、可愛い!!)
 これは温子さんに協力するしかない! と、当初の流れと180度方向転換したあたしは、ピュアな幼馴染みの夢を守るため、クラスメイトと口裏を合わせておこう固く決心した。

「温子さん、今年も頑張ったんですね。悠ってばすごく喜んでましたよ」
「へ? なんのこと?」
「またまたぁ。今年も沢山プレゼントを貰ったって聞いたんですからね!」
「ああ、足長サンタさんのこと?」
「足長……?」
「そ。なんでか昔から、ウチにはクリスマスに足長サンタが出るのよ。玄関も窓も施錠して寝るのに、朝起きたらプレゼントがあるの。どこも破られてないのによ? すごいでしょ。ピッキングでもしてんのかしらねぇ、あっはっはっ!」
「笑いごとじゃないです! それ、泥棒じゃないですか!」
「でもねぇ、モノが減るどころか増えてんのよ。プレゼントの中身も盗まれたモノじゃないみたいだし、まーいっかな、って」
 悠が喜んでるからいーんじゃない? と温子さんは能天気に笑う。
「あの子って、昔から、よくわかんないモノからも好かれるから」
「…………」
 なぜだろう、なぜか腑に落ちてしまった。あたしの幼馴染は、実はかなり不思議な存在なのかもしれない。
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